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Metallica ‎/ Garage Inc.(1998)

今までのGarage Daysシリーズの総まとめとしてリリースされた「Garage Inc.」、2枚組で、1枚目が97年時点での新録音、2枚目に今までのGarage Daysはじめ、発表してきたカバー曲を収録したアルバムです。「Load」「Reload」で音楽性を拡張し、デビュー当時とはかなり異なる音像を探索してきたMetallicaですが、ここではガレージシリーズの趣旨の通り原点(Garage Days)回帰を目指し、自分たちのルーツとなった音楽を歯切れの良いメタリックな音でカバーしています。今改めて聴くと、いわゆるクリフ・バートン在籍時、スラッシュメタルの旗手の頃の音像までは戻っておらず、メタル・ジャスティス~ブラックアルバム当時のかっちりした、重量感のあるサウンドで過去曲を演奏している感じ。当時との違いとしてはベースがしっかり自己主張しています。「Reload」からそうでしたが、クリフ在籍時に合った「ベースのグルーヴが渦を巻く感じ」がスタジオ盤にも戻っている。この時点の彼らの回帰可能な「原点」の音像は90年代初頭だった、というところでしょう。

曲としては「Metallicaの曲のパーツを取り出して1曲に拡大したような感じ」を受ける曲が多かった。こうした様々な影響を楽曲の中に取り込んでいるのがメタリカなのだなぁと思うと同時に、メタリカの魅力はそうした複数の要素を混合させて1曲にまとめ上げてしまう力なのだなぁとも思ったり。そして、そうした様々な要素を自分たちの音楽にとりこんできた結果、このように多種多様なジャンルの曲をカバーしてもそれぞれ完成度が高く仕上げるだけの説得力が持てたのでしょう。このアルバム「ものすごく突出してハマっている曲」はありませんが、「明らかに浮いている、Metallicaのスタイルに合っていない曲」もないんですよね。これだけ多様な音像をMetallica色に染めて、1枚のアルバムの中で並べてしまうバンド力というか、説得力は凄いものがあります。

曲で言えば、1曲目と11曲目がハードコアバンドのDISCHARGEの曲を選んでいます。メタルからの影響だけでなくハードコアからの影響が強いこともはっきり表現している。彼らの敬愛するMotörheadももともとパンクレーベルからデビューしたように、Metallicaもパンク/ハードコアとメタルの両方からの影響を受けているのですね。今までもハードコアのカバー曲を出していますが、アルバムの頭と〆をハードコア曲にするという構成は初。Metallicaのアルバムは最初と最後の曲が疾走曲、というパターンが何枚かありますが、今回はDISCHARGE、つまりハードコアの曲がそうした疾走曲の役割を果たしています。

途中にはDiamond HeadやMercyful Fate、Blue Öyster Cultといったハードロック/メタル色の高いカバーもあり、流石の出来栄え。そうした曲に並んで「Load」「Reload」を通過したからこそカバーできたであろうアメリーナの「4.Turn The Page」「10.Tuesday's Gone」やオルタナの「6.Loverman」まで演奏できるのがMetallicaの凄味。「メタルシーンのトップバンド」にとどまらず「ロックシーンのトップバンド」になれたのはこうした雑食性、拡張性の故でしょう。あと、ブラックアルバム(1991)以降かなり間が空いていたとはいえ、Load(1996)、Reload(1997)、Garage Inc.(1998)と3年連続でスタジオアルバムを出したのも凄い。毎年話題性のあるアルバムを連続で出したこともMetallicaの存在感を増したように思います。

- Tracks 1 & 11 originally by Discharge (Track 11 also contains hidden cover of Robin Trower's opening section of "Bridge Of Sighs")
- Track 2 originally by Diamond Head
- Track 3 originally by Black Sabbath (includes short portion of the same group's "A National Acrobat")
- Track 4 originally by Bob Seger (Released as Single. Official Music Video was made for this song)
- Track 5 originally by Misfits (Released as Single)
- Track 6 originally by Nick Cave & The Bad Seeds
- Track 7 originally by Mercyful Fate (Actually a medley of 5 songs: "Satan's Fall", "Curse of the Pharaohs", "A Corpse Without Soul", "Into the Coven", and "Evil". / Has distinction of being Metallica's Longest song)
- Track 8 originally by Blue Öyster Cult
- Track 9 originally by Thin Lizzy (Released as Single. Official Music Video was made for this song)
- Track 10 originally by Lynyrd Skynyrd

