HIPPIE DEATH CULT / Circle Of Days
バンド名に惹かれて聞いてみたアルバム。ジャケットからはどのジャンルか想像できなかった(DeathかもしれないしBlackかもしれないしHiphopかもしれない)んですが、Doom、ストーナーロックでした。1曲目、ヴィンテージな音作りからヘヴィなリフで初期サバスを思わせるボーカルが入ってきて「お、これは掘り出し物かも」という感覚。
オレゴン州ポートランドで2018年結成、2019年デビューの新しいバンド。とはいえ、メンバー写真を見るとそれなりに経験がありそうなプレイヤーが集まっているようです。レーベルインフォによればブラック・サバス、アリス・クーパー・バンド、ブリザード・オブ・オズ、メガデス、サウンドガーデンあたりから影響を受けたとのこと。
1.Red Meat Tricks 07:33 ★★★★☆
ドゥーミーなリフから、サバス的、初期のOzzy的なボーカル。これはかなりBlack Sabbath色が強いな。ただ、モノマネの域は超えている。よりスロウでドゥーミーに。音作りも凝っている。単に懐古主義ではなくビンテージ感もありつつ抜けの良さもあって心地よいギター、ベース音。ボーカルも歌い方を真似ているというよりはボーカルラインの感じが似ているだけで歌い方は自分なりの声質、オリジナリティを感じる。ブルースをどうずらすか、基本的な構成があってそれを少しずらし、展開していくことでヘヴィな感情と、サイケな感じを演出している。リフのセンス、展開のセンスが良い。そろはかなりブルージー。とはいえいなたい感じはなく、Tony IommiやJimmy Pageといった70年代HR的なソロ。
2.Hornet Party 04:57 ★★★★
不穏な響きのアルペジオ。ドラムが雰囲気を盛り上げる。飛び回るファズ。音が絡み合っていき、一瞬ブレイクを置いてリフが高速化する。お、まさかの意外なグルーヴィな展開、ファンクメタル的な飛び跳ねるリズム。2曲目でこう来たか。良い意味で期待を裏切られた。ファンクメタルとはいえ浮ついた感じはあまりなく、ビンテージな質感は保たれている。リズムもそこまで跳ねない。最初の入りだけで、基本は酩酊感。アッパーではなくダウナーな音像。ところどころやる気を見せて早口になるが基本酔っぱらっている感じ。躁と鬱を交互に行きかうような独特な音像、疾走するところはクロスオーバースラッシュ感もあり。そこからダウナーでドゥーミーなパートに展開する。スラッシュドゥーム、スラッシュストーナーとでも言うべきか。やや粗削りで実験的、探求が先立っている感じもあるが面白い挑戦。
3.Walk Within 04:57 ★★★★
ピアノとギター、メロディアスなフレーズを奏でる、そのままボーカルが入ってくる、クラシカルなロックバラードといった感じ。クラシックと言うのは80年代ではなく60年代後半から70年代初頭的。これはゴシックでドゥーム。憐れむような、下賜される恩寵のようなピアノフレーズ。コーラスが舞い降りてくる。雲の切れ間から差し込む光のように。静かで地味に展開していくが、シンプルな構成の中に荒涼とした風景が浮かび、そこに対して舞い落ちるフレーズが感じられる、妙に映像的な曲。
4.Circle of Days 09:55 ★★★★
ここから長尺曲2連発。10分近い曲をどう聞かせてくれるか楽しみ。
出だしはミドルテンポでややノリがあるリフ。ボーカルが朗々と入ってくる、酩酊感が強めの音像、ちょっとDizzy Mizz Lizzyのような、ティム・クリステンセン的なメロディライン。今気が付いたがけっこう声質も似ているな、こういう歌い方をすると。スクリームからパート展開。ちなみにアルバム冒頭から今まで、曲の中でのテンポチェンジは使われていない。手数が増えて疾走感が出たり、展開はするものの一曲は同じテンポで進む。この曲はどうだろうか。Sabbathの特徴、特異性はテンポチェンジにもあったがそれを意図的に使っていない気もする。それがこの後半の長尺曲までとっておいたのか、それとも何らかの拘りで使っていないのか、どちらだろう。
この曲は出だしこそDoom的、ストーナー的だが途中のDML的メロディラインは独特。ブレイクして、テンポチェンジするかと思ったらまた同じテンポが戻ってきた。テンポチェンジしないことでストーナー感が増している。同じテンポで揺れる感じ、酩酊感。コードが明るくなった、かなりDope。同じテンポで続くがコード、リフが展開し続けている。ギターソロ、開放感の中に少し不穏な展開が混じる。
最後まで同じテンポで押し切った。
5.Eye In The Sky 09:52 ★★★☆
前の曲からほぼ曲間なくスタート、ドローン音、インド的な響き。雷鳴がとどろく。サイケなギターフレーズ。エキゾチック感はなくブルースのスケール。やや揺れる、揺蕩うようなフレーズ。波のようにリフとリズムが寄せては返していく。あるいはリズムはパラパラと振ってくる雨か。同じテンションの中でボーカルが入ってくる。適度に力強く、適度に感情がこもっているがそれほど極端ではない、クールでもないが熱狂でもない。じわじわと熱量を貯めている。少しづつ音のレイヤーが増していく、音数が増えている。
一度ブレイク、ここでリフが展開した、お、これはテンポチェンジしたな。ここで初めて使うのか。そこまで大きな変化ではないが、少し変化したように感じる。でもこれBPMはほとんど変わっていないかもな。ギターのリフの刻み、リズムパターンは変化した。うーん、リフとボーカルメロディがそこまで魅力的ではないなぁ。単に「展開した」というだけ。
ギターソロになってだんだんとテンションが上がってきた、同じ展開をひたすら反復することで快楽が出てくる。テンションを高める、高揚させるより酩酊の方にかなり振っている。
総合評価 ★★★★
基本、同じテンポで進んでいく。前半の方がカラフルで、後半は本当にドローン、酩酊を追求したような音像。コアなストーナーロック。不純物とか、違和感を感じることなく最初の印象通りの音像が最後まで続くので、それを退屈と思うか、最高と思うかはどういうテンションで音楽を聴くかによると思う。耳を惹くフレーズやパートもあるが、そこまで強調されない。全体の統一感、酩酊感の方が重視されている。ただ、音楽そのものに酩酊効果は強くなく、酩酊した状態で流れていると心地よい、という音楽。2曲目が一番異質で面白いかも。