日本経済の成長エンジンとして期待される大学発スタートアップの増加
「大学発スタートアップ」が急増しており、2023年度には4288社に達し、5年前に比べて9割増加し大学の研究をビジネスに活かす動きが活発化しています(日経新聞6月22日付記事「データで読む地域再生」)。特に富山県では、大学数に対する企業数の伸び率が4倍と全国トップとなっており、元経営者の知事のトップダウンによる支援体制の強化が大きな要因とされています。
次に高い増加率を示しているのが奈良県です。6月25日付の記事によりますと奈良県は「ヤング・イノベーション・レジデンス(YIR)」という、大学や高校の学生が入居し、スタートアップとの交流スペースを設ける全国でも珍しい施設の構想を動かしています。この施設は2030年度の入居開始を目指しており、奈良市で開かれたキックオフイベントでは知事が「前例のない取り組み。グランドデザインを作りたい」と呼びかけました。
奈良県では、奈良先端科学技術大学院大学発のスタートアップが1.6倍に増加し、知事が支援体制の強化を表明しています。この取り組みは、地域産業の活性化と学生の流出防止を目的としています。YIR構想は、学生とスタートアップ企業が日常的に交流し、学び合う環境を提供することで、若手起業家の育成を図ります。
茨城県では、地元銀行による支援ファンド「つくばエクシードファンド」が立ち上げられ、スマートロック開発のフォトシンスが株式公開を果たしました。
日本経済においては、廃業率が開業率を上回る状況が長く続いていました。これは、日本経済全体の活力が縮小することを意味します。最近では、産業全体では開業率が上回るようになりましたが、依然、製造業においては廃業率が上回っています。そのため、スタートアップの支援施策が国や地方自治体によって行われています。大学の研究シーズや若い人材は日本に大きな活力をもたらす可能性の源泉といえます。
2024年度版の中小企業白書でも、スタートアップ支援に関連してファンド出資事業や起業家教育事業などが行われていることが紹介されています。起業家教育事業では、高等学校等での起業家教育の導入を推進し、創業への関心や起業家に必要とされるマインドの向上を図っています。これにより、将来的に創業者となる人材を育成し、開業率の向上を目指しています。
ローカルスタートアップ支援制度も充実しており、地域の活性化を図るため、地方自治体独自の取り組みへの支援を強化しています。これにより、地域でのスタートアップを幅広く支援し、地域経済の活性化に寄与しています。
まとめ
大学発スタートアップは、日本経済における新たな成長エンジンとして期待されています。各地域での具体的な支援事例や成功事例を通じて、今後もますますその重要性が高まるでしょう。地方自治体と教育機関、金融機関の連携が進むことで、持続可能な地域経済の発展が実現されることが期待されます。