2020 ベストアルバム10(愛聴盤)
いよいよ今年も大詰め。衝撃盤に続いて愛聴盤、その名の通り「よく聞いた」アルバムです。メロディアスで70年代ハードロック~正統派メタル、プログレメタル色が多め。あまり極端なものや実験的なものは入っていません(そちらは衝撃盤にまとめました)。昨年とほとんど同系統ですね。今年はいろいろ新しいアーティスト、新しいアルバムを聴くことに楽しみを見出していましたが、根本的な好みはそうそう変わらないものです。
それでは行ってみましょう。
10.Magnum / The Serpent Rings
【UK】【70年代デビュー】【伝統派・70年代ハードロック】
1972年結成、1978年デビューの英国ハードロックの古株、マグナムの21作目。少しファンタジックでシンフォニックな響きもありますが今のシンフォニックメタルとは一線を画す音像。本物の伝統といぶし銀の美しさがあります。UK勢はベテランが強いですね。ベースが元Pink Cream68のデニス・ワードに変わっての作品。デニスは曲作りには参加していないもののちょっとモダンな感じを持ち込んだ、、、ように感じます。全作熱心に聞いてきたファンではないのでデニスの影響が分かりませんが、どことなくフレッシュな感じを受ける溌剌とした音像です。昔から名前は知っていたし軽く聞いてはきたんですが今作はとても良かった。ベテランバンドに才能ある一世代下のミュージシャンが入って活性化する事例はいろいろありますがMagnumもそんな印象。今年のベテラン勢の新譜だとOzzy Osbourne、Deep Purple、Blue Oyster Cult、Lionheartあたりも印象に残りました。その中でも個人的には一番好きなアルバム。「英国HRの薫り」「伝統的なブリティッシュロック」と言った言葉から連想するのはこういうサウンドです。ジャケットもいいですね。Rodney Matthews(ロドニー・マシューズ)作。Playng Mantisの諸作品なども手掛ける、70年代から活躍するベテランイラストレーターです。
9.VICTORIUS / Space Ninja From Hell
【ドイツ】【10年代デビュー】【メロスピ・パワーメタル】
2004年結成、2010年デビュー。今回のアルバムは5作目。とにかく陽性のメロスピ(メロディックスピードメタル)で疾走感も高い。明るく楽しいパーティーメタル。テーマがサムライ、ニンジャとSFが絡み合うエンタメに徹した姿勢も潔い(WASABIも出てきます)。Beast In Blackほどの衝撃には至りませんでしたが娯楽、明るさに全振りしている良盤。メロディも良質ですごくいいオーラを感じます。メロスピ、パワーメタル系で「今年の1枚」といえばこれでしたね。他に印象に残っているのはロシアのArida VortexやフィンランドのEnsiferum。スラッシュ寄りですが同じく陽性でエネルギーを感じたのはGama BombとRavenといったところ。それらを抑えて一位はこれかなと。「あさってからでもいいかな…」でも5つ星というまさかの結果。あそこそんなにメロスピ聞いてる印象ないんだけどなぁ。実は今年前半にリードトラック(Super Sonic Samurai)のMVだけ観て、好きな感じではありましたが「いつものナパームのネタバンドか」と思ってしっかりアルバムまでは聴いていなかったんですね。あさって...さんが5つ星つけたので改めて聴いてみたら納得の出来でした。本当にメロディがいい。90年代ジャーマンメタルのアルバムに数曲入っていた「キラーチューン」ばかりを集めた感じ。この辺りの割り切りというか、「迷いなく快楽へ突っ込んでいく」感じが10年代デビューのバンドっぽい。やっぱり先人たちの試行錯誤を経て、そこから先に進むべきですからね。
歌メロが良くなっている点も見逃せないポイント。やはりメロパワ/メロスピはコーラスでしっかりと盛り上がらないといけないわけですが、本作はその点が完璧。イケメンフロントマンのDavid Bassin(Vo)は音域が広いとか表現力が高いとかそういうタイプのVoではなく、中音域を中心にしっかりと歌う堅実なタイプなので歌メロがイマイチだと存在感が薄くなりがちなんですけど、本作は歌メロの良さのおかげでピカイチの存在感を放っています。メチャクチャ上手いわけではないのに存在感が凄いです。いやDavidくんのパフォーマンスが悪いわけじゃないのよ。彼のパフォーマンスうんぬんなんて関係ないくらいに歌メロが良い。ただそれだけなのよ。
