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Metallica With Michael Kamen Conducting The San Francisco Symphony Orchestra ‎/ S&M(1999)

サンフランシスコ交響楽団(S)とMetallica(M)のコラボ、S&M。アルバムクレジットはマイケル・ケイメン指揮サンフランシスコ交響楽団、と、指揮者の名前が入っています。マイケル・ケイメンは映画音楽やロック系のアーティストとコラボが多く、メタリカ以外にもエアロスミス、エリック・クラプトン、デヴィッド・ボウイ、ケイト・ブッシュ、布袋寅泰などとコラボしています。そうしたバックグランドも合ってオーケストラアレンジはこなれたものですが、このアルバムの緊迫感は凄い。メタリカはメタリカのままで、それにオーケストラが対峙してぶつかり合っているんですよね。正直、密度が濃くて聴き通すのはかなりの集中力が必要ですが、単曲で聴いてみるとどの曲も情報量、音の密度が桁違い。ふと考えてみるとナイトウィッシュとか、ああいう本格的なシンフォニックメタルって、もともとジャンルとしてはありましたがこのS&M以降、大きく進化した、本当のオーケストラとメタルのがっつりとした融合が進んだ気がします。これ、当時としては画期的な音像だった気がするんですよね。ロックとオーケストラの融合はそれこそ70年代から試みられてきましたが、メタルとオーケストラが正面からぶつかり合った作品でここまで情報量が濃密なアルバムって、この時点までなかった気がします。「Load」からスタートしたメタリカの音楽性の拡張は、「Load」「Reload」「Garage Inc.」を経てオーケストラとの共演、S&Mを迎える。音楽性そのものを拡張した90年代の総括として、過去作をオーケストラとぶつかり合って演奏することで曲そのものの可能性というか、メタリカの楽曲の構造の強固さを再確認する。振り返ってみるとそんな意味を持っていた気がします。これ、メタリカはメタリカのままなんですよね。本ライブ向けに作った新曲(8.No Leaf Cloverと15.- Human)はさておき、他の曲は従来のメタリカのライブのまま。そもそも完成された曲に、オーケストラがそのままプラスされている。それは音の密度も濃くなるし、情報量も多くなります。引き算でなく、足し算。リアルタイムで聴いた時は正直食傷気味というか、処理できる情報量を超えてしまってある程度似たような曲調にも聞こえてしまった。マイケルケイメンのアレンジも、なんというかオーケストラはオーケストラでメインリフがあり、ヴァースがあり、ソロというか間奏パートがあってきちんとメロディがあるんですよね。だから単純にもともとあったバンドのリフと新しく付け加えられたオーケストラのリフがぶつかり合う、音の余白がなくなる、多くの音程が埋まる、そのため各曲が似て聞こえる部分も出てきています。

ただ、今改めて聴いてみると、情報過多気味なのは変わりませんが、こうした「情報過多(足し算)なシンフォニックメタル」がその後発展していった契機とも思えます。やはり凄い迫力ですね。1990年代後半のメタリカは、自らの音楽性の拡張と音楽的冒険をものすごい勢いで行った、真にプログレッシブなバンドだったと言えます。そして、そうした広範なジャンルの曲を自分のものとして演奏できる力量を身に着けたのが凄い。1stの「どこか頼りなさげな若者たち」からは隔世の感があります。ロック・ミュージックの達人というか、匠の領域。それはいわゆる「テクニカル」な部分ではなく(プログレッシブメタルやジェント、テクニカルデスといったジャンルのバンドと比べると、メタリカのテクニックはそこまで特筆すべきものはありません。あえて言えばボーカルの歌唱力ぐらい)、もっと「音楽家」としての存在感というか、バンド全体の音の説得力、心地よさ、煽情性といったものです。

このアルバムで20世紀のメタリカは最後。音楽的拡張と冒険を続けた90年代が終わりを迎えます。次は21世紀のメタリカ、スタジオアルバム3作で演奏できる音楽性の版を大きく拡張し、S&Mでオーケストラ相手に堂々と渡り合うほど説得力を持ち、一度完成を迎えたかに見えたバンドサウンドにまた激震が走ります。