このアルバムからはストーナー直系とも言えるBlack Sabbathの「Sabra Cadabra」カバーをどうぞ。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

1998リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

New Recordings '98
1.Free Speech For The Dumb 2:35
左チャンネル、なだれ込んでくるリフ、ディストーションと刻み
おや、Reloadとはまた音が変わっている
だいぶリフを引っ張る、同じリズム、ベースとドラムが渦を作る
ジェイムスのリフもザクザクしている、荒々しいがブラックアルバムの質感を感じる
ボーカル、吐き捨てるような歌い方だが声の輪郭がくっきりしている
カークも自由に弾いている、ノイズというか上に乗る音
ずっとジェイムスは同じリズムで刻んでいるな、ドラム、ベース、リフ、同じリズムの反復だがこれ自体で酩酊的
展開しないが同じテンポをずっと繰り返す、リフによる酩酊効果をもう一度再確認か
これを1曲目って、なかなか面白いな
ディスチャージか
★★★★

2.It's Electric 3:33
緊迫感のあるメタリカの音が戻ってきた
ギターリフ、左右で絡み合うギター、ベース、ドラム
ベースも大人しめだが独自のグルーヴを主張している
Diamond Headの曲、昔からのレパートリーなのだろう
ボーカルが安定している、ギターリフの絡み合い、ギターの音が溌剌としている
ダウナーな感じはほとんどないが、やや中低音にその名残はある
当時、このアルバムは音が良いなぁと思った記憶があるがそれは今聴いても変わらないな
かなり整理されている、し、かといって各楽器が分離してもいない
バンドサウンドとしてきちんと絡み合って、嚙み合っている
★★★★

3.Sabra Cadabra 6:20
ちょっとチョーキングを使ったリフ
ジェイムスがこういうリフを弾いてもサマになるのはLoad、Reloadを経たからというのはあるな
音が気持ち良い、体が動き出す、陽性の音
ツインリード、ここはオーバーダブか
サバスの曲
ロックンロール、おお、オジーの声真似とかまったくしていないがサマになっている
自分のものにしている、何をやってもメタリカというか、バンドサウンドが強固
これ、リフの方もワウがかかってるな、やっぱりジェイムスもワウを使っているのか、左右ともカークか
それぞれ癖があって面白い、刻みはジェイムスの方がカッチリしているし、チョーキングはカークが滑らか
ただ、長くやっていく中でそれぞれ変化しているのだろう
Load、Reloadにもあったドゥームやストーナーな曲と構成的には近い部分もあるが、こちらの方が歯切れがよい
曲自体も酩酊というよりはブルージーな感じ、ダウナーではあるがストーナーまではいかない
リフはちょっと弾んだ感じもあるし、基本となるグルーヴは体が動きだすリズム
「いい音(モダンな音)で70年代HRの曲を再構築する」みたいな力がついたのはこの頃からか
Kinksのカバーとかもやりだしたし、「模倣」とか「懐古」ではなく、生き返らせるようになった
★★★★

4.Turn The Page 6:06
ボブ・シーガーの曲
この曲はけっこうハードロック的な構成
物語るような曲、じっくり展開していく、歌詞を聴かせる感じ
好きで歌っている感じがする
リフは左右でけっこうタイミングをずらしている、ポリリズム
カークとジェイムスで互いに呼応する、ボーカル弾きながらよくこういうリフが弾けるものだ
ドラムがどっしり支えながらアクセントを変えていく
リフによるテンポチェンジなどはないが、同じテンポ、リズムの中でアクセントは変わっていく
ベースのリズムも心地よい、なんだろうなぁ、ちょっとしたグルーヴ感というか
比較的音を埋めるような、同じリズムで刻むような弾き方は変わっていないのだけれど
ちょっとした本能的な心地よさが増している、あとは音作りか
楽器の音って不思議だよね、達人というか上手い人が出すと心地よい
タイミングとか、ちょっとしたニュアンスでグルーヴは変わる
★★★☆

