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Trivium / In the Court of the Dragon

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トリヴィアムは1999年に結成されたUSのメタルバンドです。中心人物にして唯一の創設メンバーはマット・キイチ・ヒーフィー。日本人の母親とアメリカ人(ドイツとアイルランドのハーフ)の父親との間に生まれ、日本の岩国生まれです。父親が米軍海兵隊として日本に駐留しているときに生まれましたが、日本在住歴は1年だけで日本語は話せないそうです。とはいえルーツに日本があるアーティストです。現在のUSモダンメタルのテイストと80年代から続く欧州パワーメタルをミックスしたような音楽性で、個人的にはかなり好みのバンドです。前作は2020年ベストアルバムにも選びました。前作「What The Dead Men Say(2020)」から1年のインターバルでのリリース。短い間隔で新譜を出してくれるとは嬉しい驚きです。

本作は10枚目のアルバムで、COVID-19によるロックダウン期間中に制作されたアルバム。早速聞いてみます。

活動国:US
ジャンル:ヘヴィメタル、スラッシュメタル、メタルコア、プログレッシブメタル
活動年:1999-現在
リリース:2021年10月8日
メンバー:
 Matt Heafy – lead vocals, guitars (1999–present)
 Corey Beaulieu – guitars, unclean backing vocals (2003–present)
 Paolo Gregoletto – bass, clean backing vocals (2004–present)
 Alex Bent – drums, percussion (2017–present)

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総合評価 ★★★★★

「メタルの未来」とオジーオズボーンが評したのはDisturbedだったが、今はTriviumがメタルの未来に一番近いのではないか、と思う。とはいえUSでの評価は中堅どころといったところでまだまだ大ブレイクはしていないのだけれど、ジャーマンメタルとUSメタルの融合したような音楽性で、90年代ジャーマンメタルを追っていたメタラーからしたら「進化したメタル」を感じられる音像。ブラインドガーディアンが好きな人にも訴求するだろうし、かといってファンタジーやエピックによりすぎておらずきちんとポップさ、メロディーのフックもある。もうすぐデビュー20周年を迎えベテランの域に入りつつあるバンドだが、このアルバムでメタルフェスのヘッドライナークラスに上り詰めてほしい。前作を越えてきた。

1. "X" (instrumental) 1:27 ★★☆

荘厳な雰囲気のイントロ、あまり展開はなく、遠くから響いてくるようなクワイアコーラス、ゆったりとしたリズムがフェードインしてくる。完全なイントロ。

2. "In the Court of the Dragon" 5:09 ★★★★☆

急激に音圧が上がる、グロウルボイスとブラストビート、歯切れのよいギター。USモダンメタルのザクザク感。スラッシーでありつつハードコア、メタルコア感もある。ビートがブレイクダウンするもツインリードが入り、欧州的な抒情性とメタルコアのモダンさが同居する。そこからメロディアスなコーラスに展開する。パワーメタル的だがドラムはテクニカルデスコア的な超絶速度でブラストを叩く。これは攻撃性と抒情性、メロディとグルーヴが高次元で融合している。途中、ややエスニックなフレーズが出てくる、エジプト的というか。変拍子がありかなりテクニカルだが全体としてアップテンポであり、プログメタル感よりはもっと直情的な疾走感がある。テクニカルデス(テクデス)とスラッシュ/パワーメタル、メタルコアの融合とも言えるかも。そこに欧州的なメロディが乗る多くの要素が詰め込まれ、見事に融合した曲。

3. "Like a Sword Over Damocles" 5:30 ★★★★☆

ザクザクしたリフが続き、メロディアスなボーカルが入ってくる。このリフの刻み方はデスメタルを通過しているなぁ、スラッシュではない。新しい暴虐性を切り開いている。ドラムの手数、疾走感、ボーカルの攻撃性など全体的な音像は暴虐なのだが、コーラスではメロディアスに変わる、この曲はDevin Townsendにも通じる壮大なコーラスメロディ。コールアンドレスポンスとメロディアスなソロのパート。新しいアリーナメタルの形を提示している。Disturbedが(失速してしまい)たどり着けなかった「メタルの未来」に一番近いバンドかもしれない。ギターソロのパートが素晴らしい。惜しむらくはコーラスのボーカルメロディの煽情力が(個人的嗜好だが)やや弱い。

