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Exodus / Persona Non Grata

Exodusは、1979年にカリフォルニア州リッチモンドで結成されたアメリカのスラッシュメタルバンドです。スラッシュメタル四天王(メタリカ、メガデス、スレイヤー、アンスラックス)、通称ビッグ4に次ぐ知名度を誇るスラッシュメタルの古豪。Metallicaのカークハメットがもともと在籍していたバンドでもあります。本作は7年ぶり11作目のアルバムで、スラッシュメタル界隈では大きな話題となっています。2018年1月にはほぼ完成していたようですがギターのゲイリーホルトがスレイヤーのフェアウェルツアーに参加したこと、2019年からのコロナ禍の影響でリリースが延期。やはりメタルバンドはアルバムを出したらツアーで演奏することで循環ができますから、ライブができない状況だとアルバムをリリースしづらい。そうしたこともあり7年ものブランクがあり、まさに待望の作品。各種ユーザーレビューなどを見ていると、その期待に応える名盤だとおおむね好評なようです。楽しみ。

活動国:US
ジャンル:スラッシュメタル
活動年:1979-
リリース日:2021年11月19日
メンバー:
 Steve "Zetro" Souza – lead vocals
 Gary Holt – guitars, backing vocals
 Lee Altus – guitars
 Jack Gibson – bass
 Tom Hunting – drums, backing vocals

総合評価 ★★★★☆

王道スラッシュメタルとは何か、と問われたらここにその答えがある、気がする。王道は一つだけではないのだけれど、非常に硬派で「これぞスラッシュメタル」というべき音像。音も重すぎず、軽すぎず。最近のメタルコア勢に比べるとアグレッションが薄目ではあるが、その分聞きやすさもあるし、「ハードロック」と呼べるほど軽くない。軽快で衝動を感じるフレッシュさもある音像。ベテランだけあって音作りはカッチリしているが、ところどこに入る奇妙な感覚、ひっかくようなリフや責め苦のようなスロウなパートがあり、確立された一つの確固たるスタイルを感じる。どこを切ってもExodus。コンディションを選ばずに聞ける良盤。

1."Persona Non Grata" 7:30 ★★★★☆

切り込んでくる鋭いリフ。歯切れが良い。とにかくスラッシーというか、重厚さより軽快感、爽快感がある。音像はカラッとしていて非常にシャープ。1曲目から7分台の曲。オールドスタイル、王道なスラッシュがこれでもかと展開される。リフが展開し、曲が進んでいく。まさにスラッシュ(鞭打つ)ような、波状攻撃のリフ。リフミュージック。1曲目から長尺曲をぶつけてくるのは楽曲構成力への自信の表れだろう。疾走感がありつつ、しっかりドラマティックに曲を構築していく。

2."R.E.M.F." 4:22 ★★★★☆

つんのめるようなリフ。前曲が理路整然とした、整理された音像だとしたらもっとつっかかる感じがある。ドラムが入ってきて疾走に入るとやや整理されるが、少し奇妙な質感が残る。この「奇妙さ」がExodusの売りだよな。やや異形というか。とにかく高速で歯切れが良い。もっとテクニカルなバンドは出てきているが、この軽やかな疾走感はほかで得難い。油が少ないのにカラッとあがった天ぷらみたいな。サクサク感が凄い。

3."Slipping into Madness" 5:33 ★★★★★

ややミドルテンポに、少しギアを落とした感じだがエンジンはふかしっぱなり。エンジンをふかすようにドラムの手数は多め。そこからタイトな疾走、小走り感のあるテンポに。なんだろう、AC/DCみたいな「本能的に気持ち良い」レベルに入っているな。Motorheadとか。ミドルテンポになりシンガロングがコーラスが。もはや伝統芸というか、「スラッシュメタル」の型そのもの。その中で深化し、本能的な快楽性を追求している。音としてはかなり軽やかで聞きやすい部類。ボーカルも爬虫類声だがスクリームやグロウルではない。まさにスラッシュの王道を行く曲。

