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「徳川家康 弱者の戦略」を読んで
NHK大河ドラマ「どうする家康」を観ていると、これまでの歴史小説や大河ドラマの家康のイメージとずいぶん違いますよね。
人間味というか、弱さを包み隠さず出しています。
家康だけじゃなくて、今川義元(ドラマでは野村萬斎が演じています)のイメージもかなり違いました。
そんな違和感ですが、実は、最近の歴史学者の研究によって明らかになった説に基づくものであることがこの本を読めばよくわかりました。
テレビなどでも見かける礒田道史氏著の「徳川家康 弱者の戦略」(文春新書)です。
非常に面白かったです。
歴史が好きな人や大河ドラマを見ている人が楽しめるのは間違い無いです。また、ある程度、日本史を勉強したことがある人で戦国時代の人物のことは知っているという人にも楽しめるはずです。
なぜなら、本書は著者が意図するところとしてライフ・ストーリーとして人生の参考書になるような内容だからです。
強者に挟まれながら弱者が生き延び天下を収めるまでの生き方や戦略は、中小企業の経営者の方々にも参考になるかもしれませんし、もっと言えば、アメリカと中国に挟まれた今の日本全体も参考にできる部分があるのかもなと思いました。
そもそも家康は天下を取ろうなんて全く頭になくて、大国に挟まれる中で生き延びる一方で、三河の家臣にそっぽ向かれないように「武威」を保つことには怠らないように生きて伸びてきた結果、260年も続く徳川の世を築くことにつながったんですね。
そして、織田や武田に翻弄されながらも彼らの良さを学び、また、ダメな点もしっかりと反面教師にしていたことが見て取れます。
信長の求心力が強く急成長するけどもブラック化しやすく「信長疲れ」を生む。秀吉も拡大路線には良かったが行き詰まりが出ると弊害が表面化します。
そんな中で家康のスタイルは最もサステナブルな棲み分け路線だったというのはうなづけました。
家康は、家臣の得手、不得手を見抜いて適材適所を施して、一定の距離感を保ちながらも「信用のフィードバック」は忘れないというのは、本当に、現代の組織でも使えそうなリーダーシップスタイルです。
弱者であるが故にすでに情報戦では負けないことも徹底されています。
また、本能寺の変で明智光秀が謀反をおこしたのは、実はその時すでに滅んでいた武田家の毒にやられたから、という説には驚きました。
他にも、大河では描いていない家族との関係に対する説なども面白かったです。
大河ドラマ見ている人はマストくらいの本で、その他の方にもおすすめします!