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2022 ベストメタル/ハードコア(一部プログレ)系アルバム 4月-5月
よーし、メタルについて書くぞー!
年末にまとめてベストアルバムを選ぶより聴いた時点で書き続けていこう、と思ってベストアルバムの記事を書き始め随時更新していたのですが、既にかなりの分量になってきて「こりゃあかん」と記事を分けます。重すぎると読み込めなくなるんですよね。
この記事は4月~5月あたりで耳を惹かれたアルバムの紹介。流すと「空気感が変わる」「独特の時間を過ごせる」ものを選んだつもりです。気に入る音世界があれば良いなと思います。
あまねく音楽ファン向け(と僕が思うもの)
Rammstein / Zeit
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ドイツのテクノとメタルを融合したラムシュタインの新作。本国ドイツはもちろん欧州本土では軒並み1位、UK3位、US15位と存在感を見せつけたアルバム。メンバーは全員が(共産主義国家時代の)東ドイツ生まれであり、小さい頃は共産主義の中で育ちました。それゆえ、音楽的にはロシアのハードベースにも近いというかいわゆる今の「ロシアらしさ(Little Bigとか)」の音像はむしろラムシュテインのイメージもあるのかも。当然ながらロシアとも関係が深く、ウクライナ問題に声明を出しています。
ラムシュタインは、ロシア政府による衝撃的な攻撃に抵抗するため、ウクライナ国家への支持を表明したいと考えています。 とりわけこの瞬間、私たちはウクライナの人々の苦しみに特別な悲しみを感じています。バンドの各メンバーは、両国のさまざまな経験を持っています。バンドのすべてのメンバーには、両方の土地に友人、仲間、パートナー、ファンがいます。 私たちは、多くのロシアのファンが政府の行動に直面したときに感じるかもしれない絶望を認め、ロシアとウクライナの市民の両方が共有する人間性を覚えておきたいと思います。
前作が10年ぶりのアルバムだったので、今作は3年ぶりながら「前作からすぐに出た!」的な衝撃もありました。前作ほど作りこまれた感覚はなく、バンドの勢いや創作性を感じさせる作品。今作は聞きやすくて好きです。ストリーミングにないバンドでしたがいつのまにか解禁されていました。
Faun / Pagan
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欧州メディーヴァル(中世の)フォークの第一人者、ドイツのファウンのニューアルバム。基本的にメタルではなく、ワールドミュージック枠なんですが、欧州フォークメタルが好きならほぼ同じ世界観、というかより深い。中世の森に迷い込んだ気持ちになります。本作にはフォークメタルの雄Eluveitieとのコラボ曲も収録されています。期待に違わぬ世界観を持った素晴らしいアルバム。タイトルの「Pagan(ペイガン)」も重要なキーワードで、こうしたジャンルを「ペイガンフォーク」とも呼びます。ジャンル名を冠したアルバムと言うことはそのジャンルを背負うという気概を込めた作品と言えるのかも。今作は印象的な歌メロを持った曲が多い印象です。Faunについて詳しくはこちらの記事もどうぞ。
Udo Dirkschneider / My Way
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最近はU.D.O.も若手ギタリストを迎えて生まれ変わり、勢いに乗っているウド・ダークシュナイダーの新譜。初のソロ名義ですが、メンバーはベースがピーターバルテス、ギターがステファンカウスマンと元ACCEPT組が参加、つまりほぼほぼDIRKSCHNEIDER & THE OLD GANGです。ピーターバルテスが抜けてしまってウルフホフマンのソロプロジェクトと化した本家ACCEPTよりアクセプトらしい音像。曲はお馴染みの曲が多いんですが、やはりかっちりした構築とか、だんだん曲の中で熱量が上がっていく感じ、どっしりした(旧式の)重戦車のような重厚感はACCEPTならでは。というか彼らの手にかかれば何でも重厚感が出るのが凄い。完全なパワーメタルに生まれ変わった「We Will Rock You」とか最高ですね。でも、やっぱり70年代からやっている人たち(前身のバンドを含めると68年から!)なのでロックンロールの感覚もあるのが素敵。リズムがダンサブルですよね。ローリングストーンズの「Paint It Black(黒く塗れ)」もカバーしていて、これがメタリックでいい出来。この曲よくハードロックバンドがカバーしていますが、原曲はけっこうルーズな音作りなんでカバー曲のイメージで原曲を聴くと肩透かしを食らう曲として(僕の中で)有名。
Märvel / Graces Came with Malice