5.Die, Die My Darling 2:26
メロコア、Misfits、分かりやすいメロディ
ただ、以前あったような若々しさよりどこか落ち着いた哀愁というか
メロディに説得力がある、こういうポップ、フックの強い歌メロを歌っても借り物感がない
ベタながらギターのリズムの変化、ハーモニーのつけ方など、ランダム要素がある
シンプルな曲構成ながらパターンはけっこう変わっている
これは今聴いても心地よいなぁ、一聴して耳に残る度合いは高い
★★★★

6.Loverman 7:52
ニック・ケイブ&ザ・バッド・シード
オーストラリアのシンガーでオルタナティブロック、らしい
あまり聴いたことがないが確かにオルタナっぽい
気だるい、というかつぶやくような低音のヴァースからバンドが入って盛り上がるコーラスへ
ボーカルがくっきりと聞こえる、Loadだとこういう低音の歌メロの時にボーカルが埋もれる曲もあったが
意図的にボーカルを出してこなかったというか、そういうミックスだったのだろう
色々な実験を経て、さまざまなパターンの曲の聴かせ方を身に着けた感じがする
Load、Reloadを経たからこれだけいろいろなタイプの曲をカバーすることができるようになったんだな
ベースが蠢く、坩堝のような、音の渦をベースとドラムが作り出せるようになった
その上でギターが舞う、この感覚はクリフバートン時代にも感じたなぁ
特にベースに意識を向けなくても、何か低音が渦をまいていた
音がクリアになり、各楽器パートがはっきり聞こえるプロダクションになっているが、感覚が戻ってきている
Reloadの後半あたりからそれを感じたが、継続、強化されている
全楽器それぞれの表現力が増している、バンドサウンドのケミストリーとはこういうことか
曲そのものの出来は、カバー曲なので「メタリカのある部分」を拡大したような曲が多い
カバーするということは元ネタというか、影響を受けているわけだけれど、こういう曲を煮詰めながら自分たちのフィルターを通して出しているのがオリジナル曲
もちろんアレンジや音でメタリカらしさはあるのだけれど、どこかメタリカの一部というか、メタリカの曲の一部のパートを拡大して一曲にしたような感じもする
(元曲を知らないからね)
★★★☆

7.Mercyful Fate 11:10
メロディアスなリフ、そこからリズムカルにしなるボーカル
歯切れがよくカッコいい
これはMercyful Fateの複数曲のメドレーだよな
1stっぽいというか、かなり初期のメタリカの楽曲の構成に近い
ただ、リズム感とかソロのセンスはちょっとオリジナル曲とは違うな、歌メロも
モダンなプロダクションで80年代メタルをしっかり再構築してみました、という感じ(実際そうなのだけれど)
ギターの音とか、演奏とか、そのあたりがきちんと「当時感」もあるんだよなぁ
さっきも書いたが「さまざまなタイプの楽曲を自分たちの色で(当時の音も感じさせつつ)再現する」というスキルをこの頃のメタリカは持っていた気がする
それはこのアルバムの制作過程においても培われたものなのだろうけれど
ああ、メタル、ハードロック、ヘヴィロックの総括というか、拡散したものをカバー集という手法でも試してみたのかも
人の曲を通じても出てくる「メタリカらしさ」とは何か
もちろん、選曲の時点でもそれはあるわけだけれど、かつてのポリリズムはありつつ新しい要素も出ている
一つは歌メロだな、歌メロの聴かせ方と、ハーモニーのつけ方は明らかに上手くなった
ハーモニーの入るタイミングとか、ハモリ方がけっこうパターンが変わっていく、これカナダのRushとかもそうだけれど、それによって曲が展開していく感じがする
別段すごく複雑なハーモニーをするわけではない、ただ、パターンが展開していく
ポリリズムの感覚に加えて、声によるハーモニーの使い方が上手くなった
後は音が分離していても塊感を出せるというか、クリアなのだけれどきちんと嚙み合っている感じ
これは特にこのアルバムはそうだな、各楽器の音がクリア
音がカッチリしている、80年代メタルの音がそのまま進化したような
これはこのアルバムの特異性かもしれないなぁ、St.Angerではまた変わった気がする(この後聞き直す予定だが)
Reloadはやはりもう少しルーズというか混然としていた、グランジの影響を感じるというか
これはその前のハキハキした音像もありつつ、音の太さとか分離の良さは80年代とは違う
リバーブもそれほど強くない
メタルジャスティスにも近い音作りなのかな、あれもかなり整理されていた
メタルジャスティスとの違いはベースだな、ベースが存在感がある、きちんと噛み合っている
★★★★

