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Death Side / Bet On The Possibility

DEATH SIDEは1980年代(1983~1984頃?)に結成され、1995年に解散。その後中心メンバーのISHIYA(Vo)はYOU(BASS)と共に「FORWARD」 を結成、CHELSEA(Gt)は 「PAINTBOX」 を結成。日本ハードコアシーンの歴史に輝くバンドです。こちらは1991年のアルバム。

最近、周囲で話題になっていた「ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史」。遅ればせながら読みまして、その著者の方のバンドということで聞いてみた次第。これ、もともとnoteの連載のようですね。大変に熱量のある本。

続編というか、書ききれなかったエピソードもこれから連載がスタートするようです。

個人的にあまり日本ハードコアを知らなくて、とても面白く読めました。ジャパニーズハードコアは独特の空気感とか暴虐性があり、かつやっぱり日本らしいきめ細かさもある。ハードコアとかアングラには興味があったけれど、入り口が大槻ケンヂだったので知っているバンドといえば彼がカバーしたガスタンク、ばちかぶり、INU、スターリン、あぶらだこ、非常階段...とか、、、だいぶ偏っていたんですよね。それらはこの本に出てくるハードコアシーンとは別物。ちなみに当時、実際にハードコアシーンに居た人に聴いたら「ああ、スターリンはメジャー路線でしたからね」との談。そうかー、そういうものかー。いや、確かにTVとか出てましたしね。そういう意味ではGISMの横山サケビさんもTV出てましたけど(江戸アケミに殴り掛かるという)。

閑話休題。

昨年から海外のバンドが来日しなくなって、日本のバンドのライブをよく見るようになりました。その様子はいくつかレポ(Metallization、Jurassic Jade)も書いていますが、クオリティが高い。日本のシーンすごいなぁと。もっとライブハウス通おうと思いました。今更ジャパニーズメタル、ジャパニーズハードコア再発見。で、現在のジャパニーズハードコアシーンの語り部、水先案内人たるISHIYAさんのバンドに至ったわけです。そんなわけで、聞いていきましょう。

A1 Intro 〜 Meaning ★★★★

雷鳴のSEからベースが響く、ベースの音はまがまがしいがそこまで低音は強くない、録音年代もあるな。ギターが入ってくる。けっこうメロディアスなフレーズ。和音はやや不協和音感、引きずるような感じがあるがサバスのようなあきらかな「不穏感」ではない。

そこでイントロが終わり、高速エイトビートに。おお、ボーカルが叫んでいる。爆裂都市のバトルロッカーズを思い出す。こういう感じか。疾走感があってかっこいい。ベースの音が効いている。というかベースとギターのリフがユニゾンなのか。一体化して飛び込んでくる。ボーカルは少し奥に入っているがしっかり言葉も聞き取れる。芯のある声。ギターソロになだれ込む。やや中東的な音階が最初に入る。うん、かっこいいな。

A2 Live And Live ★★★★

続けて激走、かっ飛ばす中にもリズムの細かいキメが入ってくる。ストップアンドゴーというか、このきめ細かさ、パワーとスピードだけで押しきらない感じはジャパニーズハードコア的だと感じる。何か共通しているんだよね。Suffocationとかの疾走感とはまた違う。ボーカルの手数も多いというかなんかバタついているんだけれど、それが暴走感があってかっこいい。けっこう音像は整理されている。音の塊感はあって、ベースとギターは一体化しているがリズムはかっちりしていて勢いがいい。演奏力は高い。

A3 Loosing Time ★★★☆

間髪を入れず次の曲へ。次々と行くなあ、ライブ感がある。ハードコアマナーってこういうのなのかな。ボーカルは叫んでいるスタイルだがデスボイスではない。極端なガテラル声ではなく、きちんと単語が聞こえる。途中でテンポチェンジ。少しミドルテンポでメロディアスなソロに。欧州メタル感があるな。調性感を少しずらしたような響きがあるので、いわゆる「様式美」というよりはKing Diamondとか、Sabbathとか、もっとプリミティブな初期、アンダーグラウンドなメタル感。

A4 The Sight Made Our Hair Stand On End ★★☆

間髪入れずに次の曲、ちょっとミドルテンポというか引きずる感じでヘヴィな曲。一曲一曲が短くてテンポがいい。これは1分未満の間奏曲的なものか。最後に少し叫びが入って終わり、、、というか、えらく唐突に終わる。TIDALで聞いているのだけれど、もしかしたらファイルが切れている?

A5 To The End ★★★★

再び疾走曲へ、「最後まで諦めるなぁぁぁ」と叫ぶ。声がよりくっきりしてきた、メッセージ性が強い曲なのかな。ずっと疾走というか、浮ついたような高揚感がある、音階が落ち着くべき和音から半音とか、ちょっとズレた感じで上昇する。今改めてハードコア聞くと新鮮だなあ。畳みかけてくる。

A6 水の扉 ★★☆

水、水滴の音からベースのリフへ。空間残響的なアルペジオ。メロディアスなハードコアというとガスタンクとかにも近いのかな。ただ、そこまでメロディアスかというとメロディには煽情性はなく、不穏感、焦燥感、そこから突き動かされる疾走感といったものの表現が主で、クラシカルな和音の響き、様式美的な勇壮さはあまりない。ちょっと中東的に聞こえるのは、西洋音階の和音をずらした結果で、別に中東音階をなぞったわけではないんだろう。音階で言えばインド的ではなく北アフリカ的。スローテンポで進む、叫び声が多重に入ってくる。音響的な曲。