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”ハイエナジーロックンロール男爵”ことスウェーデンのマーベル。自分たちで名乗っているんですよ、”The baron's of High Energy Rock 'n' Roll”と。覆面を付けたトリオ編成で、ちょっと北欧ポップ感もあるパワーポップ的な暴走R&Rを奏でるバンド。ヘラコプターズに一番近いかも。トリビュートアルバムにも参加しているし。ロカビリー的なビートが心地よく、歌メロがしっかり北欧的なのがツボ。世界中にファン組織を抱えており支部長になると独自のマスクが与えられるとのこと。自分たちのキャラクターがしっかり確立されているバンドですね。ちょっとアットホームな雰囲気のホロっとするバラードも入っていたり、アルバム作りも上手い。
Ibaraki / Rashomon
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現代USメタルを代表するバンドの一つ、Triviumの中心人物マシュー・キイチ・マーフィーのソロプロジェクト。もともとブラックメタルプロジェクトを企図しており、コンセプトに迷っていたところ自分のアイデンティティ(マシューは日本の血が流れている、山口県生まれの日本人とアメリカ人とのハーフ。ただ、1歳の時に転居しているので日本在住歴は短い)を活かした作風にすることを思い立ち、日本をテーマにした作風に。純粋なブラックメタルではなく、かといってTriviumとも異なった独自の音世界があります。どこか幽玄な感じがあるのが彼なりの「日本」なのでしょう。ブラックメタルのレジェンド、エンペラーのイーサーンも参加。激烈な音世界を通じて自己との対話を感じる独特な作品。
Thunder / Dopamine
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UKロックの王道を走るサンダーの新譜。ある時点から吹っ切れたというか名作を量産するバンドに生まれ変わったサンダーは本作も良曲の詰まったアルバムを作り上げました。適度な哀愁があり、UKが50年に渡って築いてきた「UKロック」の独特の湿り気があるハードなロックンロール。今や「サンダーらしいアルバム=名作」という見事な「自分たちの持ち味」を確立した大物バンドに。一時期かなり低迷していたのにここまで復調するとは。2015年の「Wonder Days」あたりからなんですよ。UKでも再評価されてアルバムが10位以内にチャートインするようになっています。本作はドイツとスイスでも10位以内にチャートイン。デビュー当時の90年代よりチャートアクションでは上回る成績を収めています(売り上げ枚数でいえば90年代の方が市場規模が違うので多いですが)。1999年と2009年に2回解散しているんですよね、やや低迷してきた99年に一度解散し、その後2002年に再始動するもののレーベル契約も得られずぜんぜんパッとせず再び解散した2009年(当時Burrn!のインタビューとか読むとかなりネガティブな発言をしていたような記憶があります)、2011年に再始動してearミュージックレーベルと契約したあたりから再び上り調子に。見事な復活劇です。
Mental Fracture / Disaccord
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音楽の魅力を伝えてくれるアルバム。イスラエルのプログバンド、メンタルフラクチュアのアルバム。それほどプロダクションは洗練されておらず、スタジオライブのような妙な生々しさがあるけれど、それが心地よい。曲がいいんですよね。歌も演奏も上手くて心地よい。かつ、感情に訴えてくるものがある。これは名作だと思います。メタル的なエッジはやや控えめながら、しっかりダイナミズムとスリル、そして歌心があります。プログレッシブなハードロック的な音像。イスラエルはさまざまな文化が混交し、魅力的なバンドが複数存在しますがその中にキラリと光る素晴らしいバンド。
Michael Romeo / War of the Worlds // Pt. 2
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USのプログレッシブメタルバンド、シンフォニーXの中心人物であるマイケルロメオのソロ作品。Pt1とPt2に分かれておりこちらはPt1の4年後にリリースされたPt2。ボーカルは全編にわたってディノ・イェルシックが担当し、超絶ボーカルを披露しています。この人本当に歌がうまいよなぁ。だけれどメインボーカルとして参加した作品がなかなか商業的成功を収めないという不運の持ち主、、、。本家シンフォニーXってけっこう活動規模が大きくて、売上だけならドリームシアターに次ぐぐらいなんじゃないですかね。USのバンドだけあってUSでの活動規模が大きいんですよ。毎作チャートインするし。だけれどマイケルロメオのソロ作になるとチャートインしない。音楽的にはソロ作がシンフォニーXに比べて薄味ということはないと思いますが。ディノ・イェルシックのボーカルでマイケルロメオの音楽を楽しめる贅沢な1枚。
Goodbye June / See Where The Night Goes