8.Dizzy Mizz Lizzy / Alter Echo
【デンマーク】【90年代デビュー】【サイケデリック・ハードロック】
90年代、日本でも(少なくとも僕の周りでは)一世を風靡したDML。2000年代は活動停止状態にありましたが2010年再結成、2014年の復活作を経て今作。「衝撃盤」で取り上げたHUMのようなちょっとダークでグランジ・オルタナ的な音像、音響的な計算も感じる音作りながらやはりティム・クリステンセンのメロディセンスの分かりやすさというか、個人的嗜好性にぴったりはまって愛聴盤に。今回はアルバム全体が一つのテーマに貫かれているというか、同じモチーフ(フレーズ)が何度も反復して出てきます。LPで言うB面は一つの組曲になっていますし、かなり「アルバム」という単位を意識した構成。単曲が突出しているわけではありませんが、これが個人的にはツボでした。アルバムの空気感が身体に染み付いてきて記憶と結びつく感じ。他にこうしたグランジ・オルタナを通過したハードロックだとHarem Scaremも良かったです(「The Death On Me」はベストトラックのひとつ)。とはいえアルバム全体だとこちらの方がよく聴きました。ティム・クリスティンセンがソロでポールマッカートニーのRAMを丸ごとカバーしているアルバム(Pure McCartoney)があって、それも面白かったんですよね。「そうか、この人のフィルターでポールのメロディを解釈するとこうなるんだ」という。丸ごとカバーアルバムを出すってなかなかな入り込み方、研究っぷりですからね。今作からもちょっとポールのDNAを感じます。60年代、70年代のフラワームーブメント、サイケデリックロックへの憧憬と残り香、そしてそこから進んできた道程も感じる作品。
7.Lucifer / Lucifer III
【ドイツ/スウェーデン】【10年代デビュー】【女声ドゥーム・70年代HR】
アルバムへのリンク(YouTube MusicにないのでTIDAL)
ボーカルのヨハンナ・サドニスを中心に2014年結成、2015年デビュー。彼女以外のメンバーは全員スウェーデン人。いわゆる70年代HRの持っていた一側面である呪術性とか暗黒性、ヘヴィさみたいなものを現代によみがえらせるドゥームメタル的なバンド群がけっこう好きなんですが、このジャンルは女声の方が好きなんですよね。
Luciferはドイツ人女性ボーカリストのヨハナ・サドニスを中心としたグループで、Cathedralのリー・ドリアンのレーベル「Rise Above」と契約し2015年デビュー。こちらは2020年リリースの3rdアルバム「Lucifer Ⅲ」より。2016年に初来日公演を行い、その後ドラマーが交代。ザ・ヘラコプターズ、インペリアル・ステイト・エレクトリックのニッケがドラマーとして参加して2ndアルバムをリリース。今回はニッケが参加してから2枚目のアルバムです。このルックス、曲調ながら2020年の今を生きる若手バンド。オーソドックスな音作りでありながら懐古主義にとどまらない、現代的なフックも織り込んだ「いい曲」を聴かせてくれます。
6.Damian Hamada's Creatures / 旧約魔界聖書 第Ⅰ章・第Ⅱ章
【日本】【20年代デビュー】【ジャパニーズメタル・70年代HR】
第一章へのリンク(YouTube Music)
第二章へのリンク(YouTube Music)
衝撃、地獄の大魔王の帰還。聖飢魔Ⅱの創始者にして地獄の大魔王を継ぐべく魔界へ帰還されたダミアン浜田陛下がまさかの新バンドを引き連れてメジャーデビュー。全曲ダミアン浜田作によるミニアルバム2枚連続リリース。期待される音像を見事に具現化した、メタル愛溢れまくる素晴らしい作品でした。個人的には聖飢魔Ⅱってそんなに通っていなくて(同じような路線だと筋肉少女帯は好きでした)、80年代はキングダイアモンド的正統派メタルで、なんとなく90年代後半からポップ化した印象ぐらいしかなかったんですが、人に勧められたりYouTubeで昔のライブ(天地逆転唱法とか)を観ているうちに「すごいなこのバンド」と思うようになって、改めて聞き直そうかなと思っていた時にまさかのDHCデビュー。これが素晴らしい出来で、聖飢魔Ⅱの方もいまさらながら1999年解散ライブの完全版Blu-Rayなんかを観ています。ダミアン浜田って、メタル界における大瀧詠一というか、欧米のメタルをかなりマニアックに研究していろいろなモチーフを組み入れながら構築している印象があります。きめ細かいマニアによるマニアのための音楽。
