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日経記事 やさしい経済学「組織の課題と変革の方向性」

日経新聞「やさしい経済学」で連載された埼玉大学 宇多川准教授の「組織の課題と変革の方向性」を読みました。

イノベーションを起こし市場で地位を確立した企業であるほど、環境変化に応じての新たな変革が起こしにくくなる「適応のパラドックス」のメカニズムとそれを理解し乗り越えて変革組織へと舵取りするための考え方がわかる内容になっていました。

組織変革について、経営学の多面的な切り口から論じ、変革リーダーとして対話型ストーリーテリングの重要性にまで展開されており、毎回、お腹一杯になる読みごたえがありました。

各回を以下にまとめさせていただきました。

第1回:「適応が適応可能性を排除する」という適応のパラドックスは今日の日本企業の課題をよく表している。組織文化や中核技術といった強みが日本企業の強みとなり成長を支えたが、それはデジタル化の中で弱みとなってしまった。日本企業の変革の方向性を知るには「適応のパラドックス」のメカニズムを理解する必要がある。

第2回:企業は社会と利害関係を伴う価値観を取り入れ資源を活用して成果を生み出す。環境変化が起きるとその価値観も変化し、築きあげた独自能力が無力化する。その際には変革が必要となるが、過去の独自能力の源泉であった利害関係者との関係が変革を阻害するというパラドックスに陥る。

第3回:過去に形成された認知(我々の事業や環境はこういうもの)が組織の常識になってしまうことで、問題を問題として認知できなくなってしまうのが、変化を阻む要因となる。

第4回:イノベーション企業が市場を獲得するとその市場の既存顧客の今日のニーズを満たすことだけに資源配分をおこなうようになる「共進化ロックイン」となり明日の市場を作れなくなる「イノベーションのジレンマ」に陥る。

第5回:既存事業から独立した「出島」のような新規事業部門はなかなかうまくいかない。それは、技術的問題の他に、考え方や習慣を変える痛みを伴うからである。観察し理解し介入するという対話的な知性が求められる。

第6回:ドラッカーの「顧客の創造」、セオドア・レビットの「マーケティング近視眼」からわかることは、これまで関係しなかった他者のことを知り、その存在から自分を捉えなおし、それに応えようとする対話的な思考活動を続けることが経営組織には必要とされる。

第7回:企業変革が簡単でないのは既存事業の正しい理解をし守ろうとすると変化に対しては非合理な結果となるからである。組織は正しく失敗するために価値基準を外側に求めなくてはならない。参考となるのは、ポジティブ・デビアンス(PD=積極的な逸脱者)という考え方である。問題より課題解決に目を向け、一緒に考える伴走的な視点を持つ。

第8回:変革を実行し組織メンバーに自発性をもって行動してもらうために必要なことは説明ではなく対話である。話し手が聞き手に連帯することで自発性を構築し変革を強く推進することができる。

まとめ:第1回で「センスメイキング」の話から始まり、そして、最終回でストーリーテリングへとまとめられています。やはり、変革の方向性として組織メンバーの納得、共通の理解が重要だと思いました。
第5回にある「出島」のような大企業のイノベーションセンター的な機能がうまくいったという話があまりを聞かないのも、既存事業の従事者から納得感が得られにくいからなのかなと感じます。
計8回の新聞記事ですが中身が濃く各回で深掘りしたくなる項目がいくつもあり興味深く拝読しました。


#日経COMEMO #NIKKEI



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