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Plush / Plush

総合評価 ★★★★★

USハードロックの王道。90年代リバイバルど真ん中ながらメンバーは21歳アンダーの女性で構成されている、というのが新鮮。曲はどれもちょっとグランジ感もあるブルージーなヘアメタル、華やかなハードロックでヒット性も十分感じられる。適度にヘヴィでダークさもあり、モダンな感じもある。振り返ってみると90年代リバイバル感が2021年のトレンドと言えるのかもしれない。2020年の突然のライブシーンの消失でもう一度「ライブって何だろう」みたいなことを突き詰めた結果、90年代にロックサウンドが回帰したような気がして興味深い。確かに、「ロック」や「ハードロック(含むメタル)」の商業的なピークは1990年代だったんだよなぁ。その時代の空気を振りまきつつ今を生きる現在進行形のバンドというのがたまらない魅力かも。あと、モトリークルーで言えばミックマーズみたいなルックスのボーカルがとにかく上手い。才能を感じる。

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1.Athena ★★★★☆

幽玄でオルタナっぽいイントロ。そこからグルーヴメタルへ。ボーカルが堂々と入ってくる。ヘヴィネス。アメリカンハードロック~グランジの流れをしっかり汲んだUSならではのストレートなハードロック。ツーコードのバッキングにボーカルがテンションで絡みつく、ブルース進行。ブリッジからコード展開して高揚感がある。

2.Champion ★★★★☆

Aerosmithが好きらしいけれど、そういうアメリカンハードロックの王道感がありつつ、確かにグランジも通過している。91年ってもう30年前だし、クラシックロックなんだろうな。90年代はいまやクラシック。60-90年代が「クラシックロック」であり、それをしっかり踏まえたサウンド。90年代から地続きだった、ポストグランジとも言えるニューメタル勢にも音は近いが、リバイバルなんだろう。2020のライブシーンの消失と、その反動によるライブ熱みたいなものが高まった2021に相応しい音像かも。ライブへの渇望というか、むしろ「ライブで盛り上がる曲」を仮想的に作った曲というか。そういう「ライブ感」をメタ的に再現するような意識がシーン全体で高まっているのかもしれない。

3.Hate ★★★★☆

ヘアメタル~グランジ~ニューメタル、というのがUSのメインストリームであり、この感覚はBurrn!史観だとグランジで断絶してしまうのだけれど、今になって冷静に見ればこの3つは同じ流れだったんだなぁと思う。その流れにしっかり乗りつつ、やや90年代まで遡った感じがするメロディセンス、それを若いガールズバンドがやっているのが面白い。やっぱり若さは(男女問わず)音に出る。フレッシュな感じがあって今の感覚、特に女性バンドという点は、2010年代後半からオルタナティブロックも女性主導というか、女性や黒人から新しい動き、パワーが出てきている印象があり、そうした勢いの一端を感じる。

4.Found a Way ★★★★☆

「チープトリックをヘヴィにプレイしたんだ」とはカートコバーンがニルヴァーナを評して言った言葉。確かに、改めて聞けばグランジ、特にニルヴァーナはパワーポップというか、USパワーポップの系譜にある曲作りだし、パールジャムはエアロスミスとかUSハードロックの流れに沿っていた。この曲はパワーポップ感もあるメロディながら90年代的なグランジな感じもあり、かつ、2010年代以降のコンパクトでポップな感じ、2020年以降の「(仮想の)ベストライブ」映えしそうな曲とも言える。今のUSのハードポップってまさにこういう音かもな。

5.I Don't Care ★★★★☆

HalestormとBuchcherryを足して割ったようなサウンド、とも言えるな。いや、シンプルにHalestormチルドレン、でもいいのかもしれないけれど。5曲目だけれど、ここまでテンションが下がらずどの曲もクオリティが高いのは凄い。新人バンドとは思えないクオリティ。ボーカルも上手い。そういえばバンドのルックスはモトリークルーっぽいな。一人、ミックマーズっぽいのも含めて。

6.Sober ★★★★☆

ブルージーなハードロック、ということになるんだろうな、アルバム全体としては。この曲はアコギでスタートするバラード。そこまでBPMは遅くなくボーカルラインの言葉数も多め。ナタリーインブルーグリアみたいな盛り上がり方をする歌メロ。この曲はラジオヒットしてもおかしくないなぁ。ちょっと古く聞こえるのかなぁ。

7.Better off Alone ★★★★☆

ちょっとマーチングっぽいリズム。アルバム全体として音色、音作りは統一されていてライブ感はある。そこは硬派な感じ。1曲ごとに音作りを極端に変えていないので、純粋な「バンドサウンド」の中で作曲能力によって各曲のバリエーションを出している。

8.Sorry ★★★★☆

このボーカルは堂々としてるなぁ、高音の伸びが心地よい。ここまでどの曲もクオリティが高い。驚きの作曲能力。前半だけかと思ったらクオリティがここまで続いている。新しい才能を感じる。

9.Why Do I Even Try ★★★★☆

だんだんボーカルの熱が入ってきたように感じるが、ライブと同じで「同じ熱量を浴びていることによる錯覚」だろうか。聞き手も盛り上がってくる、ということ。音楽は時間の芸術だから、一定時間たたないと動かない感情もある。でも、全体的に後半に行くにつれて歌メロの高音の比率が増えてきているのは事実かも。

10.Bring Me Down ★★★★★

ちょっとAdeleなどにも通じるサウンド。途中からはハードロックというかニューメタルというか、モダンなヘヴィロックになる。ボーカルの熱量が高い。

11.Don't Say That ★★★★☆

ある意味ワンパターンなのだけれど、USメインストリームのハードロックを見事に鳴らしている。メロディセンスがいい。

12.Will Not Win ★★★★★

ちょっとグルーヴィーな曲。ガンズとかエアロっぽくもある。エアロを今の感覚でフィルタリングして再解釈するとこういう音像になるのかもなぁ。歌い方はスティーヴンタイラーのようなアクの強さは(良くも悪くも)ないけれど。この曲はメロディの流れるような連続性が素晴らしい。これだけ高音の連続をしっかり歌いきるボーカルの力量は凄い。

13.Walk Away ★★★★☆

毛色の違うバラード。オープニングは静かに始まるが、途中から刻みが入ってくる。おお、ベタなメロハー感。ややマイナー調ながらはじけるような勢いの良さがある。


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