このライブでは「11.Bleeding Me」や「17.Outlaw Torn」といった「Load」からの長尺、ストーナー的な曲が新たな命を得たように思います、もともとある程度余白があったから、オーケストラが入ることで密度と迫力が増したのかも。「Outlaw Torn」をどうぞ。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

1999リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.The Ecstasy Of Gold 2:30
歓声と拍手がフェードイン
左右から包み込むようなオーケストラの音
流石に優雅な音世界、SEとは違う生々しさというか各パートの臨場感と表情の豊かさがある
バイオリン他、音が瑞々しい
映画音楽のよう、ドラマティックなスタート
そういえば映画音楽の表現は従来のクラシックよりダイナミックな気はする
煽情的なオープニング
★★★

2.The Call Of Ktulu 9:34
いきなり轟音ではなく、探るような、静かなアルペジオ
一度盛り上がったイントロを落ち着ける、オープニングの後、静かな物語の始まりというか
少し不穏なコード進行、そこに不安というか迷うような、夜の帳のようなオーケストラサウンドが乗る
アルペジオは左チャンネル、ジェイムスが左か
ベースとドラムが静かに入ってくる、だんだん音が動き出す
ギターはあまりザクザクとは刻まない、ドラムも重量は出てきたがゆったりとしたリズム
神経が研ぎ澄まされている
オーケストラは体温が上がる、アルペジオに合わせて弦楽器隊がメロディをなぞる
あれ、左がカークかな、ジェイムスの刻みはオーケストラに埋もれている?
ちょっとワウというか、音が揺れる感じがある
ベースとリフ、オーケストラが絡み合う、リフはオーケストラによって包括されている
前奏がかなり長め、あれ、これインストだったっけな
Ride The Lightning収録曲
やはり左がカークか、ワウのソロを弾き始めた、右はジェイムスのリフか
ドラムもベースもグルーヴを出しているが、音の渦に溶け込んでいる、オーケストラはまさに音の渦
混沌感はない、ノイズ要素は少ないが、一つ一つの楽器の音は分離しておらずある程度渦巻いている
情報量がとにかく多い、多重のメロディが絶え間なく表れて展開していく
まさにクトゥルーの呼び声というか
途中、リフにバンドとオーケストラが収束する
とはいえ突進感よりはだんだんと息を合わせていく感じ
ドラムはかなり落ち着いている、注意深いプレイ
魔法のような、ファンタジックなオーケストラ、ディズニーサウンドのような幻想的な響き
展開する、リズムブレイク、ユニゾンでオーケストラも一緒に溜める
跳ねるような、ビッグバンドジャズを拡張したような、メロディが凄いな
リズムの絡み合いよりはメロディの絡み合い、リズムは比較的ドラムのみが強調されている
各楽器のフレーズもリズムは違って噛み合っているのだろうが、残響音があってそれほどアタックがはっきりしないのと、メロディの方に耳が行く
うねるような、巨大な何かが現れた印象
最後、どんどん上昇していく
★★★★

