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「思考の穴」を読んで

今年1冊目の読書として「思考の穴」を読みました。

昨年末から話題の書になっていましたがようやく読むことができました。

イェール大学の行動心理学の人気教授の講義のエッセンスをまとめた本書は、人間が誰しもが持つバイアスについて、どうしてそうなるのか、また、論理的であるためには(=穴をふさぐ)どのような点に気を配る必要があるのかを、わかりやすく丁寧に解説しています。

8つのチャプターに分かれておりそれぞれがよくまとまり十分な深さを持って解説されています。翻訳の技術も高く文章がスッと入ってきます。

チャプター2で扱う「確証バイアス」は、自分がこうに違いないとあたりをつけてしまうと、そうであるという裏付けとなるものばかり目を向けてしまうことを言います。確証バイアスは本書の他のチャプターでもよく出てくる代表的バイアスの一つです。

例えば、医師が経験を基準に治療を行うことをエンピリックセラピーと言います。これは速やかに治療を開始するために、既往歴、家族の病歴、症状などから総合的に判断することです。確定診断の結果が出るまで治療を待つと、その時間ロスによって取り返しがつかなくなるということもありうるかもしれません。でも、これも「確証バイアス」の罠にはまらないように、慎重に治療を進めながら必要に応じて治療方針を変更しないといけないでしょう。本書でも著者の同僚が拒食症の誤診を受けたエピソードが紹介されています。

ビジネスの論理的思考の一つ「仮説思考」も、まず課題解決に向けて「おそらくこうだろう」と先の見通しをつけて行動を起こすことですが、これも一つ間違うと「確証バイアス」の罠に陥ってしまうかもしれません。

「確証バイアス」に陥らないためにも、常に「正反対」のことを自問する必要があります。簡単そうで難しいと思います。本書でも言っていることですが、人間はわかっていても間違える、バイアスは避けることができない全人類共通の思考法なのです。

行動経済学では、人間の考え方のクセを(悪い言い方をすれば)利用したナッジ理論へとつながっていくわけです。私たちは、そういった思考のクセを理解した上で自分自身を過信しないようにして、他者への理解にも役立てるべきだと思います。

本書は、初学者でも当該分野の知識のある方でも楽しめる本であると思います。

最後までお読みいただき有難うございます。

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