90年代Cow Metal:グランジムーブメント下のアメリカーナ+ハードロック(グランジがHR/HMに与えた影響シリーズ)
未来のために語り継ごうシリーズ。メタル史では現在1980年代を追っていますが1990年代、グランジムーブメントがHR/HMに与えた影響シリーズの新記事です。
カウパンク(またはカントリーパンク)というジャンルがありまして、その名の通りアメリカーナ(カントリー、ブルーグラス、フォーク、ブルースなど)と融合したパンクのサブジャンル。でも、カウメタルってないんですよね。近いものとしてはサザンメタルがある(→こんなの)のだけれど、これもあんまりメジャーじゃない。「カウメタル」的な音があるんじゃないかと思ってまとめてみることにしました。
なんで「カウ」かと言えばこの2つのアルバムの印象が強いから。
今日の記事は、プライドアンドグローリーやゲットアグリップみたいなカントリー色強めのハードロック/メタルばかり集めてみよう、という試み。
グランジブームを振り返ってみると「アメリカーナの復権」と言える面もあります。80年代の煌びやかな音から内省的、もっと言えば土着的、ブルース回帰だけでなくカントリーやブルーグラス、フォークも含めたUSのルーツミュージック的な音像に回帰していった。
90年代にフォークメタルというサブジャンルが生まれます。ケルト音楽とか、各地の民族音楽、古典的な大衆音楽とメタルが融合したジャンル。ただ、不思議なのはあんまり「アメリカンフォークメタル」って聞かないんですよね。イメージしているのはプライドアンドグローリーみたいな音なんですがそういう括りがない。加えて言えば「フォークメタル」ってデスボイスが一般的なんですよ。なので、Agalloch、Wilderun、Wayfarer、Panopticonとかが「アメリカンフォークメタル」に該当するのでしょうが、そういう極端なものじゃなく、90年代に多くのアーティストがルーツミュージックに回帰し、アメリカーナと融合したハードロック、ヘヴィメタルを奏でていた。たぶん、90年代にあまりに当たり前の音だったのでサブジャンルとしてわざわざ区分けされず「グランジ・オルタナ」の流れの中に埋もれてしまった。けれど、音像としてははっきりとした特徴が感じられるのでそうした楽曲を集めてみました。あんまりこれを括るいい単語がなかったので勝手にカウメタルと名付けます。
ヘッダー画像にした通り、ドライブとかにいいんですよ。リアルなアメリカーナだとゆったりしすぎる時、たとえばライクーダーとかデビッドリンゼイとか、もうちょっとポップだとブルーススプリングスティーンのネブラスカでもいいんですが、そうしたものより今回選んだ曲は派手です。何しろハードロックやヘヴィメタルって基本的に派手ですから。ある意味、きちんとアメリカーナを聞く人からは「軽薄・薄味」とされ、(一部のヒット曲を除けば)ハードロックやメタル好きからは「グランジ化の闇歴史・地味」とされたかわいそうな曲たちとも言えるかもしれませんが、こうして集めてみるとなかなか魅力的です。ぜひ聞いてみてください。記事最後に名盤リストもあるのでそちらもどうぞ。
各アーティストのメモ。曲は一部。全曲はプレイリストで。
ルーツロック色強めのハードロック:The Black Crowes
1990年にデビューし、デビューアルバムが大ヒットしたブラッククロウズ。アメリカンルーツロックが再評価されたのは彼らの影響も大きかったかも。ニルヴァーナは70年代ロックには回帰した部分があったけれど、それほどアメリカンルーツロック色は強くなかった。80年代からシンデレラ(あとで出てきます)やグレートホワイトみたいなルーツ色が強いバンドも出ていたけれど、ブラッククロウズはさらにその色を突き詰めたバンドだったと思います。個人的には今のところそこまでバンドとしては好きではないけれど、この曲はプレイリストの1曲目として派手過ぎず地味すぎずちょうどいい感じ。
サザンメタル:Pride & Glory
ザックワイルドが率いたプライドアンドグローリー。この曲はアルバムオープニング。バンジョーが入ってきてこれぞ「アメリカンルーツミュージックと(80年代)メタルの融合」という曲。なお、プレイリストにはこの曲は入れていない。もっと好きな曲を入れました。入れた3曲はどれも素晴らしいと思います。バラードのSweet JesusはなんだかギターがジャクソンブラウンのLate For The Skyみたいなんですよね。これをプレイしているのはスライドギターの名手、デビットリンゼイ。全体的にこのアルバムはギターの音が素晴らしい。
Ozzy Osbourne