個人的に、今年はジャパニーズメタル再発見の年でもありました。いろいろなライブが延期・中止になる中で決行された「METALLIZATION Ⅱ」。今まであまり通ってこなかったジャパニーズメタルシーンに触れて、エネルギーを感じるとともにレベルの高さにも驚いた。演奏水準も高いし、独自性があるバンドも多い。ライブも頻繁にあるし行きやすい。
他に日本のメタルだとLovebitesの新譜も良かったですね。KawaiiMetal・Cutecoreとか嬢メタル系のバンドかと思っていたらめちゃくちゃ本格的なメタルでした。日本のメタルシーンも熱いですね。
5.Soilwork / A Whisp Of The Atlantic
【スウェーデン】【90年代デビュー】【プログレ・メタルコア】
1995年結成、1998年デビューのスウェーデンのSoilwork、初期はメロデス的ながらだんだんクリーントーンを取り入れてメタルコア的になりつつ、だんだんプログレ色も強めています。今作はフルアルバムというよりはEP扱い。メインは16分半の大曲。EPといいつつ40分近いので、A面が大曲1曲、B面はシングル曲を集めた、みたいな作りですね。大曲がメインですが、他の曲もむしろ「アルバムコンセプト」という縛りがないからか単曲として強い。初聴の印象は「このバンド、こんなに良かったっけ?」という印象。個人的嗜好へストライクでした。大曲なのでプログレ的な構成、曲がいくつかのシーンに分かれて展開していく組曲形式ですが、それほどテクニカルさを前面に出してはこず、メロディがしっかり印象に残るパートで作られています。グロウル、デス声のパートもありますが、残虐性よりは勇壮さや美しさ、壮大さが印象としては強い。ただ、流れるようにパートが進みますが中にはかなりエクストリーム、ブラックメタル的なパートも出てきます。音像の揺れ幅が大きい。何よりメロディが良いです。チルボドのように正統派メタルとしてもカッコいいリフや構成も多い。この曲なんか疾走感あってストレートにカッコいいですよね。こちらも当EPからの曲。
4.Katatonia / City Brials
【スウェーデン】【90年代デビュー】【ゴシック・ドゥームメタル】
スウェーデンから2連発。とてもいいアルバムでした。今年はゴシックというかこうしたダークでメロディが美しく暴虐性も高い(パートがある)バンドをいくつか聴きました。Paradise LostとかSvalvardとか。ちょっと違うけどEnslavedも似た空気感はあるのかな。その中では一番メロディが好みでした。音像も適度に活力があるというか、ダークでメロウな雰囲気はあるもののキレが良いアルバムです。Soilworkと並んで北欧メタルのスウェーデン特集でも取り上げました。
Katatonia(カタトニア)は1991年結成のストックホルムのバンドです。中心人物はジョナス・レンクス(ボーカル、ドラム)とアンダース・ナイストローム(ギター、ベース、キーボード)の2名。この2名ですべての楽器を録音しツアーメンバーを集めてスタートしたバンドでしたが、2016年以降は同じメンバーで活動を続けています。初期はデス・ドゥーム系の音楽からスタートしてだんだんとメロディの美麗さと曲展開の複雑さを増していきメロディが美しいプログレ・メタル的な音像に。OpethやParadise Lost、Soenの新譜にも近い雰囲気を感じます。レンクスとアンダースはスーパーグループBloodbath(後で紹介します)でOpethの中心人物ミカエル・オーカーフェルトやParadise Lostのニック・ホームズと一緒に活動もしていたし、この辺りの音像は互いに影響を与えている印象。2020年リリースの11thアルバム「City Burials」が素晴らしい出来で、メロディの質がとにかく高い。
ところどころプログレ的な変拍子も取り入れていて、それがいいフックになっています。この曲なんかはちょっとRush的(Vapor TrailやTest For Echo期)というか。リフとボーカルが少しリズムをずらしながら絡み合っていく感じいが面白い曲です。
3.COMMUNIC / Hiding from the World
【ノルウェー】【00年代デビュー】【プログレ・パワーメタル】
