空と緑とつながる空間で
旅の風景の重なりを楽しみながら
1994年に村野・森建築事務所によって手掛けられた
美術館。1984年に村野藤吾が逝去された後、事務所は
長男の村野 漾(よう)氏へ継承された。松伯美術館には
確かに村野藤吾の建築への思いも受け継がれている。
上村松園、松篁、淳之がつなぐ美しい日本画の世界
過去に東京で行われた展覧会の様子も参照しつつ
その繊細で精緻な日本画の世界を垣間見て
ここには村野藤吾の近代和風のデザインが残されて
村野藤吾の建物への思いに
過去に訪れた建物も思い出して
池のほとりにたたずむ松伯美術館。分割された建物の
ボリュームは複雑につながり、内と外に様々な風景を
生み出している。回遊性のある建物をめぐりながら、
流れる雲や中庭の緑、光が満ちる池の水面と建物内に
凝らされた意匠を交互に楽しんだ。外部のあっさりと
した表情から、内部に進むにつれて複雑さを増す構成
に胸を踊らせつつ、建築と自然と絵画にふれる楽しい
時間。松伯美術館には想像以上の空間が広がっていた。