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Altın Gün ‎/ Yol

以前、クルアンビンを中心としたサイケデリックロックの回でも取り上げたAltın Gün。2021年リリースの3rdアルバムです。

Altin Gün(アルタン・ギュン)はよりオリエンタル・伝統音楽色が強くなりますが、酩酊感がありつつフォーク・ロックのダイナミズムも感じられるいいバンドです。オランダ、アムステルダム出身で、ベーシストがリーダー。

いいバンドなんですよ。新世代の息吹を感じる。オランダを中心に活動していることもあり、音楽的に洗練されている。トルコ国内のローカルシーンだけでなく最初からグローバルのシーンを見据えて発信している感じが好感触です。かといって独特のアク、アナドルロックの固有性もしっかりあるし、個人的にはこうしたネオ・サイケというか、酩酊系のワールドミュージックの新しい潮流の中ではS級のバンド。今作もしっかり進化していて、ディスコサウンドや80年代ポップス的なテイストを取り入れて、より娯楽性と洗練の度合いを高めつつしっかり土着性、ルーツミュージック色も忘れないという絶妙なバランスに仕上がっています。一聴した印象では前半が新機軸、後半が従来路線、といった印象。前半の出来が良いですね。後半はちょっと息切れか。ただ、後半の曲も何度も聴きこむと馴染みが良いかもしれません。何度も聴きたくなる良盤。LP取り寄せ中。

2021リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Bahçada Yeşil Çınar 0:31
かなりターキッシュなスタート、トルコ伝統音楽的な歌いだし
イントロ
★★★

2.Ordunun Dereleri 4:34
そこから80年代ポップス的な音像に、リズムが入ってくる
やや重みのあるリフが繰り返される、リフというかフレーズ
キーボードとベースが展開する、哀愁のある男声ボーカルが入ってくる
すこし物憂げな感じ、シティポップスというか
揺れるようなリズム、なんというかシティポップス的だなぁ、全世界の潮流か
あ、クルアンビンか、クルアンビンに近い
もともとこのバンド、比較されてたしなぁ、本人たちも意識しただろう
クルアンビンみたいに世界的な評価をされてもおかしくないと思うが、いかんせんトルコ中心のバンドだから他のところに情報が出回らないだろうなぁ
落ち着いた雰囲気、バラードというか、どっしりした曲
ターキッシュな歌いまわしに、移ろうコード
大げさではないが重厚感がある
★★★★

3.Bulunur Mu 3:04
ちょっと奇妙なポップス、ニューウェーブ感
80年代テイストがあるなぁ、電子音の反復フレーズ
ちょっと戸川純っぽい、女声ボーカルもややエキセントリック
もともとトルコのサイケデリックなロックの人たちって酩酊したような、高低差が激しい歌メロを歌うから
いやぁ、偶然だと思うが戸川純に似ている、「好き好き大好き」を思い浮かべる
いきなりドスの効いた声には変わらないが
面白い曲だなこれ、何周かしてこういうところにたどり着くのか
★★★★☆

4.Hey Nari 3:12
ファンキーなベース、パーカッション
シティポップス ミーツ アナドルロック(トルコのサイケデリックロック)
好きだわ、この感じは面白い
エキゾチックな歌メロ、だけれどバッキングがシティポップ、80年代ポップスっぽい
いやぁ、なんというか日本の歌謡曲のアレンジも感じるんだよな
もともとウスクダラとか飛んでイスタンブールとか、トルコ的なものを歌謡曲側が取り入れていただけれど
ワウペダルが効いたギターの音がエキゾチックなフレーズを奏でる
★★★★☆

5.Yüce Dağ Başında 4:18
スペーシーな効果音、80年代アニメとかで使われたややチープ感のある音
エレクトーン的というか
それに太いベースのグルーヴが絡み合う
ちょっとディスコ的なリバーブがかかったボーカルが入ってくる、女声ボーカル
男声と女声がメインの曲が交互に出てきているな、完全にツインボーカルだったっけ
うん、歌メロが面白い、トルコ的なところとグローバルポップス、80年代ポップス的な感じがうまくミックスされている
ややレトロなディスコサウンド
酩酊感もそこそこあるけれど、演奏はハキハキしていて瑞々しい、沈み込む感じよりはちょっと浮かれている
音作りが面白い
★★★★☆

