Jorja Smith / Be Right Back
Jorja Smith(ジョルジャ・スミス)は1997年生まれで2016年デビュー。父はネオ・ソウルグループ 2nd Naichaのリード・シンガーです。2018年のサマソニに出演し、2021年のグラストンベリーにも出場したUKシーン注目のアーティストです。
1.Addicted 3:24 ★★★★☆
浮遊するような音、鼓動のようなリズム、ボーカルが入ってくる。メロディアスでどこか内省的、つぶやくような。追憶の音像。だんだんと音数が増えてくる。ボーカルは伸びやかだがやや抑えめ。少しづつ体温が上がってくる。言葉数も増えて、音運びが滑らかになっていく。ボーカルフレーズも伸びていく。引っかかりのあるギターの音。壁の落書きのような。ストリートの質感、街中を歩きながら回想するような。都市と個人の記憶。ボーカルがだんだん芯が太くなってくる。力強さはあるが力む感じはない。
2.Gone 3:15 ★★★★
ブレイクビート。オルゴールのような、浮かんでは消えるキーボードの音。やや粘り気のあるボーカルが入ってくる。立ち上るボーカル。ヒップホップと語りの中間のような言葉数の多いヴァース。メロディは力強い。ボーカルはナチュラルで滑らかに流れていくが迫力もある。表現力が多彩。光が差し込むようなコーラス。音像がやや荘厳に変わっていく。弦楽器が入ってくる。夢見るような、けれど意志の強さも感じる曲。
3.Bussdown 3:21 ★★★☆
レゲエ調、少し籠ったようなリズム、吸い込まれるような。リバーブが効いたコーラス。ボーカルはくっきりしている。ややサイケで揺れるような感触もあるがそこまで酩酊感は無い。ラップが入ってくる、ゲストのようだ。レゲエ調のまま、ゆられるようなリズムが続く。
4.Time 1:54 ★★★
リバーブの効いたアコースティックギターのカッティング、歌が入る。空間を埋める、語りと歌が一体化したようなボーカル。言葉数は多く歌が紡がれていく。少しづつ音数が増えていき、ミニマムなバンド編成に。シンプルなドラム、ベース、キーボード、終曲し会話へ。ジャムセッション的な小曲。
5.Home 2:46 ★★★
エレキギターのカッティング、ややレゲエ調のリラックスしたリズム、ギターの音に合わせてボーカルが入る。ほぼエレキギター弾き語り。
6.Burn 3:34 ★★★☆
ややジャジーな空気、抑えめのドラム。抑えめのボーカル。語るような歌、言葉数は多めで極端な音高移動はないがしっかりメロディがつながっていく。肩の力が抜けた、自然体のメロディ。ボーカルが主役で楽器隊はバッキングに徹している。少しホワイトノイズが乗っていて、50年代、60年代の空気感を足している。
7.Digging 3:04 ★★★☆
雰囲気が変わり、プリミティブでパーカッシブなリズムパターン、リズムの中でボーカルが展開していく。生命力を感じる、ライオンキングの劇中歌のような音像。ただ、メロディセンスや歌い方はそこまで変わらず。コーラスが多めになり、ボーカルと絡み合う。
8.Weekend 4:17 ★★★★
夢見るようなボーカル、途中からリズムが入ってくる、BjorkのHyperballadをちょっと連想する。その後は加速していくわけではなくリズムは出たり消えたりしながら、やや幽玄な雰囲気を保ちながら曲が展開していく。少し細かい拍を刻み始める。落ち着いた雰囲気ながらリズム感は強い。
総合評価 ★★★☆
落ち着いて聞けるアルバム。ボーカルの表現力が高く、アレンジも陳腐さがない。しっかりと地に足がついている。個人的には洗練されすぎているというかもう少し破綻ギリギリのスリルがあった方が好み。ただ、「音楽だけを集中して聞く」というリスニングではなく、何かをしながら、や、ドラマのBGM、街歩きのBGMにはよさそう。情景的な音楽で、極端に突出してこない。