8.Astronomy 6:37
Blue Oyster Cultの曲
ボーカルの感じがだいぶ違うな、こういう声を出せるんだ
歌いだしの部分
ギターが入ってくる、メイデンっぽい音だな、ギターサウンドが
これ、メイデンにとっても元ネタ(ルーツ)の曲だし
ヘイ! の掛け声はなかなか勢いがある
かなり忠実なカバー、もともと違うリズムのリフが絡み合う、その間でボーカルメロディが進む、みたいな構成だからな
細心の注意を払って再現しているというか、これはリラックスしながらも緊迫感がある曲
全体的に素晴らしいサウンドで、このサウンドでReloadやってくれれば良かったのにと少し思うが、あれがあったからたどり着いた音像なんだろう
かえってここまで整理されちゃうと退屈になるのかな
一つ一つのパートがはっきりわかる、まぁ、この曲はもともと知っている(けっこう聴きこんでいる)というのもあるのかも
しかし、1stの頃にこれだけ多様な音楽性を演奏できるバンドになるとは(当人たちも)予想できなかっただろうな
さまざまなタイプの曲を引き受ける、「ロック」の幅広さを受け入れる覚悟のようなものも感じる
シーンのトップバンドが「総括」するというのはそういう心理もあるのだろう
★★★★

9.Whiskey In The Jar 5:04
バイクをふかしたくなるようなリズム、グルーヴ
ボーントゥビーワイルドとかにも近いな
これはもともとトラッドでThin Lizzyバージョンのカバーのカバー
ギターフレーズとかはThin Lizzyからかな、トラッドバージョンがどこまで含まれているか分からないが
もともとはコードとボーカルラインしかない曲だとは思う
この曲はリラックスしてジャムっている感じがする
とはいえリズムや完成度はかなり気が使われている、精密な感じはあるが
ハーモニーの入れ方はだいぶ凝っている
ああ、これ分離しているというか整理しているように感じるのはリズム分割がけっこう分かりやすいのもあるのかな
たとえば1小節をいくつに分割するか、それが8なのか16なのか32なのか
それは曲のBPMによっても違うのだけれど(そもそも速い曲は32とかに分割できない、演奏しきれない)
そのあたりの分割が分かりやすい、もともとの曲の構成に対して分割しなおしてアクセントを足すわけだ
自分たちの曲だとそのあたりがもっと込み入っているというか、曲構成そのものでずらすし、ちょっとしたもたりや走りもオリジナルだと許容している、むしろ意図的に使っている
これはそういうのをあまり使わずオンタイムなので、設計図がクリアなんだな
音作りもあるが、編曲時のリズム、譜割りの分かりやすさもあるのかも
★★★☆

