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空と緑とつながる空間で

旅の風景の重なりを楽しみながら

奈良の西側をぐるりとめぐりやってきたのは
松柏美術館

1994年に村野・森建築事務所によって手掛けられた
美術館。1984年に村野藤吾が逝去された後、事務所は
長男の村野 漾(よう)氏へ継承された。松伯美術館には
確かに村野藤吾の建築への思いも受け継がれている。

道路側からの外観は壁をメインにあっさりと
でも階段室や曲面の屋根で装飾的に
窓の形にもこだわりが
シンプルさと複雑さが入り混じり
建物のデザインを構成していく
池のほとりに建つ美術館の周りに沿って
エントランスへのアプローチを進んでいく
形は遊び心を持ってつなげられて
手すり格子のデザインも楽しげで
建物と緑が作り出す風景を楽しみつつ、奥に見える
美術館のエントランスはガラスドームに
外観からは思いもよらない空間が内部には広がって
中庭に面した回廊を、空と緑を眺めつつ
飾り柱のような列柱が続く美術館の奥へと進んでいく
高低差のある敷地に建つ建物は、中庭が
ある地階がアプローチとつながるレベル
光の満ちる吹き抜け空間を地階へと
中庭に面したレストスペースでひと休み
もつかの間に、建物内部に広がる空間とデザインや
中庭にあふれる緑も楽しんで
ギボウシや奥に見えるフイリツワブキに
中庭からは先程通ったアプローチと池の風景も
質感あふれる素材に建物への思いも感じ
村野藤吾を象徴する曲線のデザインは
手すりや壁の端部に現れて
優美な曲線を描く手すりにも目を留めて
もちろんそれは天井の間接照明にも
建物を十分に満喫した後に、ようやく
展覧会へ。ここは上村松園から続く
三代に渡る日本画の物語がある所
その時の展覧会は開館30周年記念特別展で

上村松園、松篁、淳之がつなぐ美しい日本画の世界

過去に東京で行われた展覧会の様子も参照しつつ

その繊細で精緻な日本画の世界を垣間見て

展覧会と建物の余韻に浸りながら
松伯美術館を後にして
敷地はまだ奥へと広がって
建物の奥の裏山を上れば
緑に囲まれた空間で空とつながって
見下ろした先の屋根が連なる建物は
1965年に近鉄社長の佐伯勇の自宅として建てられた
村野藤吾が手掛けた旧佐伯邸
内庭も一般公開されていて抹茶も楽しめる場所に

ここには村野藤吾の近代和風のデザインが残されて

そろそろ次の目的地へ。美術館のエントランスを横目に
外観デザインを楽しみながらアプローチを引き返し
敷地の南側に広がる大淵池を望みつつ
池のほとりに建つ松伯美術館を後にして

村野藤吾の建物への思いに

過去に訪れた建物も思い出して

自転車にまたがり、対岸の美術館を眺めつつ次の目的地へ

池のほとりにたたずむ松伯美術館。分割された建物の
ボリュームは複雑につながり、内と外に様々な風景を
生み出している。回遊性のある建物をめぐりながら、
流れる雲や中庭の緑、光が満ちる池の水面と建物内に
凝らされた意匠を交互に楽しんだ。外部のあっさりと
した表情から、内部に進むにつれて複雑さを増す構成
に胸を踊らせつつ、建築と自然と絵画にふれる楽しい
時間。松伯美術館には想像以上の空間が広がっていた。


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