Måneskin / Teatro D'Ira - Vol.I
ユーロビジョンで優勝し、時の人となっているMåneskin(モーネスキン)。イタリアン・ロックから久々の大スター登場なるか。イタリアのロック音楽シーンは面白いんですよね。英米のシーンと比較的リアルタイムで連動しながらも、イタリアのバンドはボーカルメロディ、歌心が強い。やはりオペラとかカンツォーネとかバロック音楽の本場。伝統がある。ですので、音楽全般が盛んですし、ことロックについては独自でレベルが高いシーンを持っています。言語の壁がありなかなか世界的スターは出ませんが、久々に世界に羽ばたきそうな気がします。近いうちにイタリアンロック特集を改めて書きたくなりました。
出身国:イタリア
ジャンル:Alternative rock、pop rock、glam rock、hard rock
活動期間:2016-現在
メンバー:
Damiano David – vocals (2016–present)
Victoria De Angelis – bass (2016–present)
Thomas Raggi – guitars (2016–present)
Ethan Torchio – drums (2016–present)
1. "Zitti e buoni" 3:14 ★★★★★
ユーロビジョンでも演奏した曲。ギターリフに絡みつくボーカル。粘り気のあるボーカル。ルックスからQueenと比較されがちですが、サウンドとしてはもっとカラッとしている、むしろGuns'n'Rosesとか、Nirvanaなどのグランジオルタナな音像の方が近い気がします。イタリア語なので節回しが印象的。最後の「ローロー」が耳に残る。
2. "Coraline" 5:00 ★★★★
エレキギターの音に合わせてボーカルが入ってくる、つま弾くような弾き語りの音像からスタート。70年代のハードロック的な音像でもあります。最近のクラシックロック復権の流れもあるのかな。イタリアには同国のクラシックロックアーティストとも言えるVasco RossiやPremiata Forneria Marconi(PFM)がまだまだ現役ですし、そういうイタリアン・ロックの70年代、80年代の流れを汲んでいる。途中でバンドが入って盛り上がり、またイントロと同じ弾き語り音像に戻って終曲。この曲はQueenっぽさもありますね。オペラ座の夜とか、初期のころの。
3. "Lividi sui gomiti" 2:45 ★★★★☆
これまたクラシックロックなリフからスタート。ギターの音作りがクラシックロックの音作り。ジミー・ペイジの音を連想します。ちょっとリフもZeppっぽい。ギターはクラシックなハードロックですがボーカルに関してはテンションの上がり方、言葉の詰め込み方は90年代的。4人編成ですが、ドラム、ギター、ベース、ボーカルそれぞれの音のキャラクターが立っています。
4. "I Wanna Be Your Slave" 2:53 ★★★★
リズムカルでダンサブルな曲。Arctic MonkeyのDancing Shoesみたいなグルーヴ。Appleの一時期のCMに使われそうな曲(The Jetとか)。この曲はTiktokでバズっているようです。シンプルな構成で耳に残りやすい曲。でも英語よりイタリア語の方が魅力的な気はします。
5. "In nome del padre" 3:39 ★★★★
ハードロックなリフからベースがうごめくパートへ。ボーカルは煽情的に言葉を重ねていきます。アジテーション。グルーヴ主体の曲。イタリアってけっこうミクスチャーロックも盛んだったんですよね。90年代後半からさまざまなバンドが出てきて、レベルも高い。Extremoとか。リズミカルながらやはり歌心が中心にあるのが特徴的。
6. "For Your Love" 3:50 ★★★★
英語の曲。この曲はちょっとUKのCreeperも思い出しますね。少し耽美、ゴシックな雰囲気(ビジュアル含め)を持ちつつハードロック的な音像、クラシックロックのレガシーを活用しているという点では近い資質を持っているのかもしれません。
7. "La paura del buio" 3:29 ★★★★
クラシックロックのダイナミズムを持ちつつ、現代的なボーカルライン、感情の高め方を取り入れた曲。完全にこの手法を確立していますね。1曲目に近い構成。
8. "Vent'anni" 4:13 ★★★★
バラード、メロウなサウンドをバックにボーカルが歌い上げる曲。これぞイタリアンロック! なメロディ。イタリアンロックの大御所Vasco Rossiの新曲Una Canzone D'Amore Buttata Viaもこういう感じ。
総合評価 ★★★★☆
30分弱とEPの長さながら、クオリティが高い。見事にロックの醍醐味、それも「イタリアン・ロック」の良さも十二分に伝える良盤。ユーロビジョンで高まった好奇心と期待に十分に応えられる入り口です。新スター誕生の瞬間。ここからどこまで行けるでしょうか。