15.中央アジア古典音楽のダイナミズム = HasSak
HasSakは2013年に結成されたカザフスタンの民族楽器バンドです。それぞれ国立音楽院などで伝統的な教育を受けており、カザフスタンの伝統音楽継承者としての国民的地位と人気を得ています。先日、モンゴル音楽を紹介しましたが、そこでも取り上げたホーメイ的な歌唱法に加え、各種伝統楽器を扱って伝統的な高揚感をもたらしつつ、現代ポップスにも通じる短い尺の中でドラマを描いています。本人たちは意識していないと思いますが、各種の声の使い方やグロウル、言葉を詰め込んだパートなど、ボーカルパートだけ抜き出せばメタル的要素も感じます。そうした「人を高揚させる」現代的技法をうまく取り入れている印象です。
あまり日本には情報が入ってきませんが、カザフの伝統的な音楽で、トルコの騎士団のサーガなどを現代風に演じているとのこと。トルコ音楽、スーフィーミュージックや弦楽器アンサンブルの組み立て方は中央アジアからトルコにいたる音楽的遺産を十分に吸収し、血肉としている感じを受けます。
トルコ伝統音楽はペルシャ朝時代から続く伝統ある音楽で、西洋のクラシック音楽と同等かそれ以上の歴史を持っています。大作曲家も数多く存在し、室内楽や交響曲、軍楽などさまざまなジャンルを内包しています。たとえばHasSakのような編成の純トルコ音楽はこちら。
独特な音階と楽器群で、西洋音楽とは異なる世界観があります。
スーフィーミュージックはパキスタンなど中央アジアでよく聞かれる「カッワーリ―(qawwali)」という音楽形式が有名です。こちらは「Nusrat Fateh Ali Khan」が著名で、Peter Garbrielとコラボレーションし、世界的な知名度を誇りました。
繰り返しと合唱が特徴的で、比較的長尺の曲でじわじわと高揚感を作っていきます。この形式は今のボリウッド・ミュージックにも影響を与えています。なお、スーフィーミュージックはトルコにもありますが、トルコのスーフィズムはメヴラーナ旋回舞踊のようにより瞑想的なイメージです。
中央アジアはこれらの音楽の影響をそれぞれ受けており、HasSakはこれらのエッセンスを取り入れつつ自分たちの音楽を作り上げているセンスを感じます。
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