”マーケティングと脳科学の両方に詳しくならねばならない”読書note116『「欲しい!」はこうしてつくられる』マット・ジョンソン&プリンス・ギューマン著
この本は、いわゆる消費者行動研究や行動経済学に基づく、”人を動かす”ポイントを様々な角度から紹介してくれている。神経科学者のマット・ジョンソンとマーケターのプリンス・ギューマンがタッグを組んで書いている。
1.食べているのはメニュー(つまり、情報)
人はパテとドッグフードの区別をつけられるか?という実験結果は、ドッグフードを当てられた人は一人もいなかった。
白ワインに食紅を加えて赤くした赤ワインと白ワインの2種類をソムリエに感想を求めたところ、にせの赤ワインについて本物の赤ワインと同じ原料が使われているかのような感想が語られた。
2.メンタルモデルが評価を決める
食べ物の色によって食欲が失せることがある。青の着色料を使ったときに参加者の食欲がなくなり、美味しさへの評価が下がった。
全国l的に名の知れたブランドのロゴがパッケージに明記されているターキーと、ノーブランドのターキーとでは、たいていの人が前者のほうが美味しいと感じる。
3.思いがメンタルモデルを変える
ブランディングとは、「(脳内に)つながりをつくるための活動」である。
ナイキはスポーツで神と崇められる人々とブランドを結び、履いたときの気分をスニーカーの物理的な感触だけでなく、感情や心理も変える。
あなたに「翼をさずける」のは飲み物ではない。あなたがブランドに関連付けた何かである。
4.アンカーを下す
脳にはパターンを探さずにはいられない性質があるらしい。これがアンカーになる。アンカーを裏切ると反発を生じることが多いが、うまく裏切ればサプライズになる。驚きはまさに「期待の裏切り」である。
希望小売価格は、価値観のアンカーになる。スープは最大4缶までと言われると、人は2缶ではなく4缶買いたくなる。顧客が好きなのは「セールで下がった価格」なのだ。
BMWがオプションを別価格にしているのは、それにお金を払う人がいるとわかっているから。大きなアンカーで価値観は歪む。大きな買い物をすると、オプションはささいに見えてしまう。
5.瞬間(記憶)をつくる
記憶をつくる起爆剤は
1.注意 注意を向けていないと記憶に残る確率は低くなる。写メを撮っていると記憶する力が損なわれる
2.負荷 読みづらい(負荷がかかる)フォントで読んだグループは、読みやすいフォントで読んだグループより詳しく覚えていた。
3.感情の喚起 人は後ろ向きな気分の時は細部に、前向きな気分の時は全体に目がいくらしい。
4.音楽 アルツハイマーの末期でも馴染んだ曲は認識できることがある。
6.ピーク・エンド効果
出来事のピークは記憶に強い影響を与える。加えて、体験の終わりの感覚が記憶には大きく影響する。つまり、ピーク&エンドなのである。
ハリウッド映画に無難な結末が多い理由の説明に使われる効果である。
7.認知的不協和と作話
自分を甘やかす快楽的な買い物の場合、ちょっとした実用的な特徴が含まれていれば、それが売上を大きく伸ばす要因になるらしい。人は、認知的不協和を解消すべく話を作るのである。「機能的アリバイ」というらしい。
8.サンクコストの誤謬
人は過去に固執するところがあり、その状態で不合理な決断を行うことがある。それが「サンクコストの誤謬」である。使ってしまったお金や行動に価値を持たせようとするのである。
9.ツァイガルニク効果
中途半端になっていることに心が奪われる現象のこと。ネットフリックスのポストプレイ機能はまさにこれを狙った設計。エンドロールが流れ始めたとたんに次のエピソードに関するアナウンスが画面下の小窓で表示され、自動で再生される。つられて、どんどん見てしまうのだ。
もっとたくさんの消費者行動に関するTIPSがちりばめられた本である。いいものを作ることより、いいものを知ってもらい届けることが難しい時代のマーケティングには必要な知恵と工夫を発見できる本です!!