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顧客を欺く「ダークパターンの7分類」とは
2025年1月21日付の日本経済新聞ビジュアル解説記事では、「ダークパターン」を取り上げていました。記事では、ダークパターンがどのようにして消費者の意思決定を操り、不利益をもたらす可能性があるのかについて説明されています。
ウェブサイトやアプリケーションのデザインは、通常ユーザーに快適な体験を提供することを目指しますが、一部のデザインは消費者を意図的に誤解させ、不利な選択を取らせる「ダークパターン」として利用されます。これらは短期的な利益を生むことがありますが、長期的には企業の評判を傷つけるリスクがあります。
「ダークパターンなんて怪しいサイトの手口では?」と思うかもしれませんが、実は大手サイトでも頻繁に見られる手法です(故意かどうかは別として)。例えば、アマゾンプライムデーでの定期購入への誘導は、解約が容易であるものの、ダークパターンの一種と考えられるかもしれません。
本記事では、ハリー・ブリヌル氏が提唱した7つのダークパターンを「緊急型」「妨害型」「誘導型」の3つに分類し、詳しく解説します。
ダークパターンの3類型
ダークパターンには大きく分けると以下の3つの主なタイプに分類できます:
緊急型(Time Pressure Type)
時間的プレッシャーを与え、ユーザーに即時行動を促す手法。妨害型(Obstructive Type)
ユーザーの望む行動を難しくし、諦めさせる手法。誘導型(Manipulative Type)
ユーザーを特定の方向に誘導する手法。
7つのダークパターンとその分類
以下に、ハリー・ブリヌル氏の7つのダークパターンを、それぞれの類型に当てはめて説明します。
1. Sneak into Basket(こっそりカートに追加)
分類: 緊急型
内容: ユーザーが知らない間に、カートに追加商品が入れられる手法。
例: フライト予約時に旅行保険が自動的に選択される。
影響: 時間的な焦りを感じ、確認不足に陥る。
2. Roach Motel(ゴキブリホイホイ)
分類: 妨害型
内容: 登録は簡単だが、解約や退会が困難な設計。
例: 解約ページが分かりづらく、手続きが複雑で途中で断念させる設計。
影響: ユーザーが現状維持を選ばざるを得ない。
3. Privacy Zuckering(プライバシー搾取)
分類: 誘導型/緊急型
内容: ユーザーが意図せずプライバシーを侵害する同意をしてしまう手法。
例: デフォルトで個人情報が公開設定になっているSNS。
影響: 消費者が早とちりして同意してしまう。
4. Price Comparison Prevention(価格比較妨害)
分類: 誘導型
内容: 商品やサービスの価格比較を難しくする手法。
例: 最終確認画面で追加料金を表示する。
影響: 他の選択肢を正確に評価できない。
5. Forced Continuity(強制継続)
分類: 妨害型
内容: 無料トライアル終了後、自動的に課金が開始される。
例: 解約手続きが複雑で、課金され続ける。
影響: ユーザーが意図せず損失を被る。
6. Disguised Ads(偽装広告)
分類: 誘導型
内容: 広告をコンテンツの一部に見せかけてクリックを誘導する手法。
例: 記事の中に紛れ込んだ広告リンク。
影響: ユーザーが意図せず広告をクリックする。
7. Confirmshaming(恥による同意)
分類: 緊急型/誘導型
内容: 恥や罪悪感を与えて特定の行動を促す手法。
例: メール購読を拒否する際に「いいえ、私はお得な情報に興味がありません」という選択肢。
影響: 消費者に心理的な圧力をかける。
ダークパターンのリスクと影響
ダークパターンは短期的な利益を生む一方で、以下のリスクを伴います:
ユーザーの信頼喪失: 不信感を抱いたユーザーはリピート購入を控える。
ブランドイメージの悪化: 消費者保護団体やSNSでの口コミによる影響。
法的リスク: 一部の国では規制が強化されつつある。
まとめ
ダークパターンは「緊急型」「妨害型」「誘導型」の3分類で整理すると、その意図や影響が明確になります。消費者を惑わす手法を避け、透明性と倫理性を重視したデザインを採用することが企業の持続可能な成長につながります。
参考文献