ザックワイルドがプライドアンドグローリーを組む前に参加していたのがオジーオズボーンバンド。この曲ではザックのカントリー趣味がイントロに出ています。ただ、曲が始まると歌メロはカントリーっぽくない。オジーって英国人だから、やっぱりUKロックの人ってカントリーやブルーグラスとはセンスが違うんでしょうね。今回選んだのは基本的にUSのアーティスト。UKのアーティストはザックワイルドがギターを弾いているということでこの曲だけ。
Down
パンテラのフィルアンセルモが率いたDown。「サザンメタル」の代表的なバンドとしてRYMでは挙げられています。パンテラ時代からサザンミュージックの影響を感じさせていたけれど、Downのアルバムではさらに顕著に。とはいえ基本的にはヘヴィでグルーヴィなんですがこの曲だけは音像的にもルーツ色が分かりやすく出ている。いい曲。
Corrosion of Conformity
こちらもパンテラ繋がり、アルバムにはフィルアンセルモがゲスト参加している。サザンメタルと言われる音像。このあたりはストーナーメタル、スラッジメタルに続いていきます。ルーツ色が明確に強い曲は少なめ。これはこれで一つのジャンル、音像という感じ。
カントリーを取り入れた王道ハードロック:Aerosmith
今回のプレイリストの目玉アーティストの一つ、エアロスミス。70年代から活動しているしルーツミュージックには近いんですが、実のところそんなにカントリー色は強くなかった、むしろ若い頃は避けていたような印象も。ゲットアグリップでいきなりカントリー色を前面に出した曲を何曲か出し、お家芸のロックンロールもよりオールディーズな、ロカビリー的なノリを導入。ちなみにこのクレイジーのMVが(ボーカル、スティーブン・タイラーの娘である)リブ・タイラーがブレイクするきっかけになりました。ゲットアグリップの次のアルバム、ナインライブスではカントリー色は減衰し目立つのは1曲だけ(プレイリストに入っているPink)。なお、だいぶ後に出されたスティーブンタイラーのソロ作はカントリー色強め。
新世代によるルーツロックの解釈:Guns'n'Roses
ガンズはエアロと並んでこうしたツールミュージックをハードロックに取り入れることに成功したバンドだと思います。当時は新世代として飛ぶ鳥を落とす勢いだったガンズ。改めて聞くとユーズユアイリュージョンは全体的にルーツミュージックへの接近が見られる。ローリングストーンズの「メインストリートのならず者」みたいなイメージだったのかもしれない。退屈だと感じた曲も、こうした「90年代ルーツロック回帰」の流れの中で観ると「いい出来だなぁ」と感じたり。スラッシュはこういうギターが上手い。やっぱりどれだけテクニックがあってもルーツミュージックを弾ける人と弾けない人がいるんですよね。基本的にメタルやハードロックのギタリストって技巧派だし、ブルースは弾ける(パワーコードやリフという概念自体、ブルース的)のだけれど、リズム感とか、あとはスライドギター奏法とかは差を感じます。スラッシュは素晴らしい。
Slash's Snakepit
スラッシュのソロプロジェクト。これがガンズ空中分解の一因となったいわくつきのアルバムですが、ここでもスライドギターが唸りまくっています。ボーカルは元ジェリーフィッシュのエリックドーヴァー。かなりソウルフル。スラッシュってイギリス人なんですよね。イギリス人の父親とアフリカ系アメリカ人の母親とのハーフで、11歳まではイギリスに住んでいた。だから生粋のアメリカ人に比べると客観的に「USルーツロック」というものをとらえているのかもしれない。アメリカンミュージックのギター奏法の美味しいところが凝縮されているような気がするんですよね。
スラッシュとルーツロック:Metallica
メタリカも意外とルーツミュージックをうまく取り入れています。ジェイムスヘッドフィールドはカントリー好きだし、実はメタルジャスティスもアルバムタイトル曲のイントロはちょっとその影響が見られる。ブラックアルバムに入っているこの曲はカントリー、ウェスタンっぽいし。次のロード、リロードもカントリーっぽい曲が入っています。ReLoad収録のLow Man's Lyricなんかメタリカとは思えない、ほとんどジェイムスヘッドフィールドソロ曲ともいえそうな出来(ソロを出したことはないですが、出したらこんな感じなのかも)。ちょっと面白いのはRonnie。いつものメタリカの個性を残しながらギターがカントリー色が強い不思議曲。でもジェイムスヘットフィールドってカントリーっぽいギターが上手いですね。たぶんプライベートではこうした曲をつま弾いているのでしょう。