A7 Burning Spirit ★★★★

ベースからスタート、ゴリゴリとした響きからギターが入ってきてコードをかき鳴らす。ドラムが入ってくるがけっこう軽快。リズムは軽快に進む。今までの疾走曲に比べるとやや跳ねた感じか。「グルーヴ」とまでは行かないけれど。ノイズの比率が増えてきた。コードカッティングが多重に重なっている。コーラスとボーカルの掛け合いも入る。途中でテンポチェンジ、一瞬止まった後でBPMが上がる。この曲は構成が凝っている。刻みが出てくるがメタルとは違う感じ、もっとザクザクしている。ミュートをかっちりするというよりはコードカッティングを高速にたたきつける、と言った方がいいか。緊迫感を出すギターソロ、音階が上がっていきそのまま消えていく。

A8 Life Is Only Once ★★★★

比較的ミドルテンポでベースのリフがテンポを刻む、ギターが入ってくる。ちょっとメロディというか展開感がある。ややスラッシーな出来。そこから疾走に。モーターヘッドとか、スピードメタル、Venomとか、ああいう感じもあるな。スターリンの虫に比べれば一曲一曲がしっかり構成されている。やっぱりあれ特殊なんだろうな。ギターソロはけっこうロックンロール的。この曲は暴走ロックンロールだな。お、途中からミドルテンポに。なんとなくツインリードっぽい感じが出る。

B1 Flowting Blood ★★★★

ここからLPだとB面、少し音質が変わった? ボーカルの質感がちょっと変わった気がする、いや、ギターサウンドか。やや丸みを帯びたというか、アーシーな感じになったというか。この曲はベースとギターが別に聞こえるな。音は塊感があるのだけれど、きちんとベースとギターが分離している。スラッシュメタル的な音像かも。ギターソロもあるし。リズムもユニゾンというか、随所でキメが入ってくる。コーラスの怒号がかっこいい。

B2 Fight Your Way ★★★★

メロコア的、メロディアスなギターからスタート。ボーカルが入ると世界観が変わる、というか元に戻る。コード進行も変わる。平行移動するような、きちんと循環コードというより「音程が上下する」ことを意識したような、スライドするパワーコード。細かいことを気にせず突き進む感じが出る。ただ、ギターリフというかギターフレーズはメロディアスで和音、ハーモニー感がある。音が渦を巻く感じがある。91年かぁ。ギターメロディがツインリードに。ちょっとテトリスのテーマも彷彿させるな、ポルカ的なのかな。

と思ったらシーンが変わる、ピアノのシーンに。クラシカルで優美な音世界に。これは急激な変化。YOSHIKIみたいに誰かピアノ弾く人がいたのだろうか。

B3 No Laughing Matter ★★★☆

そこからまた疾走へ。「ウワァァァーーーー」の声が入ってくる。こういう緩急も含めてすごく目まぐるしいというか、若気の至り的な暴発感、ハチャメチャ感がいい。ハチャメチャ感というのは狙って出せるものではないからなぁ。全部をぶつけたから出てきた混沌というか、でも破綻している感はなく音はけっこうまとまっている。聞こうと思えば各パートを聞き分けられるし。ギターとベースはユニゾンしているので聞き分けるのは難しいが、ドラムはタイトで音の粒もそろっている。

B4 Catch The Sunshine ★★★★

声が勢いづいてくる、アジテーションというか、マイクとツバが見えるようだ。肉感的な声。ギターとボーカルの絡み、ドラムの手数。お、この曲もギターフレーズが展開した。ちょっとポルカ感がある。そういえば筋肉少女帯のイワンのばかもこんなメロディがあったような、ハードコア界隈というか高速スラッシュみたいなのとポルカは相性がいいんだろうか。ハードコアテクノとかもソ連にあるしな、なんかアングラな空気感を感じさせる音階なのかも。

B5 To Get Free ★★★★☆

ギターリフというかメロディとボーカルが絡み合う。これは和音感もしっかりあるし、曲としてのメロディがくっきりと出てくる。ライブで盛り上がりそうな曲。最後、さらに展開して終曲。

B6 Arms Control ★★★

アルペジオ、静謐で穏やかながら少し不穏な感じがする。こうして聞くとX(Japan)ってハードコアというか、そういうシーンから出てきたんだな。最初のコンピもそうだし、Stab Me In The Backとかハードコア。似た感じのやけくそというか「既存の枠を壊そう」というエネルギーを感じる。これもハードコアマナーなリフとボーカルのヴァースから、ツインリードへ。あまりギターフレーズはメロディアスではないが和音感というか、場面が変わる感じがしてフレッシュに聞こえる。

B7 Crossfire ★★★★☆

これも疾走曲、どの曲も勢いが良くて短い。短い中にアイデアが詰まっている。少しボーカルがコーラス感がある。叫びが多層になるので、和音感は薄いがコーラス。ちょっと歌メロというかフレーズが耳に残る。メロディアスなギターソロ。こういうちょっとしたフレーズがいい。メロディアスだなぁ。だいぶ音像は違うがEmperorとかもこんな感じがあったな、激烈な音世界にときどきメロディアスで美しいギターフレーズが一瞬差し込んできて、それが印象に残る、的な。この曲は大曲。最後は風の音で去っていく。

全体評価 ★★★★

駆け抜けるようなアルバム。15曲で42分29秒。どの曲も短い中にもアイデアが盛り込まれていて硬派・肉体派な感じがベースにありつつところどころ知性派・メロディアスな感じが混じっている。この当時、インディーズでこれだけのアルバムを作ったのは凄い。スタジオとか機材も今と全然違うだろうし、ここまで完成度を高めるには緻密な作り込みがなされたのだろう。本を読んでも「スタジオワークにはかなり凝った」的なことが書かれていたが納得。

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