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企業の在庫量の増加とキャッシュフロー経営のあり方
企業が製品や原材料の在庫を積み増す動きが顕著になっているようです(日経新聞9月16日付)。過去最高水準の在庫量が確認され、これまで在庫削減を重視していたキャッシュフロー経営から、安定供給を優先する在庫戦略への転換が見られます。キャッシュフロー経営が抱えていたリスク、そして物流2024年問題の影響を背景に、在庫管理の変化について考察します。
従来のキャッシュフロー経営が抱えるリスク
これまで多くの企業は、キャッシュフロー経営を重視し、在庫を最小限に抑える方針を取ってきました。在庫削減により資金効率を高め、資金の流動性を確保することが可能であり、これは有効な手段とされてきました。しかし、過度な在庫削減は、不測の事態に対して脆弱な供給体制を招くリスクがあります。
さらに、自社のキャッシュフローを高めるために、納入業者に短納期を要求しすぎた結果、実質的に在庫負担を納入業者側に押し付けるという悪しき事態に陥るケースもありました。これにより、サプライチェーン全体の安定性が損なわれ、長期的な経営リスクを生む可能性があります。
現在の環境変化の中では、サプライチェーン全体のキャッシュフローを考慮した在庫管理体制の構築が必要とされています。
在庫を増やすもう一つの理由:物流2024年問題
日経記事では直接触れられていませんが、物流2024年問題も少なからず在庫増加の要因と考えられます。これは、物流業界における人手不足や労働規制の強化によって、運送のキャパシティが大幅に制限されるという問題です。これにより、企業が従来のようにタイムリーに在庫を運搬することが難しくなると予想されています。
物流効率化を余儀なくされた企業は、一回あたりの配送量を増やすなどの対応を取ることで、結果として在庫の増加を招いていると考えられます
今後の適正在庫とキャッシュフローの関係性
在庫を増やすことは、企業にとって資材調達、生産、供給の安定性をもたらす一方で、企業のキャッシュがその分減少することを意味します。その結果、財務諸表上での流動比率が悪化するリスクがあります。
VUCA(不確実性、変動性、複雑性、曖昧性)の時代と呼ばれる現在、長期的に安定していた企業にとっても、これまで通りの在庫管理の姿勢が通用しなくなってきています。しかし、在庫を単純に増やせば良いわけではありません。企業は適正在庫を見極めながら、将来の不確実性に備える必要があります。
まとめ
キャッシュフローを重視した在庫削減経営は、一見効率的に見えるものの、不測の事態に対して脆弱な点があります。過去の教訓を踏まえ、現在、多くの企業が安定供給を重視し、在庫を増やす方向にシフトしています。さらに、物流2024年問題が深刻化する中、在庫の積み増しはビジネスの安定性を保つための重要な戦略となっています。企業は、供給リスクや物流の不確実性に対応するために、在庫戦略を再構築していく必要があるのです。