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USのトリオハードロックバンド、グッバイジューンの4thアルバム。ZZ TopとAC/DCとレッドツェッペリン(というかロバートプラントのボーカル)を混ぜたような音楽性で、2020年代のバンドならではのコンパクトで編集意識を感じさせる曲作りが見事。心地よくてノリが良いです。ドゥームの殿堂、リードリアン率いるイアーエイクに所属しており、70年代ハードロック色は本格的ながら、”今を生きるバンド”としての編集感覚をしっかり持っているのが魅力的。懐古主義に終わらない魅力があります。
Ann Wilson / Fierce Bliss
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これぞコンテンポラリーハードロック、哀愁と職人芸が詰まった素晴らしいロックアルバム。ハートの看板、アンウィルソンのソロアルバム。ジャケットがイエスっぽいですが別にプログレではありません。オリジナル曲とカバーを加えた作品。新規性はありませんが、サンダーと同じく良曲と良演奏が詰まった良質なハードロック作品。アルバム全体としてはきちんとハードロックなエッジもあります。
Undeath / It's Time...To Rise from the Grave
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不思議なアルバム。ゴリゴリのエクストリームメタルながら、どこか安心感があるというかそこまで激烈性を感じない、まるでオールドスタイルブルースのような。おそらく音響の調整だろう。ボーカルはグロウルだが低音でハウリングウルフ的なブルージーな歌唱と言えばそうだし、ディストーションギターやブラストビートも攻撃性よりも全体的に「音の塊」として機能している。かといってそれぞれの楽器が塊になっているわけでもなく、音は分離しているのだが、全体として耳に刺さる攻撃性が少なく、妙に聞きやすい。インディーフォークとかどこか内省的な音に高得点を出しがちなピッチフォークで8.3を採点される理由もなんとなくそんなところなのかも。ピッチフォークが妙に推しているデスメタルというのがどんなものか、興味がある方は一聴を。このバンドUndeath(アンデス)はUSのバンドだが、個人的にはUKのAtvmにもちょっと近いものを感じた。ゴリゴリのエクストリームなデスメタルなのだけれどどこかクラシックロック的と言うか、何か懐かしい感じがする。不思議な質感。アンビエントミュージックとして小音量で流しても成り立つかもしれない。
メタルが「チョットワカル」人向け(個人的嗜好強め)
Wolf / Shadowland
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カッコよくないですか? もうこの冒頭のメロディアスなギターリフで心わしづかみ。スウェーデン出身のウルフの9作目。この作品で初めて知ったんですが1995年結成、2000年デビューとかなりベテランなんですね。SaxonやTriviumともツアーを回ったりしたことがあるそう。トラディショナルなスタイルにも感じますが単なる懐古主義ではなくオリジナリティを感じます。あえていえばSaxonに近いかも。ただ、北欧メタル特有のメロディセンスがあるので独自性があります。余談ですがApple Musicだとアーティスト名が「トミー・ウルフ」になっているんですよね。”トミー”はどこから? 正式なバンド名は「Wolf」です。
Audrey Horne / Devil's Bell
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オープニングからこれぞ欧州HM!的なギターリフの嵐。ノルウェー、ベルゲンのバンド、オードリー・ホーンの7枚目のアルバム。アルバム全体としては70年代~80年代的な北欧メタル感があります。曲によってはボーカルがオジーっぽかったり。エンスレイヴドにも参加しているアルヴェ・イスダルがギタリストとして参加していますが、音楽的にはブラックメタル要素は皆無。ノルウェジアンブラックというよりはそれ以前の「北欧メタル」「欧州メタル」色が強い。そしてリフの完成度が高いし歌メロもキャッチー。なんだかジャケットが地味(あまり音楽性に合っていない気も)なので損している気がしますが、いいアルバムだと思います。冒頭に貼った曲はちょっとメイデン感もあるかな。まぁ、MVでメイデンのTシャツ着てるし、オマージュでしょう。アルバム全体としてはそこまでメイデン感はありません。メイデン好きな人は前回の記事で紹介した「Stray Gods / Storm The Walls」がめちゃくちゃメイデンなのでぜひ一聴してみてね。
Skull Fist / Paid In Full
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カナダのスカル・フィストの4枚目のアルバム。NWOTHM(トラディショナルヘヴィメタルの新世代)に括られるバンドですが、本作はアトミックファイア(ニュークリアブラストの創業者が作った新レーベル、実質分裂したニュークリアブラスト)との契約を勝ち取りリリースされた作品。アトミックファイアはいい作品を立て続けに出してきますね。全体としてよかったころのLAメタルというか、初期モトリークルーみたいな「ワイゼツさとスリリングな感じ」を感じます。歌詞があそこまで能天気ではなさそうですが。
