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The Darkness / Motorheart

総合評価 ★★★★☆

安定して良質なハードロック、80年代ヘアメタル化したキンクスみたいな。ファーストアルバムでいきなり全英1位を取り、クィーン的と評されたダークネスも2作目にして分解。その後2012年に再結成してすでに7作目のアルバム。安定した固定ファンが付き、その期待を裏切らない良質なハードロックアルバムをリリースしている。曲調はクィーン的、特にコーラスのつけ方は初期クィーン(オペラ座の夜以前)的だが、実のところボーカルのスタイルはフレディマーキュリーには似ていない。もうちょっとヘタウマ系というかひねくれた英国ロックというか、一番近いのがキンクスなのかもなぁ、と改めて聞いて思った。バンドサウンドはクィーンオマージュがあるけれど、曲そのものの構造とかひねくれたセンスとかはキンクスの流れを汲むのかもしれない。前作も良い出来だったけれど本作も心地よく聞ける良盤。キメ曲がないのが惜しい。

1.Welcome Tae Glasgae 02:49 ★★★★☆

Ace of Spadeみたいなベースリフからスタート。そこからスコットランド的なバグパイプが入ってくる。noteで「ケルト音楽なんてない、スコットランド音楽だ」と書かれている記事を読んでなるほどなぁと思ったので私も「ケルト」とはあまり使わないようにしよう。スコットランド的なフレーズ。そこからボーカルが入ってきたらいつものダークネス。このバンドは強烈な個性があるよなぁ。現在の英国ハードロックバンドの中では娯楽性、スター性、楽曲の質などすべてがトップレベルのバンドだと思う。

2.It's Love, Jim 03:23 ★★★★☆

今回は比較的オーソドックスなハードロックサウンドが多いな。昔からそうか。バッキングとかリフは「どこかで聞いたような」スタートをするのだが、ボーカルが入り、曲が展開していくうちにダークネス以外ありえない不思議な世界観になる。フレディマーキュリー、初期クィーン的(オペラ座の夜以前)なごった煮感はあるのだけれど、ちょっとソウルフルというか、裏声を使いまくるスタイルなんだよな。そういえばロジャーテイラーの息子も在籍しているはず。クィーンの系譜を継ぐバンド、ではあるのだけれど、頑なに初期クィーン的なサウンドにこだわっているのが特性。めまぐるしい展開、玉手箱をひっくり返したような音像。音が妙に軽いというか、軽快。かなり要素を詰め込んでいるのにさらっと聞ける。

3.Motorheart 04:59 ★★★★☆

ちょっとエスニックというか、うーん、北欧的? バイキング的な勇壮なメロディからスタート。そこから疾走へ。70年代後半(超初期)の北欧メタルみたいだな。ハードロックからプロトメタルへ展開しつつあるような音。いきなりアリーナロック的な華やかなコーラスが出てきた。だけれどボーカルは裏声で攻めてくる。キメラ感。ああ、これ裏声ボーカルが細いから、それに合わせてギターの音とかも細目なのかな。昔からバンド全体の音が軽い。迫力不足ということではなく軽快さ、妙な浮遊感(高揚感)に繋がるのでこのバンドのユニークなサウンドデザインなんだろう。かなり曲展開は複雑でプログレ・ハード的。

4.The Power and the Glory of Love 03:58 ★★★★

ちょっと80年代USメタル的な、あか抜けたサウンドに。いや、でもやはり英国臭が強いな。FreeやThunderみたいなハードロック。コーラスの最後でやはり裏声になる。比較的ストレートな曲。

5.Jussy's Girl 04:09 ★★★★☆

こちらもヘアメタル的なリフからスタート。ボーカルが入ってくると英国感が増すというか、USの80年代ヘアメタルのきらびやかな感じとは違ってくる。発音とかアクセントなのかなぁ。クィーンフォロワーと言われるがボーカルスタイルは実はあまりフレディマーキュリーには似ていない。ちょっと唾をためる感じとかはミックジャガーとか。あとはキンクスのレイデイヴィスとかの方が近いんじゃなかろうか。ああ、キンクスっぽいというのが一番しっくりくるかもな。ごった煮感もあるし。80年代ヘアメタル的な世界観をキンクスがやっている音像。別に80年代キンクスにはそんなに似ていないけれど。

6.Sticky Situations 04:18 ★★★★☆

エレキギターのアルペジオからスタート、ロックバラード。途中から大仰に盛り上がっていく。王道のUKハードロックバラード。コーラスも入ってくる。この曲のコーラスの入れ方はクィーン的かもな。ただ、ギターオーケストレーションはそこまで大げさではない。多少は重なっているけれど。「ダークネスらしい」曲。バックトラックはクィーンにけっこう寄せているな。ちょっと(初期)Rush風でもある。

7.Nobody Can See Me Cry 03:16 ★★★★☆

お、疾走曲、クィーン2のB面みたいな。こういう曲あったな。ただ、ボーカルが入ってくると世界観は変わる。独特の浮き立つ感じが出てくる。ヘタウマ、というか、音程はしっかりしているけれど声量があまりないんだよな。声質も細目だし。それがちょっと情けない感じがして、このバンドの持ち味になっている。なんとなくスリリングというか、耳を惹くからカリスマボーカルなんだろうな。大槻ケンヂタイプというか。レイデイヴィスもどちらかといえばそっち系だよね。高速リフの疾走とミドルテンポのボーカルパートと、目まぐるしくシーンが変わる。

8.Eastbound 03:36 ★★★★☆

軽快なハードロックンロール、アルバム後半になるにつれて世界観が深まってきてバンドのグルーヴも熱くなってくる。いいバンドのアルバムは聞いているうちに熱が溜まっていく、世界観が醸成されていく感覚がある。ライブのように熱量が高まっていく。この曲も何気ない曲だけれど、こういう曲をきちんと聴かせられる魅力があるのがこのバンドの特徴の一つだと思う。飛び道具的なメロディ展開やファルセットへの移行だけでなく、ベタなハードロックがサマになるのは作編曲演奏能力が高い。曲が終わったかと思わせてブレイクで戻ってくる。

9.Speed of the Nite Time 04:52 ★★★★☆

70~80年代的な、ちょっとディスコな感じもするビート。スペーシーというか。ボーカルの音域が低め。ちょっとThin Lizzy的なメロディ。後半、スペーシーかつオカルトというか、飛び回るホーンテッドマンション的な、イルミネーション遊園地お化け屋敷的な雰囲気も出てくる。ちょっと変わった毛色の曲だが娯楽度高め。


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