改めて考えと90年代のメタリカってけっこうジェイムスの個人的嗜好、音楽性が前面に出たのかもしれない。ルックスはラーズやカークの変化が目立ちますが、音楽的にはカントリーとかアメリカンルーツミュージックに接近していて、それってジェイムス発信な気がする。ラーズって、多分人のアイデアを形にするのが上手いんですよね。ドラマーだし。メタリカの曲は基本的にジェイムスとラーズの共作ですが曲の骨子となるギターやボーカルラインはジェイムスが作るのでしょう。あと、Load、ReLoadってやっぱりUse Your Illusionを強く意識していたんだろうなぁ、と感じたり。90年代のMetallicaはガンズの影響が強い(それ以前に個性は十分に確立していたので、その上でガンズ的なものを取り入れようとしていた)。
Megadeth
メタリカがやることはメガデスもやります。ただ、そこにデイブムステインらしいひねりを加えて。改めて聞くとクリプティングライティングはアメリカンルーツロック的な要素を取り入れたアルバムだったと気づきます。スライドギター、残響音、少しためのあるリズム。破滅へのカウントダウン~ユースアネイジアから少し取り入れられた要素がさらに前面に出てきています。ノリがアメリカン。どこか荒野、カラッとしたドライな感じがします。一般的なUSロックに接近している。この次のアルバム「リスク」ではさらに進んでグランジの音像に近づいていくわけですが、クリプティングライティングがUSロックと従来のメガデスのバランス比が最適かも。
Anthrax
スラッシュ四天王のうちアンスラックスもカウボーイソングで参戦。ただ、これシンリジィのカバーなんですよね。シンリジィはアイルランドのバンドなのでUSルーツロックというよりはその憧憬的な曲なんですが、アンスラックスのバージョンの方がアメリカンな感じに。まぁ、NYのバンドなんでそんなにサザンロックとかカントリーが自分たちの内側にはなかったのかもしれないし、シンリジィのカバーを思いっきりアメリカン(特にイントロ)にすることがちょっと彼ららしいひねくれた感じもします。なお、残るSlayerはさすがにカントリーっぽい曲はなし。それよりはカバーアルバムなどでハードコアに接近していきます。
Annihilator
80年代スラッシュ勢の中で特筆すべき変化をしたのがアナイアレイター。今回のプレイリストに選んだ3曲は出色の出来です。ルーツロックらしい余白やゆるさを出しつつ80年代スラッシュ的な鋭利さも感じさせる。そしてブルースやカントリー、アパラチアンフォーク的な歌メロが乗るという面白さ。この曲なんかブルーグラスアレンジしてもいい感じに聞こえると思います。プレイリストの他アーティストに比べるとプロダクションやボーカルの力量含め少しB級感はありますが、90年メタルならではの魅力が詰まった3曲。
グラムメタルとルーツロック:Bon Jovi
年を経るにつれてカントリー、ハートランドロック(ブルーススプリングスティーンみたいなの)的な音像に変化していったボンジョビ。80年代からウォンテッドデッドオアアライブというウェスタンな世界観の曲を出していましたが、それを更に推し進めたブレイズオブグローリーや、思い切りカントリーのサムデイアイルビーサタデイナイトなどところどころ光る曲が。ジョンボンジョビのソロアルバム、デスティネーションエニホエアではカントリーっぽい音をループリズムトラックと組み合わせるという実験を行って、それがのちのロストハイウェイに繋がったり、アメリカンロック、カントリー的なものを取り込み続けているアーティストです。最近は落ち着きすぎていますが90年代~00年代初頭まではハードロック的なきらびやかさも十分残っていて魅力的。ただ、意外と思いっきりアメリカンルーツミュージック的な曲は少ないんですよね。リッチーサンボラがあまりそういうプレイが得意でない印象も。プレイヤーより作曲家。メロディメイカーとしての側面が強いギタリストなんだと思います。ジョンも同じで上手いボーカリストと言うより作曲家。だから、コード進行とか独特のメロディが「ボンジョビ印」であって、あまりルーツミュージックに構造が寄ってしまうと面白みがなくなる。そんな中でうまくボンジョビとしての芯とカントリーやウェスタンが融合している3曲(なお、90年代からしか選んでいません)。特に「ヘイゴッド」は派手さ盛り上がりとルーズさがあるギターの兼ね合いが素晴らしい。
Cinderella
