Noctule / Wretched Abyss
UKのポストハードコア/ポストメタルバンド、SvalbardのボーカルであるSerena Cherryのソロプロジェクトで一人ですべての楽器を演奏しています。2021年リリースの1stアルバム。
出身国:UK
ジャンル:Black Metal
活動期間:2020-現在
メンバー:Serena Cherry(全楽器、ボーカル)
1.Elven Sword 05:14 ★★★★☆
喚くような金切り声が唐突に響き、リフが入ってくる。どこかエレクトリックでチープなドラム。ディスコというよりエレクトーン的な。チープな打ち込みにメロディアスなギター。波打つようなギター。ボーカルは遠くの方でわめいている。変わった音像。妙にキッチュでポップさがある。ブラックメタルをカリカチュア化、抽象化したような。少しずらして、激烈なメタル感というより今のUKロックシーンの音になっている。ボーカルはブラックメタル的というよりハードコア的か。かなり後ろの方で響いているが。ギターはかなりメロディアスで、さすがメロディーセンスは高い。目ロディックハードコアに、ブラックメタルの手法を混ぜ込んだような、それでいて全体的に宅録感もある面白い音像。
2.Labyrinthian 05:19 ★★★★
ミドルテンポというかヘヴィバラード的な。ギターフレーズが切り込んでくる。ボーカルは変わらず遠くの方で叫んでいる感じのミックス。ギターがかなり泣いている。最初からクライマックスで泣きまくる。が、北欧的な泣きではなくやはりUK的な泣き。クライマックスが持続する。テンションがずっと高い。どこか幻想的で美しい、けれど吹雪を思わせる。途中からアコギのパートへ。
3.Wretched Abyss 06:11 ★★★★
ややスケール感のある始まり、音像は同じながらメロディが美しい。トレモロリフでメロディを奏でつつ、軽快かつアップテンポなリズムに。メロディはかなり北欧的、音作りだけはUK的。最後、美しいコーラスで終曲。
4.Evenaar 05:50 ★★★★
美しいコーラスを引き継いで次の曲へ。遠くからオーロラのように揺らめく音像にリフが切り込んでくる、ミドルテンポで刻むリフ。それがそのまま曲の背骨となり展開していく。叫び声が入ってくる。ギターがメロディを展開させる。これはかっこいいメロディ、どこか日本的でもある。Coalters Of The Deepers、NARASAKI的なものも感じる。ノイジーで轟音なのだけれどドリーミーというかかなりポップさを感じる。
5.Winterhold 03:45 ★★★★☆
どこかクワイヤのような、明るめのメロディ、それをギターが奏でる。コーラスのように聞こえる分厚い音。ノイジーながらギターのハーモニー感がある。そこにどこかチープでおもちゃ感があるドラム、遠くで叫ぶボーカル。妙な祝祭感、クリスマス感がある。メロディのせいだろう。先が読めない展開が続く。クラシカルなメロディとも言える。4分弱の曲ながらかなりドラマティック。
6.Deathbell Harvest 06:25 ★★★★
リズムが降ってくる、雨音のようにぽつぽつと振ってくる。トレモロのギターが入り、やや遠目に轟音が空間を埋める。ボーカルも変わらず遠くの方でスクリームしている。途中から美しい、雲の切れ間から差し込む光のようなパートへ。全体として激情を訴えているような音像(ブラストビートにスクリーム)だが、かなり明るい、光を感じる。音が軽めなのも影響しているだろう。ドラムやベースがそれほど強調されていない。ギターメロディ、ギターの浮遊感が強い。
7.Unrelenting Force 05:20 ★★★★
後半になるにつれて浮遊感が増してきた。悲哀や哀切な咆哮も感じるが、どこか明るさがある。しかしこのアルバム、全体的にメロディにあふれているな。かなりメロディアス。ボーカルはずっとスクリームだが、ギターが主体となってさまざまなメロディを奏でる。北欧メロディアスブラックメタル的なメロディからUK的なメロディ、メロコア的なメロディ、賛美歌的なメロディまで。
8.Become Ethereal 03:29 ★★★☆
荘厳な音像、レクイエムのようだが、どこかチープさがあるキーボードの音、「キーボード」と分かる音が可愛げがある。不思議な愛嬌、つまり宅録感があってそれが不思議な親近感を抱かせる。箱庭的な世界を想起するからだろうか。ピアノが入ってくる。オーケストラだけの音像で終わり。
全体評価 ★★★★
全部ひとりでやった、ということもあり(巣ごもり期の成果?)、宅録感、手作り感があって親近感が沸く。ボーカルはずっとスクリームながらメロディにあふれていて聞き飽きない。途中、どこかリラックスできる感覚がありやや集中力が途切れる箇所もあるが、決して不快ではない。後半になるにつれて浮遊感が増していき、荘厳な雰囲気になるが宅録感、箱庭感が消えないので親しみやすさがある。
個人的には以前レビューした本家Svalbardのアルバムよりメロディセンスが好み。
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