4. "Feast of Fire" 4:18 ★★★★☆

ミドルテンポでヘヴィなリフ。ただ、たたきつけるようなギターサウンド、力強いサウンドが特徴的。ハードコア的な音なんだよなぁ。前作も感じたが、このハードコア的なサウンドがフレッシュに聞こえる。かっちりしすぎていない、というか、ちょっと音が暴れている感覚がある。曲構成はかなりかっちりしているのだけれど。あと、ドラムの手数が多く、生々しく聞こえる。今作は1曲に詰め込まれたアイデアの密度が濃い。より完成度が上がっている。ただ、その分歌メロのシンプルな力は少し弱いかも。全体的なアンサンブルやアレンジの力強さ、ドラマはあるが、逆にコーラスでむしろテンションが下がるように感じるシーンもある。緊張と弛緩で、コーラスはやや弛緩、落ち着いたパートなのかもしれないが。楽器隊の絡み合いの方がスリリング。

5. "A Crisis of Revelation" 5:35 ★★★★☆

高速エイトビート、スラッシーな疾走曲。Overkillのような直情的なスタート。グロウル気味のボーカルが入ってくる。おお、ここからしっかりメロディアスなコーラスに行くのか。フックのあるコーラスを入れる、というのが徹底しているな。これ、女性ボーカル入れたらマキシマムザホルモンにも近い構成かもしれない(世界観はだいぶ違うが)。そこからメロディアスなツインリード。ボーカルラインよりギターメロディが印象的なのは、一時期のブラインドガーディアンみたいにもなってきたな。しかし、USメタルバンドなのになぜここまで欧州メタル、特にドイツ感が強いのだろう。やはりヒーフィーのルーツ(日本、ドイツ、アイルランド)が出ているのかな。アイルランド、ケルティックな感じは(ここまでの曲では)そこまで感じないが。

6. "The Shadow of the Abattoir" 7:11 ★★★★★

アイアンメイデン的なイントロ、低音でうなるようにボーカルが入ってくる。壮大なドラマ。勇壮なコーラスが入ってくる。おお、これはコーラスで盛り上がるな。ジャケットの通り、中世の英雄譚のような壮大さがある曲。この曲はボーカルメロディが煽情的で良い。途中、場面転換するというかじわじわと魔力が高まるような、ファンタジックなイメージを持った力をためるようなシーン。ビートがブレイクしながら間奏へ入っていく。攻撃性を失わず変拍子で次々と曲が展開していく。プログメタル的な構成だが音そのものはストレートなメタル、ギター音のエッジが効いていてスラッシーな攻撃性がある。ドラムの音、手数が多くどこかバタバタした感じ(だけれどテンポはしっかりしている)はAvenged Sevenfoldにも近い。あれ、同じコーラスで少しテンポアップした? テンションが高まっている。

7. "No Way Back Just Through" 3:53 ★★★★★

かなりアップテンポながらややグルーヴィーなリフ。ただ、高速なのでノリとしてはヘドバン向きのノリになっている。シンプルな疾走曲だがメロディが印象に残る。一聴して耳に残るメロディの強さがある。このあたりのメロディセンスは日本のラウドロックバンドにも近いものがあるのかもしれないなぁ。日本のルーツを探して聞くからかもしれないが。

8. "Fall Into Your Hands" 7:45 ★★★★★

マシンガンのようなドラムソロ的なイントロから。手数が多い。剣戟のようなシンバル音が入る。これはメイデン的、というかニコマクブレインのトレードマーク的な音。そこからストレートな疾走パートへ。壮大なコーラスに繋がっていく。コーラスの後は高速な音程移動を伴うリフへ。曲全体が高速化する。ここでさらに加速するとは! 盛り上がり感が凄い。そこから抒情的なギターソロへ。この曲にはヘヴィメタルの魔法が詰まっている

9. "From Dawn to Decadence" 4:08 ★★★★☆

前曲の余韻を引き継いでドラマティックなイントロ、加工されたボーカルが多重化されて入ってくる。緊迫感が持続している。アルバムい中盤からメロディの煽情度、中毒性が上がったように感じる。コーラスはメロディアスだが攻撃性があり、バックの演奏と絡み合い、ぶつかり合う。動の表情が強い曲。比較的ミドルテンポでじっくり来る曲だがその分手数や音圧は高め。

10. "The Phalanx" 7:15 ★★★★☆

最後の曲へ。ここまで中だるみ一切ないな。こちらも音圧高めのイントロ。壮大な感じがする。そこから少しグルーヴィーでしなりのあるギターリフに。ただ、ビートはタイト。Testamentとか西海岸的なヘヴィなスラッシュという感じ。そこからメロディアスなコーラスに移っていく。ちょっとマイナー感があるメロディ。グロウルボーカルとリフが絡み合うヴァース。ドラムがあまり安定しないバンド(今のドラムは2017年加入で5人目)だけれどいい仕事をしている。途中でテンポダウンしてじっくりとメロディを繰り返す、盛り上がっていく。呪術的、ややエジプト的な音像も出てくる。

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