シンデレラは80年代からこうしたルーツロックを取り入れているバンドでした。80年代のロングコールドウィンターもそうした色が強いし、代表曲ジプシーロードもルーツロック色がしっかり入っている。ルックス的や出てきた時代的にグラム(またはヘア)メタルに括られますが、その煌びやかさ、楽観的な娯楽性とルーツミュージックの深みを融合させることに挑戦したバンド。全曲成功してはいませんが、名曲も多いバンドです。トムキーファーのボーカルもいい声。
Great White
こちらもグラムメタルシーンの中で出てきたけれどルーツ色が強かったバンド。90年代に入ると急激にセールスが落ちて勢いを失ってしまいましたが、この時代ならではのバンド。
Tesla
90年にアコースティックライブアルバムで人気を博したバンド。アコースティックアルバムはカントリー的なプレイも多く入っていますが(1曲目から思い切り出ている)、その後に出たアルバムでもそうした曲が収録。全体的にはあまりグラムメタル色なお色気がなく、快活なアメリカンハードロックバンド。もともとルーツロックに根差しているというか自分たちの芯があったので90年代でもそこまで音像が変化しませんでした。
Mr.Big
こちらももともとブルージーでアメリカンルーツミュージック的な側面を持っていたミスタービッグ。彼らの大ヒット曲トゥービーウィズユーにしても思い切りカントリーの曲だし(むしろハードロック色がほぼない)、この曲は構造がブルーグラス。エリックマーティンのボーカルが活きています。彼らの中でも比較的ルーツミュージック色が強くて少しのんびりしたカウ(牛)メタル的な曲を選んでみました。
Poison
ルーツミュージック、地に足がついた音楽からほど遠そうなポイズンもギタリストにリッチーコッツェンを迎えたネイティブタンではこうした音像に茶レンジしています。それまでのパーティーロック感と内省的な音楽とのミスマッチ感がありつつ、他にない奇妙な感じになっているのも事実。この曲はうまくかみ合っています。
Warrant
ウォレントもブルージーに。なお、これらの曲って「1990年」なんですよね。グランジブームの前(ニルヴァーナのネバーマインドは1991年)。なので、ブルース回帰とかルーツミュージック回帰はグランジとは別に、80年代の終わりと共にハードロック、ロックバンド界のトレンドとして皆が取り入れつつあったのでしょう。グランジはそれに加えてボーカルの音域が低音域になり、ギターとベースが一体化し、リバーブが少なくなった。音響と音域が変化しますが、ルーツミュージック回帰自体はグランジの前から起きていたムーブメントだったことが分かります。むしろ、グランジってオルタナティブフォークの流れを生んだかもしれない。カントリーって基本的にコード進行が類型化しがちだけど、そこをずらした不協和音的なコード進行を使う、それがグランジ的、いや、90s的なセンスとしてカントリーやフォークにも逆輸入された。
Winger
Wingerってプログレですよね。演奏がめちゃ技巧派。ギタリストだけじゃなく全員上手い。むしろボーカルがやや弱めというか。弾きながら歌ってますし。分厚いコーラス、ハーモニー、歌メロ主体というよりバンド全体の演奏力やグルーヴを生み出す職人的なバンドだったと思います。彼らがグランジムーブメント下でリリースした「Pull」でもきちんとルーツロックやグランジ的音響といった時代を取り入れた良曲を生み出しています。
他、DokkenやMötley Crüeもルーツ回帰的な曲を出していました。あまり好きな曲がなかったので割愛。モトリーはジョンコラビ時代のアルバムMmisunderstood~Loveshineはカントリー的なので興味のある方はどうぞ。Dokkenはアコースティックライブアルバムなんか出しています。意外とジョージリンチはルーツミュージック的なプレイもできるんだけれど、90年代はあまりいい曲がない。
Savatage
グラムメタルではなくパワーメタルですが、サヴァタージもルーツ感を取り入れた曲を出しています。というか彼らは特異性が高いので、彼らのバラードがたまたまそう聞こえる、という感じかも。癖強いジョンオリヴァのボーカルから専任ボーカルのザッカリースティーブンスを迎えてのエッジオブソーンズからのナンバー。名バラード。
Harem Scarem
カナダのハーレムスキャーレム。なぜかこのアルバム(「Voice Of Reason(1995)」はアップルミュージックにありません。Tidalにはあるんですが。YouTubeで貼っておきます。なお、こうしたカントリー+ハードロックは90年代が終わるとともにUSではフェイドアウト気味なんですが、00年代に入るとカナダからニッケルバックが現れて大ヒットします。ニッケルバックは初期は煮え切らないオルタナティブメタルだったんですが、3rdから歌メロにカントリー色が強まる。こうした90年代の「分かりやすいカントリー的なハードロック」の空白をうまく埋めたのかもしれません。ちなみにその後にその穴を埋めているのがFive Finger Death PunchやShinedownな気がする。
