九州芸文館は斜めのラインであふれている
筑後船小屋という新幹線の駅前に広がる公園に建つ
九州芸文館は、隈研吾氏による設計である。2013年に
開館しているが、その斬新さは色褪せていない。建物
は低層に抑えられつつも、そのダイナミックな外観は
風景を作り出す。建物が集落の屋根の連なりや山並み
のような雰囲気を持つ。まずは周囲から回ってみる。
隈研吾氏が設計する建物には、斜めのラインが多いと
思うが、ここではそのデザインが顕著である。屋根や
天井の勾配にあわせ、開口部も斜めに設けられ、全体的
に斜めデザインの連続性がある。斜めにすることで、
動きのあるデザインとなって空間への期待感が増す。
内部は一転して、木のフローリングやオフホワイト色の
壁により、温かみのある空間が広がっている。所々に設置
された斜めの開口部により内部と外部はつながっている。
この建物には、芸術文化交流施設としての役割があり、
芸術文化、体験、交流などの様々な事業を展開している。
その中の一つに九州芸文館アーティストインレジデンス
というものがある。アーティストが国や文化の違いを越え
異なる文化や歴史の中で、暮らしや人々との交流を通して
発想し滞在制作を行うというもの。市民がアーティストの
制作現場に立ち会い、芸術と人との交流が紡がれていく。
九州芸文館では、ただ作品を閲覧するだけの場ではなく、
交流の場となることで、様々な出会いや体験ができる。
アーティストや市民、建物によって新しい芸術が生まれ、
文化が伝えられる。この場所にはその力があると思う。