portrayal of guilt / We Are Always Alone
Portrayal of Guiltは、2017年にテキサス州オースティンで結成されたアメリカのハードコアパンクバンドです。スタイル的にはコンバージやオースブレイカーなどのポストハードコアバンドと比較され、「ブラッケンド・スクリーモ」とも呼ばれています。本作はセカンドアルバム。全9曲26分と短めの曲が並んでいて激烈そうですね。ジャケットとタイトルに惹かれたので聞いてみます。
活動国:US
ジャンル:ハードコア、スクリーモ、グラインドコア、ブラックメタル
活動年:2017-現在
リリース:2021年1月29日
メンバー:
Matt King
Blake Given
James Beveridge
Rick Flores
総合評価 ★★★★☆
単曲の1~4があり、5~9はSEなどでほぼ一つの組曲のようにつながっている。というか、全体が一つの組曲にも受け取れる作り。スペーシーなSEも要所要所に組み込まれ、デスメタルに見事にスペースロックとプログ感覚を組み込んでシーンに衝撃を与えたBlood IncantationのHidden History of the Human Raceを思い出す。こちらの方が9曲で30分弱なのでよりコンパクトで疾走感が強い。単なる激走、激情ではなく全体が統制され、音楽的なダイナミズム、緩急をしっかり考えられた組曲構成。ジャケットから妙なオーラを感じたが、そのオーラ通りの佳作。スペース・プログレッシブ・ブラッケンド・ハードコア。
1.The Second Coming 01:39 ★★★★
激走、カオスな音のるつぼ。全体として音がひとまとまりにぐちゃっとつぶれている。ポゴダンスを踊りだしそうな性急なビートからだんだんビートチェンジしてテンポが変化する。カオス一辺倒かと思ったら途中はメロディアスなパートに。展開を反復せず1回きりで駆け抜ける。潔い。
2.Anesthetized 02:59 ★★★★
地鳴りのようなベース、ドラム。アルペジオでギターが入ってくる。意外と展開感がある。ボーカルはかなり邪悪なグロウル、ブラックメタル的。ただ、ギターフレーズがけっこうメロディアス。この曲はハードコアというよりブラックメタル的だが、バックの演奏はハードコア感もある。潔いというか。ドゥーミーなベース。スロウでヘヴィなパート、そこからスペーシーなSE。このスペーシーなSEはジャケットの期待通り。
3.A Tempting Pain 01:50 ★★★★
ちょっとシューゲイズ的なギターサウンドから、激走するドラムへ。ブラッケンドなボーカル。カンカンとシンバルをたたく、激しい剣戟のようなドラム。カオスながら意外とフックがあるというか、テンポに緩急があり口ずさめるようなアジテーションもあって聞きやすい。これもスペーシーなSEで終曲。
4.It's Already Over 02:42 ★★★★
迫ってくるような低音、重力圏を感じさせるソニックブームの上でやや不穏な和音のギターのアルペジオが鳴る。ボーカルが入ってくる。ややスクリーモ的なスタイル。ブラックメタルスタイルとは少し違う。これはコーラスかな。メインボーカルが入ってきた。いつものグロウルだ。揺れるようなミドルテンポのリズム。ブレイクダウンパートが延々と続く、だんだんと荘厳になっていく。
5.Masochistic Oath 03:52 ★★★★☆
引き続いてミドルテンポの曲、やや浮遊するような、隙間のあるヴァースを経てブラックメタル的な音の壁、シューゲイズなギターコードかき鳴らしで空間が埋まる。途中からビートがテンポアップしてダンサブルに。ややエスニックな音階も入ってくる。ヘドバンよりダンスのビート。モッシュというかアスリート、スポーツ的。間奏部、テンポチェンジを繰り返す、何か奇妙な音も入っている。UFOの攻撃音のような。またスペーシーなSEで終わる、だんだん音が迫力を増している、何か迫ってきた。
6.They Want Us All to Suffer 01:46 ★★★★☆
SEでエンジンがかかるような音がしたらそれがそのままブラストビートになり疾走が始まる。これはカッコいい。SEで終わるパターンが多かったからそこからの展開はSEに意味があったんだなと感じる。うまい。これはスペーシーな音像。Blood Incantationとかにも近い。最後、機械の足音または心音のような、太いベース。
7.Garden of Despair 04:06 ★★★★☆
ベース音が続く、これ5曲目からつながっているな。B面にあたる5曲目以降はもしかして一つの組曲なのだろうか。ミドルテンポのベースリフから激走するパートへ。ただ、ボーカルは単なるグロウルではなく、歯切れよくテンポもよいハードコア的なアジテーションをコーラスと共に合唱する。カッコいい。展開する中間部を経て再びコーラスパートへ、楽器隊が荒れ狂う。クリスタルをたたきまくるようなSEが入ってくる。反響が収まらなくなったような。
8.My Immolation 04:18 ★★★★☆
間髪入れずに次の曲へ。プログメタル的になってきた。展開が激しい。プログ・ブラッケンド・ハードコア的な。この曲はボーカルがハードコア的だな。ブラックメタル的なグロウルとハードコア的なスクリームを使い分けている。疾走する、嵐のような音像。ただ、バックの演奏はオーガニックに変化していくプログ的音像。激烈さはだいぶ違うけれど、なんとなくRushの後期、オルタナティブで生々しいギターサウンドを追求していたVapor Trailsも思い出す。クリーントーンのボーカルも出てきた。シューゲイズ、ポストロック的な音像。音響的というか。ギターコードのカッティングが残り、少しずつ歪んでいく。何かをはじくようなSE。
9.We Are Always Alone 02:49 ★★★★
ブラックゲイズなサウンド、SEから間髪を入れずに入ってくる。ボーカルはブラックメタルスタイル。ミドルテンポでじっくり来る。と思ったらテンポチェンジ、後半になるにつれてプログレ的というか曲構成が練りこまれている。中間で音が減り、ギターのアルペジオだけが残る。スクリームが入ってくる。クリーントーンとスクリーム的な歌唱の中間。コーラスが入っている。だんだんとクリーンに近づいていくというか、ハードコアアンセム的なシンガロングなメロディ。短い中でもしっかり展開する。