10.Tuesday's Gone 9:03
レイナードスキナードの曲、おお、これはまた違う歌い方だな
色々な声が出せるなぁ、これはジェイムスらしさがほぼない
ReloadのLow Man's Lyricもそんな感じだったが
そういえばアコースティックセットとかもやるんだよなぁ、昔からそういう側面はあったが、こういう曲を通して練習してきたのだろう
アコースティックセットでも盛り上げるのは職人技
純粋にミュージシャンシップが高い、カバー集を出せるのもそういうことだし
一時期、いろいろなビックイベントで大物歌手のバックバンドをメタリカが務めた時期があったような気がするんだよね
レイデイヴィスとかブルーススプリングスティーンとか
ロックンロールオブフェイムの記念コンサートか
ああいう振り幅、ロックミュージックのレジェンド、言い換えれば名人たちと渡り合うわけで、メタリカもそういうバンドになっていくわけだ
アルバムを辿るというのはその過程でもある
このアルバムはそういう「ロックの名人」としてのメタリカのアウトプットでもあり、修行でもあるんだな
ルーツロックというか、「メタル」から「ロック」へと幅を広げた作品
そういう範囲まで演奏できる能力を身に着けたということ
Load、Reloadはかなり実験だったし、無理な部分もあったがその旅路はここでさらに先に進むわけだ
完全なカントリー、アメリカンミュージックの音像、この曲は「サザン・メタル」ですらない、純粋なアメリカーナ
★★★☆

11.The More I See 4:48
からのDISCHARGE、最初と最後をDISCHARGEで〆るというのは面白い
やっぱりこういう荒々しさというか、その主張を感じる
ただ、それがDiamond HeadやMercyful FateではなくDISCHARGE、ハードコアというのが面白い
色々な音楽性があったが激烈性をなくしていない、という主張はハードコアなんだな
まぁ、メタル、特に70年代とか80年代のメタルはメロディアスだったり、いろいろなものを包括しているから
メインストリームだったので、ロックという幹の本筋だった
ハードコアのように激烈性に特化していない、メタルの中でスラッシュメタルとかデスメタルはそっちに特化していったバンドもいるけれど
今回改めて1stから聞き直してきて思うが、そもそもメタリカは速さを追求したことはほとんどないように思う
だから、荒々しさというとリフのザクザク感、刻みが繰り返されることによる暴虐性や、叫びといったところなのだろう
ツーバス疾走とかほとんどない
「同じ音階のリフでリズム楽器のようにギターリフを扱う」という手法はDISCHARGEからの影響が大きいのかもしれない
こういうパートが入るのが初期からメタリカの特徴ではあった
それほどスラッシーというか、音程移動が激しいリフ(たとえばメガデスとかアナイアレイターとか)は少ない
一度曲が終わった後、ミドルテンポのソロパートみたいなものが入ってきて消えていく、ジャムセッション的な
この単音リフのパートの後、ソロとか展開していくとメタリカの曲になりますよ、というお遊びなのだろうか
★★★★

総合評価
★★★☆
娯楽作として良質、お遊び、おまけとして楽しめる
これも完成度の高いイージーリスイングメタルだな、やはりスリリングさには欠ける
ただ、視点を変えると「これだけいろいろなスタイルの曲を自分のものにできる」というのは凄いチャレンジ
ロック・ミュージシャン(演奏家)としてメタリカというバンドが名人の域に達した証左
やはり合うスタイル、合わないスタイルはどのバンドにもある
Load、Reloadで拡張した自分たちの可能性を人の曲をやることで証明してみせた作品とも感じた
とはいえ、やはり何か物足りなさはある、なんだろう、音もいいし迫力もあるのだけれど、複雑さとかリズムの絡み合い、混沌としたエネルギーに欠けるというか
どの曲も、わざわざ選ぶだけあって何かしらの魅力がある、いわゆる「名曲」だし、それぞれアイデアも盛り込まれていて単曲で聴けば心地よいのだけれど、アルバム全体の流れとしてグルーヴが出てこない
聞いているうちに乗ってくる、中盤あたりからだんだん音世界に引き込まれていく、という感覚が薄い
一曲一曲の世界観が違うから、というのはあるだろうな、性質上シングル集みたいなものだし
そこまで「流れ」は考えられていない気がする
カバー集というのは作る過程でいろいろと得るものも多いんだろうな、やはり人の曲って癖が違うし
バンドのストーリーとして「こういうルーツなのか」が分かると同時に、「次はどうなるんだろう」という期待にもつながる
カバー曲で得たテイストが何かしら反映されるはずだから
ブラックアルバムまではけっこう直線状に進化してきたメタリカだが、Load、Reload、そしてこのアルバムで広く音楽性が拡散した
さて、ここからどうなるのだろう

ヒアリング環境
朝・家・ヘッドホン

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