3.Master Of Puppets 8:54
そこからリフへ、緊迫感のあるオーケストラの乱舞
これ、もともとのメタリカの曲に単純にオーケストラを加えたのかな
バンド側はやや音が控えめというか、単純にスピーカーの容量、録音量には上限があるからそれをオーケストラと分け合っている
刻みが出てきた、刻みのザクザク感はある、これはドラムとリズムが絡み合うな
メロディが乱舞する、独自のメロディラインをオーケストラは奏でる
戦闘シーンのような音像
自在に絡み合うオーケストラ、スリリング
バンドサウンドは有機的、オーケストラも次々と出てくる、ゴージャスな音像
音に緊迫感がある
メタリカの音も巨大だが、オーケストラの音も巨大
音量というわけではなく、音としての質量、情報量
リズムやメロディが多重に組み合わせていて一聴して分解しきれない
コードに対して展開するメロディ、単なる和音ではなくオーケストラもメロディを追加している
ギターメロディを補足するというか、ギターと向かい合うというか
同じメロディをなぞって強調するところと、違うメロディ、対になるような別アクセントのメロディを置くところと
それぞれ同じ程度の存在感でバンドサウンドとオーケストラが共存、競争している
ギターソロへ、ギターとオーケストラのバトル、フレーズを交互に弾く
これは圧倒的情報量、ただ、ポリリズム感は薄いな
すべてのリズムというか、余白が埋められた感じ
緩急やブレイクはあるのだけれど、基本どこを聴いても全情報量がマックスに振り切れている
改めて聴くと凄いな、ド派手というか
ただ、ちょっと聞き疲れるのも事実、かなり集中力がいる
間奏でいったんブレイク
★★★★

4.Of Wolf And Man 4:18
カウントからスタート、ひっかくようなリフ
ザクザクというより、荒々しさ、音の荒々しさが強調されたギターサウンド
最初のアタック音より、音色としてのゆがみ、力強さがギターサウンドからは強調される
アタックはオーケストラのアタック音が強い、入ってくるタイミングの力強さ
オーケストラの音と融合させるための音作りなのだろう
常にメロディとリズムが立ち上がり続ける
大枠はドラムのビートが全体を誘導している、これだ大量の情報をよく処理している
指揮者はどこに合わせているのだろうか
圧倒される音像
★★★★

5.The Thing That Should Not Be 7:26
オーケストラはサンフランシスコ交響楽団、ティルセンが振ったマーラーぐらいしか聞いたことがないが(あとS&Mシリーズ)
なんというかアメリカのオーケストラ、という印象
ハリウッド的というか、映画音楽のようにダイナミクスがある
やはり欧州、フランスとかオーストリアのオーケストラはまた違う音だし、日本のオーケストラも違う
ミドルテンポでじっくりと攻めてくる曲
曲の情感に対して、映画のBGMのような手法で増幅しているのか
音はけっこう細かい、BGMではなく音楽が主役だから、音数は多めでここぞというときには煽情的に盛り上げる
オーケストラの方もバンドサウンドの圧に対応するように音圧が上がるのだろう
バンドサウンドとオーケストラサウンドが対等に絡み合っている
迫力は増しているが、ギターリフの上でもメロディが乱舞するというか
どの曲も叙事詩のような、壮大でドラマチックな音像になっている
あれ、これその後のシンフォニックメタルに影響を与えているのかな、もしかして
メタリカってそもそもあまり不協和音感がない、ボーカルもグロールは使わないし、コードについても半音ずらしを多用したりはしない
それを愚直にシンフォニーで拡張、増幅すると美しさと勇壮さが強調される
前衛感、無調感はなく、調性された中で物語がしっかり展開していく
シンフォニックメタルというジャンルは昔からあったが、ある時期からどんどん大げさになっていったのはこの音像の影響もあるのかもしれない
★★★★

6.Fuel 4:35
Reloadからの、Metallicaとしてはちょっと毛色の変わった曲
70年代ロック的というか
この曲はもともと余白が結構あったのでオーケストラが入ることでだいぶ印象が変わる
ちょっとオーケストラのメロディは迷いも見られるな、アレンジが踊っている
これはもともと物語性がある長大な曲というよりは勢い重視、フックのある(メタリカにしては)シンプルなノリの曲だからな
オーケストラでいろいろな情報を拡大する、メロディを拡張するとその部分は純粋な増築
あまりバンドとオーケストラがかみ合っていない、もともと噛み合うような複雑なつくり、引っ掛かりが少ないのだろう
無理やり激突する感じがあって面白くもあるが
★★★☆