6.Kesik Çayır 4:56
リズムが出てきて絡み合い、小鳥のさえずりが聞こえる、ジャングル的な
ソフィ・タッカー的な音作り、シンプルなフレーズの組み合わせ、反復による快感
から、エキゾチックでターキッシュな女声ボーカルのメロディラインが入ってくる
音の一つ一つが心地よい、そこそこ中低音が効いていて、心地よい音
シンプルなフレーズの反復するパートと、トルコ的な高低差がある歌メロが組み合わさっているのが面白い
適度なポップさ、反復による耳に残る感じと、複雑な節回しによる面白さ、耳を惹く感じがある
バッキングはけっこうシンプルなフレーズを反復している、ところどころ新しい音が入ってくる
★★★★

7.Arda Boyları 2:24
静寂、グラスで氷が揺れるような、かすかなベルチャイムの音
女声ボーカルが入ってくる、クリスタルのような響きの和音とボーカルだけ
ちょっとザラついた感じがする音、全体的に
砂埃とか砂漠までは感じない、ちょっとウェットな感じはあるのだが、どこか引っ掛かり、ザラザラしている
レトロというだけでなく、いろいろな音が入っているからかな
インタールード的な小曲
★★★

8.Kara Toprak 4:12
ファンキーで粘り気のあるベースからスタート
ディスコサウンド、サタデーナイトフィーバーのような
Antibalasのような、洗練されたアフロビート感もある
洗練されて、抑制されているが熱量はある
★★★☆

9.Sevda Olmasaydı 3:15
トライバルというか不思議なリズム
スライドしてくるフレーズ、トルコ的なメロディ
ベースの音が効いている、男声ボーカルによるターキッシュなメロディ
音像は酩酊感が強い、後半はアナドルロック感が強まり、ディスコというか80年代ポップス的な音はサブ要素に
だんだん盛り上がってくる、演奏はハードロック、ジャズロック的な熱量も帯びてくる
★★★★

10.Maçka Yolları 3:40
うねるベース、軽快なリズム、カッティングギターも入ってくる
不思議なディスコサウンド、エキゾチック人力ディスコ
踊れるな
これはクオリティが高い、スリリングだけれど抑制されていて、洗練されている
耳を奪われる、音程がやはり独特だし
トルコだとislandmanも洗練されたジャズロックだが、Altin Gunも負けていない
こちらも新世代トルコバンドの旗手だな
イスラエルのPinhas&Sonsといい、こういう洗練されたスリリングさはこの辺りのバンドはうまいね
★★★★☆

11.Yekte 3:46
完全ターキッシュなメロディ、ターキッシュポップではなく、伝統、ルーツに根差したゴツゴツした手触りがある
ロック感
シリアスな音像なのだけれど、どこかユーモラスで脱力したフレーズ
あまり肩肘はらずリラックスして聴けるのだけれど、熱量がしっかりあるというか
メロディや曲展開に引っ掛かり、単純な和音ではない感じがして面白い
急なフェードアウト…と思ったら戻ってきた
ギターだろうか、かなりエフェクトがかかったスペーシーな音でソロが続く
★★★★

12.Esmerim Güzelim 2:31
エレクトローンサウンドに乗って女声ボーカルが歌う
チープで郷愁を誘う音だが、使い方のセンスがいい
遊び心があるというか、ちょっとほほえましいメロディ
幸福感がある展開
★★★☆

全体評価
★★★★☆
面白いアルバム、トルコ的なメロディはもちろん残りつつ、シティポップスや80年代ディスコサウンドも混じっている
クルアンビンにも一部近いところもあったり、サイケなアナドルロックがディスコなどの80sサウンドと融合した感じ
前半はそうした新機軸の曲が中心で、後半は従来路線という構成か
前半の出来がとにかくいい、新鮮で面白い音像

ヒアリング環境
昼・バー・ヘッドホン

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