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Sacred Oath / Return Of The Dragon

Sacred Oathは1985年結成、1988年デビューのUSパワーメタルのベテランです。そんな昔からやっているんですね。いわれてみれば納得のクオリティ。曲作りやタメ、一つ一つの音に説得力というか年季を感じます。10作目、なのかな。2021年作。1988年のデビュー作「クリスタルビジョン」が名盤と言われつつレーベル倒産などもあって解散。再活動を始めたのは2000年代から。2005年にデビュー作の再録音盤を出し、そこから継続的に活動しているようです。


1.Cthulhu Wakes 04:20 ★★★★

ちょっとデジタルな音から華美なギター、そして勇壮なドラムへ。けっこう様式美というかパワーメタル的な音像ですが、イントロはちょっと意外な感じ。歌メロは様式美。ただ、メロスピではなくミドルテンポ。メロディアスだが硬派な感じがします。ソロもピロピロ感はなくそこそこメロディアスだけれど抑えめな感じ。一度掛け声を挟んで再びソロへ。コンパクトで良いソロ。ボーカルは肺トーンというよりミドルレンジでメロディアスな感じ。ミドルとはいえゴシック感は無い。

2.Last Ride of the Wicked Dead 03:28 ★★★★

独特なリフの絡み合い、左右で違うリズムを奏でるけれど、なんだろう、ミクスチャー的な感覚があるリズムの組み合わせ方。Armored Saintとかにも近いかも。あくまでパワーメタルの範疇でミクスチャー感は薄いのだけれど、純粋なパワーメタルだとあまり聞かないリズムの組み合わせ方。重層的にしっかり盛り上がって終曲。

3.Return of the Dragon 06:50 ★★★★☆

ちょっとバラード的な始まり。ややスローテンポだがタメはそこまで聞いていない。高音で反復フレーズからきしむようなリフへ。この辺りはヘヴィ路線というか、グルーヴメタル感も入っています。長年の時を経てきたUSパワーメタルバンドならではというか、USメタルシーンの年輪を感じます。グランジとかグルーヴメタルも大きな潮流でしたからね。突然変異というよりは地続き。一つの時代として刻まれている。この曲は作りが凝っていますね、途中から変拍子に。これぞUSパワーメタル感がある。Metal ChurchとかVicious Rumoresとか。USといいつつスラッシュ、スケーター感はありません。それよりはミドルテンポでじっくり来る感じ。佳曲。

4.At the Gates 04:51 ★★★★☆

塊感があるリフ、ゴツゴツしています。ちょっとプログ的。こういう変わったコード感はVoivodの近作なんかにもあったな。あれよりは調性感がありますが。リフの後はアルペジオになり少し静謐さと語りのようなボーカル。緩急のつけ方がさすがベテラン。ここの所、新人を立て続けに聞いてきましたがやはり違う手練れな味わい。リフの引っかかり方も違う。曲のバラエティも富んでいますね。1曲目はイントロ以外は王道、言い換えればベタな感じがしましたが、2曲目以降はどんどん曲構造が拡散しているというか、予想外の展開もするようになっています。この曲はプログ感が強い変拍子。とはいえ頭、知性主体というよりは突進してくる肉体性がある。つんのめる様なパワーがあります。突進と言ってもドイツ的な重戦車というよりはもっとアメリカ的、どこか軽さ・新しさもある。ちょっと大味なんですよね。

5.Empires Fall 05:53 ★★★★

メロディアスなフレーズが切り込んできてそこからリフに落ち着く。ドラムが入ってきます。ストップアンドゴーを繰り返す、ちょっと引きずるようなパート、グルーヴィーなパートがありつつ全体としてはかっちりして機銃掃射するような、軽戦車的。ブリッジはDIOやRAINBOWを彷彿させるエピックでファンジックな感じも。このバンドも独自の音世界を持っていますね。勇壮な世界観、適度にテクニカルでメロディアスすぎないソロ、雄々しい。最初はところどころひっかかっていたリズムが後半は前進していく、滑らかなリズムになっていくのが気持ちいい。