7.The Memory Remains 4:42
これもReloadだっけ、Loadの方だったかな
ちょっとゴシックな曲、ホラー映画的にいくのかな
とはいえ和音をじっくり鳴らすのではなくけっこうオーケストラが攻めてくる
弦楽器隊お音がどんどん狼煙を上げる、次々とメロディを足してくる
大本のコード進行に対して、オーケストラはオーケストラで独自のメロディを足しているような
マリアンヌフェイスフルのスキャット部分をオーケストラが奏でる、ここはしっくりくる
この曲はこういう優雅な感じ、そんなに細かく音を足さなくてもいいような気がするなぁ
一つ一つのリズムブレイクやメロディ起伏をオーケストラが増幅する
リフの部分はオーケストラも独自のリフを作っている
けっこう曲の一部というか、別の主題、モチーフをオーケストラが足しているな
スキャット部分を観客のコーラスとオーケストラのみで構成、これはこのライブならではの新しい光景
少しオーケストラのアレンジが変わる、何か光の方に向かうような、キラキラした音像
音のジェットコースターだな
★★★☆

8.No Leaf Clover 5:43
前の曲からシームレスに続く、オーケストラだけで再び進み始める
スターウォーズの砂の惑星の音楽のような、やや幽玄な響きに
ギターリフが入ってくる、バンドが入ってくる、曲がスタートする
映画的だなぁ、ナイトウィッシュとかも連想する
この曲は映像的、むしろオーケストラが主体でそこにバンドサウンドが乗っている
オーケストラバックのボーカル曲で、ダイナミズムの拡張としてバンドがある感じ
これはオーケストラに合う曲、というか、オーケストラバックの曲って50年代ポップスとかにはけっこうあったわけで
そういう管弦楽をバックに歌い上げる曲、という趣がある、シナトラとか
オーケストラはけっこう雄大でじっくりとしたフレーズを奏でる
途中、バンドサウンドが前面に出てくる、岩や山のような音
バンドサウンドの基本はReloadの時から連続しているな、ちょっとストーナーというか、一体となった塊感がちょっとある
背景の山が動く、変化する様な
そこにオーケストラが加わることで空や木々、細かい情報が山に書き加えられている
それらが一斉に蠢く感じ、細かく書かれた絵全体が大きく動き回る
その中で人(ボーカル)が物語、道のりを歩いていく
★★★★☆

9.Hero Of The Day 4:44
やや明るめに展開するコード進行、アルペジオ
オーケストラの音も微かに入る、どこかのパートの独奏か、バイオリンかな
歌モノの始まり方、夜明けのような
ヴァーブのビタースウィートシンフォニーのような、、、いや、ああいうサイケさはないか
ただ、歌メロはブリットポップっぽさもある、アメリカンなカントリーの色もあるのだけれど
今までの音圧から解放され、明るく開放的な音像が続く
途中からドラムが駆けだす、馬駆けというか、ウェスタンなリズム
メロディアスなコード展開、ブリットポップというより青春ポップというべきか
明るい音像、HUMあたりにもこういう感覚があったかも
バンドは音の塊感が増してくる、けっこうツーバスを踏んでいるし
オーケストラも明るい音像ながら音圧が増してくる、やや緊迫感が増す
クライマックスを迎えてボーカルが下降し、オーケストラが着地する
良いアクセント
★★★☆

10.Devil's Dance 5:26
ヘヴィなリフ、ギターとオーケストラのユニゾン
オーケストラがメロディを奏で始める、少しづつ鎌首を上げる
いきなり展開しない、ギターも少しリフが崩れメロディが入る
オーケストラが展開する、オーケストラ側のリフを奏で始める
リフというか、第一の主題というべきか
そのままボーカルヴァースへ、ボーカルに対応するようにオーケストラが主題を奏でる
ミソラドラソ、レミラソとか
うーん、そういえばこれ初回聴いた時(リリース当時)も思ったんだけれど、オーケストラの使う音がペンタトニックなんだよなぁ
ドレミソラが多用される、だから、メロディが似て聞こえる
オーケストラ側もけっこうメロディを足しているのだけれど、それが似ているというか
もうちょっと和音そのものにテンションをかけるような、不協和音的な部分も曲によってはあっても良かったんじゃないだろうか
まぁ、当時は途中で注意力が切れたので、改めて全体を聴き通してみよう、後半出てくるかも
前曲(9)は少し雰囲気が違ったし
この曲も、コーラスの前あたりはけっこうオーケストラが荒れ狂ってるな、ここは攻めている
こういう「分かりやすいメロディ」ではなく乱舞する様な音が入るのは良い
★★★★