ベテラン勢のルーツロック回帰:Alice Cooper
70年代(デビューは1969)から活躍するベテラン勢、最初はアリスクーパー。70年代から活躍するので「70年代回帰」は大得意だと思うのですが、エアロと同じでむしろ当時は差別化のためにルーツミュージックからどう脱却するか、を意識していた気がします。彼が自分の特異性に固執せず、いわばカントリー的な「ベタベタのメロディ」をデズモンドチャイルドと組んで打ち出して大ヒットしたのが90年の「Trash」。思い切り90年代的なバラードなんですが改めて聞くとカントリー的なメロディ。
KISS
KISSはそこまで音楽性の影響を受けませんでしたが(時代時代で変化はあるもののアルバムを通してみると自分たちらしい音像を確立している)、結局発売されなかったCarnival of Soulsはかなりグランジ、90年代的なサウンドに接近していました。海賊版でかなりの音源が流出したためあとからリリースされたアルバム。この中のバラード「I Will Be There」はKISSらしさがかなり少ないオルタナティブカントリー曲。
ZZ Top
ZZ Topはもともとルーツミュージックに接近していたバンドだったのであまり90年代でも音像は変わらず。94年のアルバム「Antenna」収録曲。ただ、この次作リズムミーンで急に実験的な作風に変わるんですよね。特に衝撃的なのがホーメイからスタートするHummbucking, Part2。
もともとルーツミュージックとの融合を図っていたライクーダーがキューバ音楽(ブエナビスタソシアルクラブ)に行ったり、ルーツミュージックをロックの文脈で取り上げるパイオニアたちはワールドミュージックに興味を持つ時代だったのかも。単にアメリカンルーツミュージックに回帰するだけでなく、他の国のルーツミュージックも取り上げてしまおう、と。このアルバムはアフリカとアジアのいくつかの地域の音楽の影響を感じます。ただ、実験的すぎたのかリズミーンは急激にセールスを落としてしまいますが、面白いアルバム。
Van Halen
Van Halenってブルースの影響をあまり感じないというか、ブルースやカントリーの要素から脱却することを強く目的にしていたバンドな気もするんですよね。そういう予定調和的なものを嫌った。エディヴァンヘイレンという人のギタープレイヤーとしても作曲家としても特性だった気がします。かなり実験的なんですよね。どのアルバムも。奇妙なインスト曲とかが入っているし。ただ、そんな彼らも彼らにしては90年代以降はルーツミュージックに接近していきます。Fxxkこと「For Unlawful Carnal Knowledge」と「Balance」は王道アメリカンロック的要素が彼らにしては強め。ゲイリーシェローンをVoに迎えたVan Halen 3ではまた予定調和を嫌う摩訶不思議な音像に戻っています。
90sに生まれたバンド達:Alice In Chains、Soundgarden、Stone Temple Pilots、Creed
このあたりのバンドは90年代のバンドの中でカントリー色が強めでした、というかアルバムによるので「カントリーやフォーク色、ルーツミュージック色強めのアルバムを出したことがある」というべきか。ちょっとねじれたコード展開は彼らがオリジナルなのでさすがのこなれ具合。ほかのベテランたちと比べると強みとする部分の違いを感じます。ベテラン勢が変わったコード進行をしようとするとちょっと無理をしている感じが出たりするけれど、抒情的なソロを弾かせたりコーラスワークとか、王道コードの歌メロとかを作らせると説得力が凄い。逆に若いバンドはそうした説得力は少ないけれどコード進行などにセンス、新しいものを生み出す力を感じます。
そんな90年代組で、唐突にスイスから現れたゴットハード。スイスなのに妙にアメリカンな音を出すバンドでした。上記のバラードなんかアメリカンど王道。ベテランバンドの風格があります。若手なのに王道系バンドは90sアメリカではあまり生まれず、離れたヨーロッパの地で生まれていました。
90s Cow Metal 名盤リスト
おまけとしてCow Metalらしい音像が楽しめると個人的に感じたアルバムを並べておきます。上記プレイリストに耳を惹かれたらディグってみてください。個人的感性で「アメリカンルーツミュージックの取り入れ度合い」を重視しています。あんまりゴリゴリのグランジ(Alice In Chainsとか)は入れていません。そういうのは名盤リストもたくさんあるし。これはどちらかと言えば「(一部大ヒット作もあるけれど)忘れさられた名盤リスト」かも。
