Lizzy McAlpine / When The World Stopped Moving: The Live EP
Lizzy McAlpine(リジー・マカルパイン)は1999年生まれののアメリカ、フィラデルフィアのシンガーソングライターです。2019年にEPでデビュー、2020年に1stアルバムをリリースし、こちらは2021年リリースのEP。ライブEPと名付けられているのでライブ録音でしょう、Tiktokでライブ配信しているようなのでその時の音源なのかも。
1.In Agreement 03:47 ★★★★
静かなアルペジオ、弦を引きずる音、語るようなボーカル。弾き語りによるライブEPなのだろうか、音世界がしっかりとある。アルペジオの手数は多めでしっかりと音の渦がある。ボーカルは力むことなく、口ずさむように、過度な感情表現はないがさえずるような、歯切れのよい歌。メロディ展開が美しく、フックがある。
2.Let Light Be Light 03:00 ★★★
コードをくるくる回すようなカッティング、その上にのる軽やかなボーカル。プライベートな空間、雰囲気。声とギターだけで作られる小宇宙。メロディの起伏が激しいが感情は一定の範囲に収まっている。瑞々しくも寂しげな情感。
3....What Are We? 03:38 ★★★☆
アルペジオとボーカル、少しノーラ・ジョーンズを彷彿させる。自然体で安定したボーカル。天才ジェイコブ・コリアーともコラボしているようで、なるほどそういう人脈というかコミュニティがあるんだな。フォーク・ロックとジャズやR&Bを組み合わせた音像。フィオナ・アップルやアリス・フィービー・ルーあたりも想起する。レジーナ・スペクターやフェイストとはちょっと質感、リズム感が違う。ジャジーで流れていくような感じ。
4.I Don't Know You At All 04:31 ★★★★
いいフレーズ、「私はあなたの電話番号を知らない」。歌詞が入ってくる。心情がしみてくる。美しい曲。「あなた」の知らないところを列挙していく。夢見るような、片思いの恋の歌だろうか。
5.Angelina 03:45 ★★★
つま弾くような、ジャジーなコード、ブルース的なバック。コード進行はポップスかややボサノバ。お、トランペットかな、管楽器が入ってきた、これはゲストだな。
6.When The World Stopped Moving 03:14 ★★★
つぶやくような、つま弾くようなギター。目を閉じてただ身をゆだねると心地よい。なんとなくアメリカの風景、郊外の風景が浮かぶのはジャケットの写真からの連想だろうか。シンプルな構成、シンプルな録音だけに目の前で弾いているかのようなライブ感がある。
7.Stupid 03:42 ★★★☆
上昇するコード、アルペジオ。天空から下降してくるボーカル、上昇と下降が絡み合い、そして同じ方向を向いて進んでいく。本当に歌に安定感があるなぁ。ギターも歌も「完全無欠」というわけではないのだが、ミスがないというか気にならない、リズムが走ったり、音がかすれたりするところもあるのだが、自然に音楽が流れていく。声もリバーブが少なく、ルームリバーブぐらいで生々しい。
8.In What World 03:24 ★★★
ここでピアノが出てくる、ピアノは少しセピアがかった、アップライトピアノかな、やや煙った音。ペダルを踏む音も聞こえる。ただ、息遣いや衣擦れなどの音はかすかに聞こえる程度で環境音はコントロールされている印象。精緻にマイクコントロールされている。音で空間を埋めていく、掘り出していく。時間を音楽で紡いでいく。
総合評価 ★★★☆
ほぼ完全に弾き語り(5のみ管楽器のソロが入る)。7曲はギター、1曲はピアノ。時間もちょうど29分。約30分の小規模なライブハウスでのライブ、あるいはホームパーティーでのライブというか、そうした親密な音楽空間を楽しめる。音場が統一されているので「場」を作れるアルバム。一度その場に入ってしまえば心地よい時間を過ごすことができる。