11.Bleeding Me 9:01
これはLoadの曲だな、ストーナー的メタリカが最初に明確に表れた曲のひとつだと思っている
最初はサイケというか、幽玄な響き、靄や霞がかかったシーンのBGMのような、事件前の回想的な
沼地、手探りで進む、ボーカルが入ってくる、ベースが蠢き、ギターはくぐもった音でアルペジオ
クリアな音でオケが入る、バイオリンが揺蕩う、雲か霞のように
ボーカルがその音の中を分け入っていく
ドラムは土台を支えている、地面というか
これ、ドラムがなかったら宙に浮かんでいるような曲だな、浮遊感があるアレンジ
ボーカルがだんだん昇り詰めていく、少し雲や霞から頭を出す
また沈み込む、オーケストラの霞が濃くなる
ワウギターが漂う、これはサイケでストーナー、オーケストラが入ったことでその要素が強化されている
ドラムの手数が増える、霧に包まれた中でボーカルと共にテンションが上がる
ただ、そこで途絶える、霞のようなオーケストラの音だけが残る、ボーカルが呼びかけるように木霊する
ギターのリフが戻ってくる、リズムを刻みだす、オーケストラ側のバスが呼応する
ドラムが戻ってくる、再び歩き出す、霞のように包み込む弦楽器隊は変わらず
その中をボーカルとドラムが進んでいく、霞も姿を変える、全体が少しづつ揺らいでいる
ワウギター、音の渦の中から、だんだんと霞が晴れていく、薄くなる、バンドサウンドが姿を現す
間奏部分が終わるとまた霞のような弦楽器が包み込む、観客を煽るコールが入る
ふたたび音が遠ざかっていく、霞に包まれる、弦楽器の靄の中をボーカルが歩く、冒頭と同じ低音のボーカルヴァース
これはドラマチック、うまく音としてのオーケストラを使ってドラマを描いている
ここでCD1が終わり、かな、フェードアウト
★★★★☆

12.Nothing Else Matters 6:47
フェードイン、ここからCDだと2枚目か
ギターのアルペジオ、それに合わせるように少し立ち上るオーケストラ、幽玄な響きを足している
音は足されているが静けさの演出が増したように感じる
これから何かが始まるような、あるいは登るべき高い山を見上げるような
ボーカルが入ってくる、平常、平静の声、語り口調に近い音域
ギターアルペジオ以外はオーケストラの音のみ、バラード感
ハープの音、ファンタジック
ドラムが入ってくる、ゆったりとしたリズム、だんだん一音の重みが増してくる
少し音圧が上がったところでギターのメロディ、もともとハープのような音
ギリシア的な、地中海的な音、神殿を想起する
ボーカルが戻ってくる、だんだんと声が変わっていく、朗々と歌いだす
喉を閉じたり開いたり、声色が変わる
全体として音はややかすんでいる、ろうそくの灯のような、揺らめく感じ
ギターサウンドは塊感、埋もれる、一体となる感じ
オーケストラも細かいメロディ、明確な主題というよりはそうした全体の雰囲気の醸成に力を入れている
瞑想するような
★★★☆

