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アシックスCEOのインタビューから考察するランナー市場の動向
アシックスの広田康人会長兼CEOのインタビュー記事が日経の経済観測(1月20日付)に掲載されました。この記事は、アマチュアランナーとして興味深く、またマーケティング視点からも非常に興味深い内容でした。以下に、そのポイントを整理しつつ、自分の考察を加えました。
日本のランナー市場
広田氏は、日本のマラソンランナーの人口動態について「40歳代が最も多く、40歳以上が全体の3分の2を占める」と指摘しています。この層は時間とお金に余裕が生じ、老後を見据えて健康への関心が高まっていることが背景にあるとのことです。
私自身も30歳代後半からランニングを始めました。その経験から感じるのは、「マラソンは一人で始められるスポーツ」という利点です。特に、それまで定期的な運動習慣がなかった人にとって、集団スポーツの仲間に入ることは心理的ハードルが高いものです。
スポーツメーカーが中高年層向けに、ジョギング以外でも楽しめるスポーツの場を提案すれば、スポーツ人口を増やせる可能性はまだまだあると思います。また、この世代はある程度の経済的余裕があるため、機能的で良質な商品には高い購買意欲を示すでしょう。
ランニングが新興国で伸びる
広田氏は「1人あたりGDPが5000ドルを超えたあたりからランニング専用シューズの需要が伸びる」と述べています。例えばインドネシアはこの水準に達しており、市場として成長を期待されています。一方、インドは国全体のGDPはまだ2500ドル程度ですが、富裕層や中間層が増加しており、有望な市場とされています。
また、中国ではかつて環境汚染が懸念されていましたが、近年のEV市場の拡大により屋外を走りやすくなったと広田氏は指摘しています。現在は型落ち品が主流ですが、今後ハイエンド商品の需要が増える可能性が高いです。
マラソン大会とコト消費
マラソン大会は単なるエントリー型のイベントから、体験価値を提供するものへと変化しています。アシックスは、大会前のトレーニングをネットで助言したり、記録をアプリに登録したりする付随サービスを提供しています。また、ゴールの瞬間を撮影し、SNSに投稿できるような取り組みも行われています。
特に注目すべきは、昨年の富士山マラソンで外国人向けに提供された100万円のパッケージ商品です。この商品は、リゾートホテル宿泊や送迎、VIPスペース利用を含むもので、完売したそうです。「インバウ丼」を彷彿とさせるような話ですが、この成功事例は、マラソン大会がインバウンド観光の一環としても大きな可能性を持つことを示しています。
厚底シューズの時代と新たな可能性
広田氏は「厚底シューズの全盛期はしばらく続く」と述べています。技術革新により素材の軽量化が進み、消費者のニーズに応えています。最近、私がマラソン大会で感じているのは、ランニング用サンダルを履いたランナーなどが少数派ですが目にするようになっていることです。これらのランナーは統計的には「外れ値」とも言えますが、厚底シューズに飽きた消費者が対極の選択肢を求めている兆候とも考えられます。
まとめ
広田氏のインタビューから、日本国内外のランナー市場が進化していることが分かります。特に、日本の中高年層市場、新興国市場、コト消費としてのマラソン大会という3つの切り口は、マーケティング戦略の重要なヒントを与えてくれます。
私自身もアマチュアランナーとして、長く(できればあと30年くらい)マラソンをしたいと思っています。ランニング文化がさらに広がり、多様な選択肢が提供される未来を楽しみにしています。企業がこうした市場の多様性をどう捉え、新たな価値を提案していくのか、今後も注目していきたいです。
先日、箱根駅伝のシューズシェア争いついても書きました。