OLIVIA RODRIGO / SOUR
オリヴィア・ロドリゴ。カリフォルニアで2003年生まれで2021年リリース時は18歳。母親がドイツとアイルランド系、父親がフィリピン系のアジア系アメリカ人。ディズニーチャンネルの女優としても活躍中で、『やりすぎ配信! ビザードバーク』のペイジ役や、ディズニー・プラスのシリーズ『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』のニニ役で知られています。テイラースウィフトとロード(Lorde)がフェイバリットで、自分で作詞作曲を行うSSW。このアルバムも音楽プロデューサーのダン・ニグロとほぼ二人で作り上げた宅録インディーロック的な作品です。
出身国:US
ジャンル:Pop Rock
活動年:2015年-現在
1 Brutal ★★★★☆
オーケストレーションのイントロを経て、ハードロック的なギターリフが入ってくる。グランジ、オルタナ的。下降しつづけるリフが脱力感がある。ティーンアイドルの作品というよりはかなりガレージロックバンド然としている。途中でスロウダウンして呟くようなパートを経て終曲。近年のロックリバイバル系のバンド群の中でもインパクトが強いオープニング。
2 Traitor ★★★★
オルタナ系女声SSWの流れを汲む曲、フィオナアップルやアラニスモリセットといったあたり。USインディーロック的。ボーカルの表現力が高い。ミュージカルドラマで鍛えられたからか。声色の表情がしっかり変わり、感情がこもっている。音の手触りが思ったよりアーシーでオーガニック。後半はコーラスも重なり合いゴスペル的に盛り上がる。それほどポップなわけでもない。しっかりとしたメロディがある。
3 Drivers License ★★★★
バラード、けっこう癖が強い歌い方。途中、リズムが入ってくるとややディズニーっぽさが出てくる。ただ、下降音が聴いている。ベースかな。落ち着ける、落とす、脱力感がある。ビリーアイリッシュほどダウナーで辛辣ではないが、どこかダウナーで内省的な感じがある。夢見がちな部分もあるのだけれど。途中から透明感のあるコーラス。Fleet FoxesやTama Impala、あるいはそれらと組んだテイラースウィフトと言うべきか。
4 1 Step Forward, 3 Steps Back ★★★☆
フィオナアップル的。ピアノ弾き語り曲。まさに語るような、物語を感じさせる歌い方。表情が豊か。次々と出てくる曲にどれも陳腐さがない。
5 Deja Vu ★★★★
ややウィスパーボイスのボーカルでポップな感じ、途中からガレージバンド的な、音がつぶれたドラムが入ってくる。インディーロックバンド的な音。途中から曲が展開して、コールアンドレスポンスのコーラス、ややヒップホップ的なノリも出てくる。グルーヴは少しルーズ。
6 Good 4 U ★★★★
跳ねるようなボーカル、言葉数を詰め込んだヴァース、2010年代のアメリカンポップス。お、そこからギターが入ってきてギターポップの音像に。途中、ダウナーなパートと、シンガロングなロック的な語法が混じる。この辺りはディズニー的。ディズニー音楽も感情の起伏や物語の進行に合わせて巧みに音楽を変える。ディズニーにはトップレベルの作曲家が集まっているからそこから多くのことを吸収しているのだろう。伝えたい感情や物語に対して適した音楽スタイルを合わせて表現している感じ。
7 Enough For You ★★★★☆
つま弾くようなアコースティックギターとボーカル。この曲も下降音が出てくる。音が吸い込まれていく、落ちていくような感覚。これがサウンドのトレードマークにしているんだな。音数は少な目ながら、細かい音響的な遊びが効果的に使われている。ボーカルにだんだん情感がこもってきて迫力がある。あと、全体的に曲の終わりが潔い。スゥッと終わる。これはポップさを感じさせるのに一役買っている。「もっと聞きたい」と思わせるうちに終わると余韻が残るから。
8 Happier ★★★★☆
スローブルースのビート。ギターではなくピアノ、これも下降音、ひゅーんと物が落ちていくような音が入ってくる。サウンドロゴ的な意識なのだろう。これもスゥッと終わる。潔い。どの曲も2~3分台。ビートルズ的。
9 Jealousy, Jealousy ★★★★
控えめなベースの上にボーカル、最近の落ち着いたレッチリのような。後半になって音の遊びが増えてきた。曲のバリエーションが増えてきたし、ボーカルも自在度が増している。
10 Favorite Crime ★★★★☆
ギターアルペジオをつま弾きながら歌う。メロディが何回か展開していき大サビが来る。これは上手いな。Wolf Aliceの新作にも近いものを感じる。最後は気が付くとけっこう壮大な音に。なんというかちょっとUKのSSW的なセンスもあるな。USだけではないというか。やはりルーツが多様、多国籍だからだろうか。カントリーやブルースの重力圏を一部脱している。
11 Hope Ur Ok ★★★★☆
ロックバラード、ブリットポップ感もある。今どきのポップスのフックもあるのだけれど、どこか懐かしい音像。
全体評価 ★★★★☆
予想より本格的というか、凄い才能を感じた。声の表現力は豊かだけれど年相応のフレッシュさもある。11曲35分と1曲が短いのが、たとえばビートルズとか、次々と曲が繰り広げられる感覚がある。なんというか、UKロック感が強い。カントリーやヒップホップの影響も勿論一部はあるのだけれど、それよりUKロックやオルタナティブロック系の女性SSWの系譜を感じる。あと、ディズニーっぽさもところどころ(特に前半)感じた。ディズニーチャンネルの作品は時々見ることがあるが、全体的に音楽がいい。物語的に「ロックバンド」とか「青春」とか、たとえばシチュエーションや演奏シーンが出てくることが多いが、そこでピッタリハマる音楽をしっかり作ってくる。プロの仕事。おそらくそういう語法も学びつつ、それを使いながら自分の感情表現や作家性をうまく出している。今の大ブームが(2020年、インディーズロックに接近した)テイラースウィフトのフォロワーとしての期待値なのか、あるいは独自のアーティストとして作家性を確立していくのか。楽しみなアーティスト。個人的にはポップでディズニー的な要素も感じる前半より、UKロック的な色合いを感じる後半(7~11)の方が好み。
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