8.アジア系(韓国)アメリカ人二世から見たアメリカ:St. Lenox / Korea
St. Lenoxは韓国系アメリカ人のAndrew Nathaniel Choi(アンドリュー・チェ)のソロプロジェクト。先日アルバムを聴いたらあまりに素晴らしくて1曲訳してみることにしました。2016年のアルバム、「Ten Hymns From My American Gothic(私のアメリカンゴシックからの10の賛美歌)」からのナンバー「Korea」。
St. Lenox / Korea
[Verse 1]
Stories told in photos and words, is a little bit mad of postum
And distance walked to the ocean tides is a long trip coast to coastal
And curio cabinets filled with wood and porcelain dolls from the homeland
Cause travel can tug at the heart and soul from the last of the last Mohicans
写真や言葉で語られる物語は、ポストゥム※1に少し怒ってる
(韓国の)浜辺から(アメリカの)浜辺まで、海の潮は長い旅をしてきた
祖国からの木と磁器の人形で満たされた骨董品のキャビネット
旅は(滅びゆく)モヒカン族の最期から心と魂を引き離す
[Chorus]
And have you ever been to my native home? It's a place they call Korea
And if you ever on a trip again, I suggest you see my home
And have you ever been to the place I'm from? I'm a native son, Korea
And if you ever on a trip again, I suggest you miss my home
君は僕の故郷に行ったことがある? 韓国と呼ばれる場所さ
もし君がまた旅に出るなら、僕の故郷を勧めるよ
君は僕の出身地に行ったことがある? 僕は韓国の生まれだ
もし君がまた旅に出るなら、僕の故郷を勧めるよ
[Verse 2]
And people will greet with a smile and nod, to anyone close to closer
But it's guns are ready to stun and blaze at anyone north of the border
And people say that the kingdom come will send you higher and higher
But the Mongol blood in the heart and veins is an animal deep inside her
人々は笑顔と会釈で、ご近所ならみんなに挨拶する
だけれど銃で国境の北のみんなを打ち負かす準備をしている
(統一された)王国が来ればより高いところに行けると人々は言う
けれど彼女の奥深くに流れるモンゴルの血は動物だ
[Chorus]
And have you ever been to my native home? It's a place they call Korea
And if you ever go on a trip again, I suggest you see my home
And have you ever been to the place I'm from? I'm a native son, Korea
And if you ever miss a place again, I suggest you miss my home
君は僕の故郷に行ったことがある? 韓国と呼ばれる場所さ
もし君がまた旅に出るなら、僕の故郷を勧めるよ
君は僕の出身地に行ったことがある? 僕は韓国の生まれだ
もしいつか君が故郷が欲しくなったら、僕の故郷を勧めるよ
[Verse 3]
And silk and blue is a cool new look for a hipster dressed up pretty
And soul is a song with a certain groove, and an Eastern name for a city
And elder statesman camera man is salt of the earth descended
And a tell tale sign of a tiger mom is a permanent scar remembered
青い絹の服がヒップスターの新しい流行さ
”ソウル”はグルーヴィーな歌のことで、東の都市の名前でもある
大物政治家やカメラマンは善き人々(地の塩)の血を引いている
忘れられない永遠の傷を残した教育ママの話をしよう
[Chorus]
And have you ever been to my native home? It's a place they call Korea
And if you ever go on a trip again, I suggest you see my home
And have you ever been to the place I'm from? I'm a native son, Korea
And if you ever go on a trip again, I suggest you see my home
君は僕の故郷に行ったことがある? 韓国と呼ばれる場所さ
もし君がまた旅に出るなら、僕の故郷を勧めるよ
君は僕の出身地に行ったことがある? 僕は韓国の生まれだ
もし君がまた旅に出るなら、僕の故郷を勧めるよ
[Verse 4]
And an origin story is a very nice thing, when you never know where you come from
Cause a picture viewed from a point afar is a little bit made of postum
And an origin story is a very nice thing, when you never know where you come from
Cause a picture viewed from a point afar is a very bad way to remember
君がどこから来たか分からない時、ルーツの話はとてもいいことさ
遠くから見た写真は、少しポストゥム※1でできているから
君がどこから来たか分からない時、起源の話はとてもいいことさ
遠くから見た写真を覚えるのはとても悪いことだから
[Chorus]
And have you ever been to my native home? It's a place they call Korea
And if you ever go on a trip again, I suggest you see my home
And have you ever been to the place I'm from? I'm a native son, Korea
And if you ever miss a place again, I suggest you miss my home
君は僕の故郷に行ったことがある? 韓国と呼ばれる場所さ
もし君がまた旅に出るなら、僕の故郷を勧めるよ
君は僕の出身地に行ったことがある? 僕は韓国の生まれだ
もしいつか君が故郷が欲しくなったら、僕の故郷を勧めるよ
※1 Postumはカフェインレスの代替コーヒー、ここでは「肝心なものが抜けた偽物」といった意味で使われている。
解説
かなり言い回しが独特かつ多義的で難しい歌詞。けっこう意訳しました。韓国の歴史やイメージを話しながら「あなたは実際に行ったことがある?」と問いかける。イメージだけでなく本当に触れてほしい。ステレオタイプな韓国のイメージはPostum(偽のコーヒー)のようなもので、実際に行って本当の韓国を知ってほしい。また、ルーツがあるということは素晴らしいことなんだよ、という誇りも感じます。
チェは移民ですが、ジュリアード音楽院を出てニューヨーク大学法学部を卒業し、現在は大手弁護士事務所(Holland & Knight LLP)に勤務する弁護士。自分の人生を物語るスタイルなのでMVで実家の様子なども出てきますがそれほど裕福には見えないので、努力して米国社会の中でステップアップしてきたのでしょう。実家の様子が分かるMV「People From Other Culture」。出演しているのは実際のご家族の様子。
その彼の視点から見たアメリカ社会、自分自身などを歌にし、サーグッド・マーシャル(Thurgood Marshall, 1908年7月2日 - 1993年1月24日:はアメリカ合衆国の法律家で、アフリカ系アメリカ人として初めて合衆国最高裁判所判事になった人物)のことと自分のロースクール時代のことを歌にしたThurgood Marshallという曲もあります。図書館の中を映しますが、これはニューヨーク大学の図書館なのでしょうか。
黒人でも白人でもないソウル。本来、ロックは人種混交していたんですよね。黒人音楽を白人が演じる、という。それがいつの間にかまたロックとヒップホップで聴衆が分かれている。アメリカ音楽は混合と分断の歴史です。そうしたものを軽やかに飛び越えるのはやはりこうしたアマチュア精神なのでしょう。音楽の分類はマーケティングセグメントでもあるから、弁護士が好きでやっている音楽活動には影響を与えない。とはいえジュリアードを出ているぐらいでクオリティはプロフェッショナル。結果として、これぞオルタナティブでインディペンデントな音楽だと思います。