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Sena Şener / İnsan Gelir İnsan Geçer

Sena Şener:セナ・シェネル(1998年9月19日生まれ)はトルコのミュージシャンで、カフラマンマラシュ出身です。彼女は15歳のときに音楽を始めました。2016年にリリースを開始したシングルを、2018年9月14日にリリースされたファーストアルバム「İnsan Gelir Insan Geçer」にまとめました。彼女はコチ大学で英語と比較文学を勉強しています。トルコ新世代のアーティスト。

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総合評価 ★★★★

トルコの新星、若干22歳のシンガーソングライター。妙に日本の歌謡曲やニューミュージックに近いところがあり、メロディも親しみやすい。トルコ語と日本語は近い言語なので響きも受け入れやすい。歌い方はトルコの伝統歌唱法とはかなり距離があり、USインディーなどとも通じるどこか突き放した、内省的な歌い方。この辺りはモダンな感覚。

惜しいのはアレンジやテンポが似通っていることで、もっと曲調にバラエティがあればよかった。ただ、最後までなんだかんだ聞けるクオリティがあるのはメロディセンスや歌唱力がしっかりしているからだろう。これから音楽性の幅を広げて、さまざまなアレンジにチャレンジしていったら面白くなりそうなアーティスト。

1 İnsan Gelir Insan Geçer ★★★★☆

美しいメロディ、深いアコースティックギターの音色と共にメロディが迫ってくる。アコギ主体だが途中からリズムが入ってくる。ややアレンジや音作りにはB級というかチープなところもあるが非英語圏の限界か。メロディセンスは素晴らしい。ボーカルもトルコ独特の節回しが少なく洗練されているが単純に英語的というわけではなく非英語圏ならではの響きがある。あえて言えばBjork辺りにも近いか(あそこまで浮遊していないが)。オルタナティブな質感がある。

2 Çirkin Dünya ★★★☆

アコースティックでつま弾くようなギター、弾き語り主体なのだろうか。ボサノヴァのような音像、一つ一つの音が空間に消える。ベースとドラムも入ってくる、ノラジョーンズの1stあたりにも近いものがある。考えてみたら彼女もインド出身だしな。じっくり盛り上がるスローバラード。独特の哀愁、砂漠のブルース感がある。

3 Sendin Düşmanım ★★★★

こちらはターキッシュポップの響きが増してきた、セザンアクスとか。ただ、節回しは極端に強くない。それは若さゆえのものもあるのだろう。トルコの伝統歌唱法とは一定の距離を置いている。訥々としたドラム。弦楽器が入ってくる、オーケストラが盛り上げる。大仰ではないが哀切な響き。どこか日本の歌謡曲や演歌にも近いメロディ。リズムのキメもあるし、何か通じるものがある。

4 Yalnızım ★★★☆

スローテンポ、ブルース、コーラスではコード展開が変わり、ロックバラードに。やや浮遊するようなキーボード音、90年代的な質感もあるが音の分離や生々しさは2010年代の音(非英語圏なので多少の音響の古さはあるが)。曲のタイトルを連呼するコーラス。これは日本、J-POPと構成が近い。そういえばトルコ語は日本語に近い。母音と子音の関係であったり、文法が似ていて同じアルタイ語族。だから西洋音楽を取り入れるとどこか日本に似るのかもしれない。少なくともボーカルは。

5 Bak Bana ★★★☆

全体的に切々と歌うバラード系が続く。もともとシングル曲でかなりリリースしており、それらを集めたアルバム。それほど弾む感じがない。似た雰囲気の曲が続くものの、各曲の個性と不思議と酩酊感があるのは作曲能力の高さか、エキゾチックな響き故の心理効果か。

6 Ona ★★★★☆

雰囲気が変わり、ブルースロックというかシェリルクロウのような、乾いたエレキギターの音に。歌い方も力強くなった。音の隙間があるがカッコいい。基本的にはブルースっぽいものをやっているのだが、メロディセンスがUSのブルースとは違う、ややカントリーっぽいポップさもあるので本人はUS音楽好きなのかもしれないがやはりトルコのフィルターを通すと別物(それは日本のアーティストにも言えるが)。言葉と音楽文化の差は大きいのだろう。

7 Dostum Değil Uykular ★★★☆

再びバラード調に戻ったが前の曲で雰囲気が変わったから新鮮に聞ける。最初から幽玄なエレキの響き、オーケストラが入ってくる。音楽文化は国によって違い、バラード歌手はバラードしか歌わない、とか、そういう国もあるからね。この人のバラードには独特の響きがある。

8 Sonraki Gün ★★★☆

アコギのアルペジオからスタート、訥々と歌うシンガーソングライター、というところなのかな。そういえば中島みゆきのデビュー時もこんなものだったかも。ふと思い出したが、なぜ中島みゆきを連想したかと言うとメロディがしっかりとあるから。メロディアスで独特なメロディセンスがある。みゆき節ならぬセナ節というか。トルコ音楽の中でもけっこう独特のセンスだと思う。それほど熱心にトルコ音楽を聞き込んでいるわけではないが、少なくとも明確に誰かに似ているとは感じない。むしろイスラエル辺りの方が近いのかも。あとはあまり知らないがギリシャか。周辺国の音楽市場なので互いに影響は与えているだろう。基本はギター弾き語りのSSWなのかもしれないが、これから活動を続けていくとさまざまなアレンジが増えていくのだろう。さまざまなアレンジで聴いてみたい。

9 Parya Için Hep Günöte ★★★☆

基本的にはポップスになるのだろうか、日本で言えば「フォーク」や「ニューミュージック」が一番しっくりくるかも。ああ、「ニューミュージック」というのは言い得て妙かな。80年代の女性SSWとか。この曲も歌謡曲感が強い。もしかしたらシティポップの影響も受けているのかな。今やネットでなんでもすぐアクセスできる時代だからね。我々がすぐトルコの曲を聴けるように、トルコでも日本の音楽が聴ける。非英語圏同士の影響というのももしかしたらあるのかもしれない。ただ、おそらくトルコの中から出てきた者だろうけれど。似たのは偶然というか、トルコ語と日本語の類似性が生んだものだろう。

10 Sevmemeliyiz ★★★★

こちらもスローテンポのバラード。やや楽器隊は区切りが良く派手な音。他の曲に比べれば、というレベルだが。歌い方が少し巻き舌なのが今どきっぽいのだろうか。特徴がある。あまり自己陶酔感を感じず、ちょっと突き放した感じがある。この辺りはUSインディーロック、インディーポップにも通じる感覚。

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