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読書note18「一人称単数」村上春樹

最新の村上春樹、たまたま本屋に行ったので購入。3つは雑誌で読んでいたものだったが、短編の村上春樹は小さなかたまりとして読めるので、結構好きかもしれない。一つ一つの物語に、ちらっと村上春樹のわりと直球なメッセージが隠れているように感じるからだ。今回のもので2,3拾ってみた。

それでも、もし幸運に恵まれればということだが、ときとしていくつかの言葉が僕らのそばに残る。
たとえば心から人を愛したり、何かに深い憐れみを感じたり、この世界のあり方についての理想を抱いたり、信仰(あるいは信仰に似たもの)を見出したりするとき、ぼくらはとても当たり前にその円のありようを理解し、受け容れることになるのではないか
しかしそれらの記憶はあるとき、おそらくは遠く長い通路を抜けて、僕のもとを訪れる。そして僕の心を不思議なほどの強さで揺さぶることになる。森の木の葉を巻き上げ、薄の野原を一様にひれ伏させ、家々の扉を激しく叩いてまわる、秋の終わりの夜の風のように。

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