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Papangu / Holoceno
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総合評価 ★★★★★
ブラジルのプログレッシブメタルバンド。それなりにアグレッションはあるのだけれどエクストリームではなく、プログレッシブな色が強い。最近のキングクリムゾンぐらいの攻撃性。サックスも入ってくるし、先日見たキングクリムゾンライブにも近い感覚があった。音作りやメロディセンスは独特で、ブラジルならではの感覚も少し入っている。ブラジル音楽特有の「不思議なメロディーなのだけれど妙に説得力がある」感じがある。なんだろう、あまり日本人にはなじみがないコード進行とかメロディ進行なのだけれど、心地よくて聞いてしまう、というか。カエターノヴェローソとかマリーザモンチとかレニーニとか、「なんだか良く分からない(聴きなれない)メロディなんだけどいい曲」という感じ。ジャケットはかなりダークな感じだし、実際に音の圧は高いけれど、そこまでアグレッションが高いエクストリームメタルというわけではなく、王道のプログレッシブロックにメタルのテイストを足した感じの音像。あと、いわゆる「プログメタル」的な変拍子の多用はなく、それなりに凝ったリズム(手数も多い)ではあるが一定のビートがある。心地よく乗れる。もともとストーナーロックバンドとして結成されたそうなので、そういう「酩酊感」というか、一定のビートでだんだんと高まっていく感じがする。プログレッシブロック好きに広く訴求できそうなアルバム。
貴重なインタビュー
1.Ave-Bala 03:11 ★★★★☆
話し声のようなSE、轟音が響いてくる、ややSepultura的なしなるリズム感があるか。反復するリフ。「ヌーヴォ・メタル」期のキングクリムゾン的。トリプルドラムではないがかなり乱打している。アーティスト写真でマグマのTシャツを着ているがマグマ的かも。煮えたぎるジャズロックといえばそんな雰囲気もある。
2.Água Branca 04:08 ★★★★☆
やや不協和音感のあるリフ、呪術的な声が入る。ちょっとトライバル。ただ、コード進行は全体的にスラッシュ/デス的というよりはプログレ、UKプログレとかに近い、けっこうキレイに進んでいく。ブラジル音楽(MPBとか)特有のサウダージ感のある独特なコード進行はあるけれど、そこまで強烈ではない。でも、ボーカルが入ってくるとポルトガル語か。なかなか強烈だな。イタリアンプログレのオザンナとかムゼオローゼンバッハ的な爆発力も感じる。
3.São Francisco 04:53 ★★★★★
勢いのよいビートから急にスロウになり、うごめくようなビートに。こういうのはトライバルを取り入れようとするバンドが使うビートな気がする。オーストラリアのエイリアンウェポニーとかもこんな感じだったような…。お、そこから変わった。これはブラジルならではの展開。MPBっぽいメロディになる。(最近の)カエターノヴェローソとかLos Heromanosとかそんな感じ。ブラジルのオルタナティブロックの文脈にも沿った曲。激烈性が増してくる。
4.Bacia das Almas 05:36 ★★★★☆
これは伝統的なプログレっぽい始まり方。面白いな。とはいえちょっと辺境的、UKプログレとは違う。うーん、北欧プログレ的かも。カイパとかフラワーキングスとか。ただ、ボーカルはもっとダークでアグレッシブ。全体的にはイタリアンプログの情念がある。いや、(フランスの)マグマというべきか。フレンチプログレも独特だからなぁ。とにかくUKではない欧州プログレ感がある。その土地の独自の風土と結びついた音楽性、音楽文化を飲み込んだロック、というか。ボーカルとベースラインがユニゾンする。奇妙でパンキッシュな音楽。
5.Terra Arrasada 07:50 ★★★★★
ややいびつな和音だが、たとえばImperial Triumphantのような「意図的に不快にさせる和音」まではいかない。ダークな感じがある、ぐらい。ブラジル音楽のコード感覚って独特だよなぁ。ビートも独特だけれど。和音の概念はポルトガルからギターが持ち込まれたことによって発展したと思うのだけれど(そもそも、入植される前に南アメリカには土着の音楽文化はどの程度あったのだろう、バイーアの音楽などをアルバトロスが採取していたが、基本的にビートとかビリンバウの響きとか、かなりプリミティブなリズムミュージックだった気がする)、こういうコード感は独特。ポルトガル音楽ともまた違う気がするんだが、ファドもこういう独特のコード感覚があるのだろうか。あまりファドは聞いたことがない。こんなことを書いていたら音楽がだいぶ呪術的なパートに差し掛かってきた。マグマ、コバイア語による合唱的だ。後半の反復はキングクリムゾン的。同じ反復運動をしながら緊迫感が高まっていく。
6.Lobisomem 07:54 ★★★★★
ドゥーミーなスタートをするがボーカルが入るタイミングでハードコア的なサウンドに。カオティックな印象になるがボーカルラインと演奏は統制は取れている。キングクリムゾン的反復が出てくるが、やや弾むような感覚はブラジル的か。ビリンバウ(弓のような楽器)をはじくような、跳ねるギターリフが反復される。これはブラジルならでは、の音像かもな。後半になるとちょっとサウダージ感が出てくる。だんだんカオティックな音像になり、サックスソロが入る、メルコリンズというかキングクリムゾン的。
7.Holoceno 10:34 ★★★★☆
ラストトラック、後半は大曲続きで盛り上がりが凄いな。比較的ゆるやかな展開。前半はドゥーミーで静か。もともとストーナーと言っていたのでストーナー的な感じもあるが、USのストーナーのカラッとした感じ、デザートロック感はない。非常に湿った、それこそ熱帯雨林のような高温多湿な感じ、ジャングルのように音が入り組んでいるというか。曲構造そのものはストーナー的かもしれないが、音作りが湿っている。けっこう国ごとの音の違い、ってあるんだよね。機材とかメーカー、卓の差なのか、あるいは本当に風土の差が出るのか(スタジオがある場所は物理的に気候の影響を受けるから)。でも、インタビュー読むとドラムの一部は北欧で録音されていて、ミックスも北欧なんだよなぁ、ノルウェー。そういわれるとノルウェーの黒く凍った森も浮かぶが、、、いや、でも熱帯雨林的なイメージの方が大きい。ギターサウンドやボーカルのエフェクトの具合か。あるいは「(すでに頭に入っている)情報による幻覚」か。いずれにせよ、湿った音を感じるのはブラジルが感じられて好ましい。グローバルな音楽を聴くのはバーチャルな旅をしたいのもあるからね。曲はクライマックスに向けて高まっていく。長尺の曲だけあって盛り上がるまで長いが、その分到達点も高い。こういう「盛り上がり」の手法はキングクリムゾン的、というか、ロバートフリップ的なギター(一定のリズム、反復を多用して緊迫感を高めていく)が目立つな。