6.Hammer of an Angry God 04:14 ★★★☆

雰囲気が変わり一定のリズムで前進していく、シンガロングというかラジオチャートとかでかかりそうな曲(実際に、今のアメリカのラジオ局ではこんな曲かからないわけですが)。最初からあまり引っかかりがなくストレートに曲が展開していく。ちょっとバッドボーイズロックンロールのノリもあります。LAメタルというか。アルバムが小難しくなりすぎない、いい場面転換。

7.The Next Pharaoh 04:01 ★★★☆

アフリカ的、南米的な雄たけびというか人の声、儀式的な始まり。そこからうねるようなリフ。鋭い蛇のような音。そこから滑らかに曲が始まっていく。ギターソロ的なスタート、サイレンのようなリフに変わりリズミカルなボーカルが入ってくる。ちょっとグルーヴィーですね。ブリッジからはメロディアスに。「ネクストファラオ」とあるからエジプトのイメージなのかな。イントロはちょっと変わっていますが、曲が始まるとその雰囲気はわずかになります。最後雄たけびコーラスで終曲。

8.Primeval 05:58 ★★★☆

ザクザクしたリフからメロディアスなパートに。THIN LIZZYかと思うようなツインリードのメロディ。音作りはだいぶ違いますが。そこから加速。おや、この曲インストなのかな、なかなかボーカルが始まらない。そのまま曲が展開していきます。。。と思ったらボーカルが入ってきました。けっこうイントロが長い。いろいろな曲のバリエーションがありますね。余裕を感じる。途中もザクザクしたギターと優美なギターの組み合わせパターンは続く。ちょっとリフの刻みはManowar的なものも感じます。ゴリゴリリフを弾きまくる、筋肉質な感じがする。ギターメロディやボーカルはだいぶ異なりますが。この曲の最後の方はハイトーンシャウトに。最後、急に民族的、祝祭的なシーンが入る。場面転換というかそういうシーンを入れるのが上手い。

9.Into the Drink 05:35 ★★★★☆

機銃掃射の音から疾走感のあるリフ、馬駆けリズム(ツッタタツッタタ)。なんで馬駆けと言っているかかというとRun To The Hillsのリズムで、あのMVが騎馬隊だからですけどね。なんとなく伝わるかなと。リズムが分断されつつツインリードが響く、曲が展開していきます。これはいい感じ。リズムが絡み合い、ボーカルが入ってくる。全体的に曲がうねり、複雑に絡み合う。プログ的な変拍子というよりは、あくまで前のめり。いや、最近のプログもこんな感じか、ジェント的というか。だけれどベテランの味がある。ちゃんとパワーと芯があるというか。

10.Root of All Evil 06:10 ★★★★☆

クラシカルなガットギターのアルペジオ、そのままボーカルが優しい声で歌い始める。水の流れる音。癒しの音像。そこからツインリードとリズムがなだれ込んできてパワーメタル王道の音像に。ヴァースに入るとリズムがボーカルとギターで少しずれる。こういうちょっとしたパーツの組み合わせ方が技巧的。だんだんと上昇していき、ハイトーンシャウトへ。こういうシャウトもするのね。技巧的です。この曲はかなり様式美。NWOTHMの流れに入れても違和感がない。いや、ベテランだからNWというのは変化もしれないけれど。女性コーラス隊が入り、雰囲気が変わる。きちんと「場面の空気を換える」ためのパートはその機能を果たしている。プレゼンテーションが分かりやすい。再びボーカルが上り詰めてクライマックスへ。

全体評価 ★★★★☆

ベテランの格の違いを感じる作品、緩急のつけ方、各パートの意図の明確さ、ちょっとしたリズムやボーカルの絡み合い、余裕を感じる演奏や曲構成。素晴らしい出来です。ここしばらくで聞いたUSパワーメタル、王道パワーメタル系の新譜の中ではベストかも。

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