今年一番の掘り出しバンド。ノルウェー凄いなと思いました。あんまり知名度ないというか、とっつきづらいバンドではあります。ジャケットとかルックスとか、イメージがかなり人を選ぶ(シンプルに言うとダサい...)感じ。しかし、音楽の質はめちゃ高いんですよ。先ほど紹介したSoilworkの長尺曲にも近いんですが、1曲1曲が長い、9分台の曲が3曲ありますし。曲の中でアグレッションから静謐なパートまで展開し、それを聞かせきる作曲・編曲・演奏能力があります。また、歌メロを作る力も高い。歌メロはけっこう正統派なんですよね。キングダイアモンド的だったり、初期レインボー的だったり。威風堂々としたクラシカルなメロディに暗黒的な感じが乗るというか。演奏力的には超絶技巧というわけではないし、ボーカルもそんなにハイパーではありませんが、しっかりアルバムを聞かせきる説得力はあります。あと、なんとスリーピースバンドなんですよね。これだけ音が厚いのに。本当にメタルが好きで好きで掘り下げているうちに凄いところにたどり着いてしまった、的なバンド。はっきり言ってセールス的には爆発的な評価はされないと思いますが、出会えた人にとっては素晴らしいアルバム。「北欧メタルを掘り下げる」という記事を4回に渡って書いたのですが、そのきっかけとなったアルバムです。
COMMUNICの紹介です。2020年10月29日に5thアルバム「Hiding From The World」がリリースされたばかりなのですが、これが素晴らしい出来。2003年結成、2005年デビューの中堅バンドですが、一般知名度で言えば「知る人ぞ知る」という立ち位置で日本ではあまり知名度が高くないと思います。北欧、ノルウェーらしい泣きメロと、「プログレ・メタル」に分類されていますが、どちらかといえばDream Theaterなどのテクニカルなメタルよりデンマークの大先輩であるMercyful Fate(King Diamond)の影響や、Raibowなどの様式美バンドからの影響を感じます。曲展開はあるもののテクニカルというよりは泣きのメロディー主体で物語が展開していく印象。
(中略)
この曲は何気に9分半あります。起伏、展開が激しいのであまり長く感じないというか、「気が付いたら他の曲になっていたような感覚」がありますが、これだけの長尺曲を聴かせるというのは大したもの。
もう1曲、アルバムの最後を飾る大曲を。力強く美しいメロディがどんどん盛り上がっていきます。5分ぐらい引っ張ってから疾走パートに入っていくという胸熱な展開。焦っていないというか、長尺曲でのドラマの作り方が堂に入っています。
2.Trivium / What The Dead Mens Say
【US】【00年代デビュー】【メタルコア・スラッシュメタル】
今年はメタルコア、ニューコアといったジャンルとされる新しめのバンドをいろいろと聴きました。Bring Me The HorizonやLamb of Godとか。その中で一番好きになったバンド。なんというか正統派らしさと新しさのバランスが良いというか。冒頭で紹介した曲なんかちょっとギターがメイデンっぽいし。Avenged SevenfoldもThe Stageでそういう欧州メタルへの接近を感じましたが、Triviumはアルバム全体での取り入れ方が上手く、曲も良い。北欧メロデスっぽさもあるし。USメタルシーンだけではなく、もっといろいろな国のメタルシーンの音像をうまく取り入れている感じがしますね。メインソングライターでギターボーカルのマット・ヒーフィーは母親が日本人の日系ハーフ(とはいえ日本に住んでいたのは生後1年だけのようですが)なので、もしかしたら日本の音楽なども聴いているのかもしれません。日本のラウドロック系と言われるバンド群もさまざまな要素のミクスチャー感が上手いですが、ちょっと通じるものがありますね。とはいえ中心にあるのがメロディ。ギターにせよボーカルにせよメロディアスです。Lamb Of Godはリズムやリフが中心に感じました。同時期に両方の新譜を聞いたので比較できて面白かったです。
USメタル新世代の雄、Trivium。メタル音楽のフォーマットは70年代のハードロックを経て80年代のN.W.O.B.H.M、80年代後半からのスラッシュメタル、インダストリアルメタル、プログレメタル、90年代のメロデス、メタルコア、グランジあたりで基本的なフォーマットは出そろい、あとは洗練させていく、極端にしていく、あるいは異質なものと組み合わせて拡張していく、といった段階に入ったと思っていますが、「洗練」で勝負している印象のあるバンドです。メインストリームで勝負できるポップさやアリーナロック的な印象的な歌メロもありつつ、アグレッションやメタルの語法を洗練させています。先日のLamb of Godにも近い方向性ですが、LoGはアグレッションに振り切っているのに対してこちらはメロディアスな側面もあります。どちらも方向性の違いはあれど過去のメタルのレガシーを活用しながら新しい地平を切り開こうとする意欲作です。