4."Elitist" 3:58 ★★★★☆

ミドルテンポでザクザクとしたリフ。じっくりと展開していく。前曲もそうだが、ギターソロにメロディアスさが増してきた。間奏部のリフもやや(このバンドにしては)クラシカルというか、和音の展開感があり、わかりやすいメロディの展開がある。テンションコードで緊張感を持続する、わかりやすいメロディに着地しない方がスラッシュメタルは多いので。この曲はちょっとパワーメタル感もある曲。

5."Prescribing Horror" 5:09 ★★★★☆

ミドルテンポで進んでいく曲。ひっかくようなリフが続く。ねっとりとした責め苦のような時間が続く曲。拷問的な曲。フランクザッパで「拷問は終わりなく続く」という曲があったが、ああいう感じに近い。曲構成とかではなく、受ける感覚が、ということだが。かつて東京タワーにあった蝋人形館の拷問コーナーでこの曲がかかっていても違和感がない。不穏で不気味な音世界が徹底されている。

6."The Beatings Will Continue (Until Morale Improves)" 3:01 ★★★★☆

全曲の責め苦のような感じから変わり、ラジオから流れるような軽やかなギターリフ。そこから音に芯が入ってきて疾走へ。リバーブがほとんどない、切れ味がシャープなリフとリズム隊が軽快に駆けていく。目まぐるしい展開。爬虫類的なボーカルが喚く。歯切れのよい、しなるように鞭打つメタル。

7."The Years of Death and Dying" 5:22 ★★★★☆

中盤、乗ってきた。ミドルテンポだがぐいぐい来る感じが強くなっている。コーラスがメロディアス。ジャーマンパワーメタル的な曲。途中は軽快かつスラッシーにしなやかに疾走する。コーラスはどっしりと機械的。ここまでにないタイプの曲。中盤になるにつれてわかりやすいボーカルメロディが出てきた気がする。

8."Clickbait" 4:31 ★★★★☆

再びテンポというか展開が速めの曲に。リフが複雑。ノイズもうまく使い、渦巻くようなリフになっている。緊張感、緊迫感を維持するテンションがかかった和音構成、スラッシーな展開。シンガロングなコーラスも出てくる。シンプルにカッコ良い。

9."Cosa del Pantano" (instrumental) 1:13 ★★★★

アコースティック、砂漠的な乾いた音。虫の音のような、何かがきしんでいるような音もする。もともとExodusは「出エジプト記」のことだから、そうしたオリエンタルな要素を持っているのか。

10."Lunatic-Liar-Lord" (featuring Rick Hunolt) 7:59 ★★★★☆

前曲をイントロにして、そのままアコースティックで少しエスニックなフレーズに。それがそのままリフになり疾走に入る。これはアガる。中間部はだいぶヘヴィで責め苦のようなパートへ。緊迫感、重圧感から解放されるように疾走へ。ピッキングハーモニクスも入ってくる。緩急がしっかりしている。この硬派な疾走感はOverkillとかにも近いな。USスラッシュメタルならではの音像。

11."The Fires of Division" 5:23 ★★★★☆

断続的に出てくるリフ、、、からの突進。ジャーマンメタル的な、隙間のないツーバス。バタバタと空間を切り裂くような、矢継ぎ早のリフが切り刻む。リフの海の中をソロが泳いでいく感覚。とにかくリフの手数が多いというか刻みが多い。ザクザク感が心地よい。人間の極限に挑戦、的な曲芸的なテクニカルさはないが、予想できる範疇を越えていて次々と矢継ぎ早に音の渦、刻みの渦に引き込まれる感じ。このあたりの「適度な速度感」はベテランの味わい深さ。後半の間奏でクラシカルなツインリードが出てくる。そこからの疾走。面白いな。

12."Antiseed" 6:17 ★★★★☆

高速エイトビートで駆け抜けていく曲、リフも軽快。どの曲もクオリティはそこまで変わらないというか、同じ世界観で進んでいく。それぞれの曲にはキャラクターがあり、洗練されている。同じスタイルも繰り返していくことで洗練されていくのだなぁ。「スラッシュメタル」という型の一つの進化系。スラッシュ四天王に並び称されることもあるだけの独自の世界観。王道であり類型化されたサウンドではあるが、オリジネイターとしての凄味と深みがある。



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