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「小作人」から始めよう
日経新聞(8月20日付)の記事に「日本は米テックの『小作人』」という、なかなかセンセーショナルなタイトルの記事が掲載されていました。
この記事によれば、日本のデジタル赤字がどんどん膨らんでおり、2023年には5.5兆円に達したといいます。これは5年前の1.7倍の規模で、日本がインバウンドで稼いだ旅行収支(4.2兆円)をも打ち消してしまうほどです。
「デジタル赤字」とは、GAFAMのような巨大テック企業への支払額を指しており、私たちの生活がデジタルプラットフォームにほぼ支配されている現状を反映しています。何かを利用するたびに、その分だけ海外のテック企業にお金が流れる仕組みができあがってしまい、まるで一生懸命に田畑を耕しても収穫が吸い上げられてしまう「小作人」状態に陥っているというのです。
さらに、この「小作人」状態は今後も続いていかざるを得ないと言われています。巨大化したテック企業はその規模の力を活かして、さらに高い技術力とサービスを提供できるからです。
実際、昨年から急速に拡大している生成AIの分野でも、巨大テック企業の圧倒的な規模が支配的です。ChatGPTやCopilotの利用者が急速に増え、そのデータを基にさらに技術を向上させています。日本の生成AI技術が真っ向から立ち向かって勝てるかといえば、かなり厳しい状況です(ただし、特定の分野に特化したニッチな戦い方で活路を見出している企業も存在します)。
では、日本は今後も「小作人」であり続けなければならないのでしょうか?
必ずしもそうではありません。これらのデジタルサービスを利用者として利用しつつも、そこから創意工夫を重ねて新たなサービスや製品を生み出すことが求められています。
つまり、デジタルサービスを単にお客さんとして利用料を払い続けるだけでなく、それらを活用してもっと付加価値の高いものを生み出すことができるかどうかが鍵です。
歴史を振り返ると、日本人は「小作人」的な立場からスタートするのが得意でした。明治維新後の不平等条約の解消や、戦後の急速な経済発展も逆境にこそ発揮される日本人の強みから生まれました。現代でも、日本が「小作人」状態から脱却し、新たな価値を生み出すことができるかどうかが問われています。
まとめ:自分たちができること
では、私たち個人は何ができるでしょうか?まず、デジタルサービスを利用する際には、逆にその機能を最大限に活用することではないでしょうか。使いこなしているようで知らない機能ってたくさんあったりします。使いこなして、その機能が自分の身の回りの仕事にどう役立つのか考えることから始めるのが第一歩なのかもしれません。
まずは、今日からできる小さな改善を意識して、行動してみましょう。