13.Until It Sleeps 4:29
ちょっと雰囲気が変わる、最初からバンドのサウンドに対して違う要素をオーケストラが足している
和音を拡張している、これはGhost的なホラーさがある曲だったが、オーケストラに合う
オーケストラポップスというか、ダークなかんじがするがもともと歌メロ、メロディが強い
それをうまくオーケストラが強調している、ホラー映画的な
歌メロが入った後はオケはバンドサウンドに溶け込んでいる
一体となってゴシックさが強調されているが、途中はユニゾンなのかな
情報量が多すぎて音圧がオミットされている、記録媒体(CDなのか卓なのか)の録音容量の限界でコンプレッサーがかかっている
これは惜しい、もうちょっと引くところは引いてもいいのに
中盤はちょっとバンドサウンドが大きくてオケが埋もれている、後半はオケが出てくる
これはもっとオケとボーカルでやった方が曲のあたらしい魅力が出ただろうに
★★★

14.For Whom The Bell Tolls 4:52
印象的なリフだが、オーケストラが分厚く鳴り響く
もともと「何かが始まる」感じの、緊迫感を煽るサイレン的なリフだから、オケの緊迫感ある和音はその効果を活かしている
刻みに入る、オケが違う音域で同じリズムでフレーズを奏でる
おお、この曲はギターリフとオーケストラリフが絡み合って、ツインリードのようになっている
前奏がかなり引っ張るが面白い、バンドとオーケストラが対峙する
2分ほどしてボーカルが入る、ボーカルが入るとバンドサウンドに
サビ、ギターのフレーズとオーケストラのフレーズがユニゾンし、オーケストラが分割されて方や和音を埋める
ギターフレーズとオーケストラが絡み合う、後を追う、ハーモニーを奏でる
これは第三、第四のギターといった形でオーケストラ、弦楽器隊が絡み合っている、面白い
ちょっと録音状況が悪い? 声が少し籠っているように聞こえる
前曲もそうだが、少しミックスが微妙、後半になるにつれて各楽器が音量を上げていった結果だろうか(ライブだとだいたいだんだんと音量を上げる)
うーん、ただ、録音するときに別ミックスするだろうけれどなぁ
★★★★

15.- Human 4:19
これは新曲かな
ヘヴィなリフ、ギターのリフに対してオーケストラが絡んでくるが別のメロディを入れてくる
引きずるようなリフ、ブラスかな、ホルンかな、低い音の管楽器らしき音も
弦楽器が高音を加える、これは音の渦が統制が取れている
おお、これはオーケストラも曲の一部になっている、溶け込んでいる
リフの一部というか、ギターが展開しない部分でオーケストラが展開するとか、互いの余白があって絡み合う
きちんとオーケストラのフレーズもボーカルに対して対峙する
オーケストラ用に作った曲だとやはり違うのか、これ、このライブ用の曲だよね? 違うのかな
他に比べてオーケストラの融合というか、噛み合い方が強い、曲の不可欠なパートとしてオーケストラサウンドがあるように感じる
★★★★

16.Wherever I May Roam 7:01
アラビックなギターフレーズ、それを強調する様なオーケストラフレーズ
これは違う音階で面白い、オーケストラによって違う雰囲気が出ている
リフが入るとバンドサウンドが前面に出てくる、ギターリフとユニゾンするオーケストラ
曲の骨子であるギターリフを修飾する役割になる、うーん、ひとつ前のようにギターリフとオーケストラリフが絡み合うおは面白かったなぁ
お、ブリッジ部分、バンドがやっていた部分がけっこうオケに置き換わっている
これは面白い聴覚、オーケストラが前面に出てくる、バンドも鳴っているが背景になる
途中からオーケストラが前面に出てくるな、爆撃のような、戦場のような響き、いくつかメロディが立ち上がる
これもギターとオーケストラが絡み合う、面白い、絡み合うメロディ
ミックスが良くなっている
オーケストラはけっこう暴れている、ギターのリフよりオーケストラが前に出てくるな
カークのソロに負けずフレーズを弾く
これはなかなか、融合度が高い
★★★★