Cinderella / Heartbreak Station(1990)
おすすめ曲
The More Things Chang
Shelter Me
Heartbreak Station
One For Rock & Roll
Dead Man's Road
Electric Love
Van Halen / for unlawful carnal knowledge(1991)
おすすめ曲
Spanked
Runaround
In ’N’ Out
The Dream Is Over
Right Now
316
Guns 'n' Roses / Use Your Illusion 1,2(1991)
おすすめ曲1
Dust 'n' Bones
You Ain't The First
Bad Obsession
Double Talkin' Jive
The Garden
おすすめ曲2
14 Years
Yesterdays
Breakdown
So Fine
Estranged
Skid Row / Slave to the Ground(1991)
おすすめ曲
Monkey Business
Quicksand Jesus
Get the Fuck Out
In a Darkened Room
Wasted Time
Metallica / Metallica (1991)
おすすめ曲
The Unforgiven
Wherever I May Roam
My Friend of Misery
Aerosmith / Get A Grip(1993)
おすすめ曲
Eat The Rich
Fever
Livin' On the Edge
Crazy
Cryin'
Line Up
Amazing
Poison / Native Tongue(1993)
おすすめ曲
Stand
Until You Suffer Some (Fire And Ice)
Winger / Pull(1993)
おすすめ曲
Down Incognito
The Lucky One
Mötley Crüe / Mötley Crüe (1994)
おすすめ曲
Hooligan's Holiday
Misunderstood
Loveshine
Welcome To The Numb
Driftaway
Pride & Glory / Pride & Glory (1994)
おすすめ曲
Losin’ Your Mind
Harvester of Pain
Sweet Jesus
Machine Gun Man
Cry Me A River
Hate Your Guts
Bon Jovi / These Days(1995)
おすすめ曲
Hey God
Something For The Pain
This Ain't A Love Song
These Days
My Guitar Lies Bleeding In My Arms
Hearts Breaking Even
Anthrax / Stomp 442(1995)
おすすめ曲
Riding Shotgun
Bare
Mr.Big / Hey Man(1996)
おすすめ曲
Take Cover
If That's What It Takes
Metallica / Load(1996)
おすすめ曲
The House Jack Builit
Hero of the Day
Bleeding Me
Poor Twisted Me
Mama Said
Ronnie
Metallica / Reload (1997)
おすすめ曲
The Unforgiven2
Carpe Diem Baby
Where The Wild Things Are
Prince Charming
Low Man's Lyric
Fixxxer
Megadeth / Cryptic Writings (1997)
おすすめ曲
Almost Honest
Use The Man
I’ll Get Even
Sin
Have Cool, Will Travel
Megadeth / Risk (1999)
おすすめ曲
Breadline
Wanderlust
Ecstasy
90年代グランジとHR/HMについて触れた他記事はこちら。
そのほか、90年代を描いた記事。
それでは良いミュージックライフを。