Tómarúm – Ash in Realms of Stone Icons
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壮大なドラマ、アトモスフェリックでプログレッシブなデス/ブラックメタル。ただ、激烈な怒りや慟哭よりはジャケットの通りどこか荘厳で美しい大自然も感じさせます。1時間のアルバムですが全体が一つの作品、一つの組曲として機能している。これは単曲で聞くよりアルバムで聞いてほしいアルバム。US出身のプログレッシブメタルバンドです。ブラッドインカンテーションやIOTUNN、GOJIRAの影響も受けているのだろうか。これがデビュー作とは思えない風格があります。差しはさまれるギターのメロディセンスがいいんですよね。激烈な音像なのに妙な清涼感がある。LPはあっというまに売り切れで、伝説の1枚になるかも。
Moon Tooth / Phototroph
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オルタナティブを通過したモダンなプログメタル。プログメタルというジャンル自体90年代を引きずっているし、90年代はすでに20年以上前なわけですが、そのスタイルをアップデートしようとする意志を感じます。UKのHakenやノルウェーのLeprousやスウェーデンのSoenとも共鳴するものを感じる新たな萌芽。現代においても”進歩的な”プログレッシブロックが好きな方はぜひ一聴を。極端なジャンプはしておらず(あくまで”プログレッシブロック”の様式からのジャンプ)、とはいえその中での跳躍の試行を感じます。好き。やっぱり飛びすぎていると僕は理解できないんですよね。
Rosalie Cunningham / Two Piece Puzzle
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UKのSSW、ロザリー・カニングハム。かつてPurson名義でもアルバムをリリースしていましたが2019年以降はソロ名義に変わり、本作はソロ名義の2作目。ドゥームメタルというかクラシックロックと70年代ハードロックのテイストを色濃く残したストーナー色のあるサイケデリックなハードロックを奏でています。本作はちょっとビートルズ味やドアーズ味もあったり。UKロックのレガシーをうまく継承しつつ、自分なりの表現を模索しています。やはり現代を生きるアーティストらしい編集力、批評眼を感じるのが魅力。さまざまな音源を聴いたうえで表現できますからね。ある問に対する先人の表現を踏まえてアイデアを出せる。すでにロックミュージックは個人が聞き切れる分量を越えていますが、それでも豊富な知恵を受け継げるのは大きなアドバンテージ。その取捨選択のセンスと自己表現力が優れたアーティスト。
Tri State Corner / Stereo Type
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これは名盤。元レイジ(ドイツのピーヴィー率いるバンド)のドラマーと元ドラマーが在籍するバンド。ここでは片方はドラマーではなくボーカルを担っています。ドイツ・ギリシャ・ポーランドのミュージシャンから構成され、だから「三つの国が接するポイント」というのがバンド名「トライ・ステイト・コーナー」の意味だそう。ギリシャの伝統楽器(ギター的なもの)「ブズーキ」をフューチャーしており、オリエンタルメタルな音像。自分たちのことを「ブズーキ・ロック」と称しているのが面白いです。歌メロ的にはちょっとレイジ(ピーヴィー節)の片鱗を感じたり。惜しむらくはちょっとプロダクションが弱い(自主レーベルからのリリースのよう)ことですが、音楽的にはかなり好み。ところどころに差しはさまれるオリエンタルな響きがいい空気を出しています。
Arjen Anthony Lucassen's Star One / Revel In Time
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異常に豪華なゲストを迎えたエイルオン・アントニー・ルカッセンの「スターワン」プロジェクトの新譜。1曲1曲でメインボーカルが変わり、それぞれが超実力派というメタル界ボーカリストオールスター的なアルバム。また、ギターソロもギターヒーローたちが客演。確かに丁寧かつ専門的な作曲家であり、いわゆる超絶技巧のギタリストではないけれど作曲家およびプロデューサーとしての評価が高いのでしょう。自国オランダではチャート1位を獲得。そんなに売れてんのかい! ベルギー5位、ドイツ6位、スイス7位と欧州では根強い人気を誇っています。音楽的にはちょっとオールドな感じもするプログレッシブロックの流れを汲んだメタル。そこまで極端な曲展開はせず、技巧より「作曲力」で勝負している印象が強いです。そうしたベーストラックの上でギタリストとボーカリストが達人芸を披露していく。一流のミュージシャンたちが集って作り上げたスーパープロジェクト作。なお、2枚組ですが1枚目と2枚目は曲は同じで、ゲストギタリストとボーカリストが違います。不思議な作り。