もう1曲、かなりメロディアスで北欧メロデス的な盛り上がりを見せる曲を(ボーカルはクリーン)。個人的ベストトラック。
1.Haken / Virus
【UK】【10年代デビュー】【プログレッシブ・メタル】
2007年結成、2010年デビューのHaken(ヘイケン)。新世代UKプログレメタルシーンの旗手であり今までに6枚のアルバムをリリースしています。この密度にしてはおそろしいリリーススピード。曲の風景が移り変わっていき、さまざまな場所に心が連れていかれます。初聴時はアルバム前半は比較的ゆるやかに「イマドキのプログレっぽいなぁ」と流していたのですがアルバム後半を飾る5つのパートに分かれた30分弱の大曲「Messaiah Complex」が刮目の出来。Dream TheaterのMetlopolis(Pt.1)並というか、音楽を聴いていてスリリングで手に汗を握る体験を久しぶりに味わいました。何度かアルバムを聴いているうちにアルバム全体を通して今年のベストはこれだな、と。Virusという2020年をある意味象徴するテーマなのも感慨深い。ちなみにBastards!誌に掲載されたインタビューによるとタイトルは2~3年前から決まっていたそうなので現在の世界情勢とは関係ないコンセプトだそうですが、まるで現状の暗喩のように思える部分も多い、とのこと。他、前作「Vector」とつながっていていろいろな暗喩にもなっているそう。この辺りの言葉遊びの高度さはさすが英国人。
コロナとは断然無関係だよ。タイトルを決めたのは2018年の初めだからね。そのころ2作のアルバムの構想を始めたんだ。タイトルは初めから決まっていた。"Virus"にした理由はいくつかあって――『Vector』との関係で言えば、ウイルスを媒介する生物のことを"Vector"と言うんだ。
(中略)
"Virus"にした理由はもうひとつあってね。『Vector』は"V"、『Virus』は"VI"で始まるだろ? つまり、ローマ数字で5作目と6作目のアルバムということなんだ。
もう1曲、こちらもMVがある曲を。「Messaiah Complex」は貼らないのでぜひご自分の環境でじっくり聞いてみてください。
以上、愛聴盤ベスト10でした。国別にみるとスウェーデン2.5、UK2、ドイツ1.5、デンマーク1、日本1、ノルウェー1、US1(Luciferはドイツとスウェーデンそれぞれ0.5でカウント)。北欧メタル(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク)で4.5とほぼ半分ですね。フィンランドはLordi、Ensiferum、Nightwish、Fintrollといい感じのアルバムは多かったもののベストには届かず。自分内北欧メタルブームの中、UKがしっかり1位と10位を抑えていくのはやはり英国は強いなと(自分で選んだんですが)思います。HM/HRで言えばUKって歴史もあるし、新しいものを生み出す力もある場所だと思います。そういう意味ではOzzyの新譜はまさにUKっぽかった。まぁ、世間的には今のUKと言えばBring Me The Horizonを筆頭とするメタルコア、ニューコアなのかもしれませんが、そこからは今のところ好みが外れています。
今年はいろいろな社会変動があり、音楽業界も苦難の時期が続いています。個人的な所感ですが、苦難の時って音楽の力が増す気がします。聴き手も感傷的になるし、作り手も自答自問する。「今、こういう状況の中で何をテーマにして曲を作るべきか」、もっと言えば「音楽に何ができるのか」。もちろん、プロというのはそうした重い問いに毎回答えを出しながら作品をリリースしているわけですが、特に音楽業界全体、社会全体が大きな危機の中に置かれると、より一層その意識が表層化してくる気がします。ライブ空間での身体的な共時性は減ったものの、時空を超えての共感や共鳴は増した一年だったのではないでしょうか。作り手も、そして聴き手も、音楽とよく向き合えた一年だったように思います。
それではみなさん良いミュージックライフを。