17.Outlaw Torn 9:58
リフ、ワウが効いたギターサウンド
だいぶ後ろノリ、だんだん速度が遅くなるような錯覚を覚える
オーケストラが入ってくる、オケはもう少し前ノリというか、タイトなリズムで入ってくる
オーケストラの方がリズムに対してはタイト、オンタイム
オーケストラとベースとドラム
歌が入ってくる、ベースの存在感が強い、ギターがない
ギターが入ってきてまた去る、音の隙間が多い
これはオーケストラの解像度が上がる、バンドサウンドの引き算、そこをオーケストラが埋めている
コーラスに近づきギターが戻ってくる、オーケストラがフレーズを足す
うねるようなベース、ベースのリズムは一定ながらグルーヴ感は増している
不思議な響き、これもストーナー的、ただ、オーケストラは非常に壮大というか音がどんどん立ち上がっていく
高音に向かって上昇していく、ボーカルがやまびこのような、荒野に響くような声に
リバーブがかかる、けっこうボーカルの高音が続く
またベースとドラム、オーケストラ、ギターがかすかにフレーズを弾く
そのフレーズにオーケストラが絡んでくる、ところどころ大陸的なフレーズ、中華的というか
オーケストラで弾くとそう聞こえる
カークのギターソロ、猛烈にワウを利かせている、空から星が落ちるような音、花火の落下音のような
一通り燃え尽きてボーカルに戻る、バンドサウンドとオーケストラサウンドが混然一体となって揺らぎ、さざめく
こういうストーナー的な曲はオーケストラサウンドに合う
★★★★☆

18.Sad But True 5:46
最初、オープニングでさまざまなメロディが渦を巻く
いったんブレイクして、再びヘヴィなパートへ、ギターリフとオーケストラが絡み合う
オーケストラが上昇していく、下降してきてボーカルに繋がる
ギターが前面に出てくる、バンドサウンドの存在感が強い
煌めくような、夢見るような、高音で煌めくオーロラのようなオーケストラ
今度は上昇したままボーカルへつながる
ふたたび低音から上昇していく、ブリッジへ、高音で展開するオーケストラ
その下でバンドサウンドが展開する、上空から降下と上昇を繰り返すオーケストラ
音が絡み合い再びブレイク、また曲が再開する
ギターソロ、高音のオーケストラ、中音域も音を足している
バンドサウンドが大きいがオーケストラも音圧を上げて張り合っている
これは情報量が録音では収まりきっていない、溢れている
混然一体となって曲が進んでいく、ところどころ中華的に聞こえる場面があるんだよなぁ、オーケストラのフレーズが
ラドラソ、みたいなフレーズの時にバイオリンが胡弓に聞こえる
★★★★

19.One 7:53
SE、戦場の音、銃声、ヘリコプター
オーケストラが立ち上がる、音が入ってくる、ドキュメンタリーの追憶というか
どこか哀切な響き
アルペジオが入ってくる、オーケストラが違うリズム、違った感じのメロディから融和していく、これは上手い
ベースはアタック音がほぼない、メタルジャスティスの曲をやるときは存在感を消すというルールでもあるのか
低音はしっかり埋めているのだけれど
これはドラムとボーカル、ギターだけでだいたいの空間の骨格は決まっている
その余白をオーケストラが埋めている、廃墟を舞い踊る亡霊のように
ただ、アトモスフィア、雰囲気の増加には役立っているが曲構成そのものに影響は与えていない
普通に盛り上がってはいるが、そもそもちょっとオーケストラっぽいキーボード入っていたっけなこの曲
ギターフレーズに対して少しハーモニーを足す
オーケストラが主題を奏で始めた、間奏部がオーケストラの演奏でメロディが展開していく
ちょっと展開する小節をずらして、別の展開へ、次のボーカルパートへ、連打するドラム
鳴り響くオーケストラ、音程移動が激しくなる、音が上下に乱舞する
なんだかやけくそぎみだがこれは勢いがある、自然とテンションがあがる
バスドラ疾走、全力連打のような、オーケストラの疾走を経て再び間奏へ
いつのまにかベースがブリブリ来ている、ツインリード、音空間に伸びるオーケストラの力強い和音
いくつも分岐して弦楽器隊の音が伸びていく
駆け抜けて終曲
★★★★★