OU / One
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中国発のプログレッシブメタル、というか単純にプログレッシブロック、プログと言うべきかもしれない。OU(オウ)のデビューアルバム。ドラマーでソングライターのAnthony Vanacore(アンソニー・ヴァナコーレ)はUS出身のそれなりに著名なジャズドラマーで、彼が中国に移住して活動を始めたバンドがOU。「中国らしさ」もありますがどちらかといえばグローバルな同時代性を感じるのは彼のおかげでしょう。独特のニューウェーブ感があります。他にないアルバム。V系やJapan(ディヴィッドシルヴィアン)もちょっと個人的に連想。独自の音世界を開拓しようとする心意気が素敵なアルバム。
Trick Or Treat / Creepy Symphonies
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Helloweenの「陽」の部分だけを抽出したようなイタリアのパワーメタルバンド、トリックオアトリートの7枚目のアルバム。なんだかボーカル(の声質)がますますマイケルキスク感が出てきたような気がします。安定のクオリティながら本作は気合が入っている作品のように感じられます。特に新規性は感じませんが、陽気でアッパーな疾走型パワーメタルが詰まった良作。
Watain / The Agony & Ecstasy of Watain
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スウェーデンのメロディアスブラックメタル(メロブラ)バンド、ヴァーテイン(Watain)の7枚目のアルバム。どうでもいいことですがみんなマイブラッディヴァレンタインのことを「マイブラ」って訳すじゃないですか。で「マイブラみたいなアルバム」というのをしばらくメロブラのことだと思っていて、「うーん、言われてみればそうなのか?」と思っていましたが、全然別ですね。まぁ、ブラックメタルにもちょっとシューゲイズ感もあるんですけど。アトモスフェリックブラックメタルとかいうし、シューゲイズ的な「音の塊」「伽藍(教会で反響しているような大げさなリバーブ)」みたいな側面はあるし。あと、意外と激しいようでいて音圧は控えめというか、ギターサウンドは耳に刺さらない、丸みのある音です。そのあたりの音響的な感性は近い部分もあるのかも。勘違いだったわけですが。そんなわけで本作は純度100%のメロブラです。疾走曲多めで爽快。「眠るときはブラックメタル(特にディセクションが良い)に限る」みたいなことを言っていた友人がいましたが、確かに音量と音圧が一定だから眠くなるんですよね、催眠効果があるというか。適度な音量で聴くと安眠導入されます。
Gladenfold / Nemesis
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フィンランドのグラッデンフォールドの3枚目。完成度の高いパワー/メロデス。一応グロールは入るがデス要素はあまり強くなく、最近のフォークメタル、シンフォ系のような荘厳な世界観を感じさせる。同じフィンランドのフィントロールとかよりグロールも控えめ。ただ、メロディ的にはフィンランド的な土着性(というかロシアのフォークメタルも近しいものを感じるのでおそらくスラブ民族なのか、あるいはカラリア人のメロディセンス)を強くは感じず、全体としては欧州のスタンダードなメロディセンスを感じる。全体として王道感があり、突出したキラーチューンや新規性はそこまで感じないが一つ一つの完成度が高い。
Riverwood / Shadow And Flames
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エジプト出身のリバーウッド、出自を感じさせる独特のメロディラインを持ったオリエンタルメタルを奏でています。チュニジアのMyrathやイスラエルのOrphand Land、フィンランドのAmorphisを感じさせるアラビック(というかエジプシャン)な音階。こういう音階は乾いたディストーションギターに合いますね。USにおけるストーナーロック、デザートロックの隆興もあり、メイデンも「Writing On The Wall」でデザートロック感を取り入れるなど、”砂漠感”はディストーションギターと相性が良い。砂漠の民として見事な完成度を見せています。コンセプトアルバムであり、それも好物。オリエンタルなプログメタルとしては一級品のアルバム。
以上、おススメのアルバムでした。それぞれに背景の文化があるので、貴方の人生を変える一枚がある、かも。良い出会いがあれば幸いです。
それでは良いミュージックライフを。
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