20.Enter Sandman 7:39
弦楽器の幽玄な響きと共にアルペジオリフへ
ギターメロディ、ドラム連打、ホラー映画的なフレーズを弦楽器が足している
これは曲のオープニングのイメージはだいぶ違う、オーケストラのリフが強い
オーケストラのリフともともとのバンドのリフが絡み合う、歌が入る、歌の合間をオーケストラが埋める
かなり手数が多い、オーケストラもテンション上がるんだな
次々と立ち上がるオーケストラの音、そこにカークのソロが混じってくる
ボーカルのハーモニー、一つ一つの音に生命力がある
ワウペダル、オケのエネルギーが強い、オケの熱量にバンドも背中を押される
コーラス終わり、不穏な和音をオーケストラが残す、そのまま音が静まっていき、次の展開
オーケストラが表情を変える、細かく刻まれる弦楽器、震えるようにして無音に
ギターリフが戻ってくる、緊迫感を足す弦楽器のフレーズ、これは曲の和音構造自体をオーケストラが加え、変えている
そのままリフを重ねてフィナーレへ、音の渦から一瞬整理されて終曲、メタリカらしい終わり方
★★★★☆

21.Battery 7:24
オーケストラがリフを奏でる、バンドサウンドのリフをそのままオーケストラが再構築する
オーケストラの前奏の後、ギターリフが入ってくる
バンドが疾走する、タイトな演奏
ギターは刻み感に加えて塊感があるベースも一体感がある
オーケストラはバンドサウンドに高音、上部を修飾する
高速で移動するパッセージ、バンドサウンドは強固な一つの塊で、その緩急をオーケストラが強調する、飛び出た部分がオーケストラになるというか
噛み合うというよりはコアのエンジンとしてバンドが合って、上物をオーケストラが載せている
この曲はあまりオーケストラが入り込む余地がないのだろう、付け加えるだけになっている印象
ダイナミズムを足しているし、これだけ高速でしっかりタイトに合わせているのは凄いが
これだけの音の情報量を統制して、駆け抜けるというのは凄まじい
ブレイクからフィナーレへ、上昇音が入る、そのまま終曲
★★★★

総合評価
★★★★
凄い試み、録音には収まり切れない情報量を感じる、実際に生で見たら凄まじい迫力だっただろう
ある時期からシンフォニックメタルが急激に進化したように感じていたのだが、考えてみるとこのアルバムがきっかけだったのかも
ここで提示されたサウンドが一つのベンチマークになった気がする
あとは、Load、Reloadに入っていたストーナー系の曲、11,17辺りは完成度が増していた
オーケストラのアレンジとしてはいろいろなパターンが考えられていて、独自の主題を足すパターン / 第三・第四のギターとしてハーモニーを足すパターン / 違う音を加えて和音やコード進行自体を展開させるパターン / バンドサウンドだったところをオーケストラにお聞けているパターン、があった
新曲としての8と15はさすがに完成度が高い、8は名曲
オーケストラも曲の一部、骨格を形成しているので絡み合いの精度が高い
最初からオーケストラと一緒にアルバムを作ったらどうなるのだろう、という期待感も抱かせる
バンドサウンドはガレージインクで見られたザクザクした刻みのある音ではなく、Reloadの延長上にある
全体としては塊感がある音作りというか、背景的な音、刻みのザクザク感よりギターをかき鳴らす轟音感がある
ただ、各楽器の分離は良い、オーケストラも一つ一つのパートが分かる
演奏の精度、音の精度は高い、これをライブでやったというのは恐ろしい
ロック音楽を本格的に拡張したのは、ビートルズ、ツェッペリン、メタリカなんじゃないか
進化させた、サブジャンルを作ったアーティストはあるが、音楽ジャンルそのものを総括して拡張したのはこの3バンドなんじゃないか、ということもふと思った

ヒアリング環境
朝・家・ヘッドホン

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