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Void Vator / Great Fear Rising
Void Vatorは2014年結成のLAのメタルバンドです。デビューは2017年で、ex WHITE WIZZARD、GIPSYHAWKのギタリスト、エリック(Erik Kluiber)が中心メンバーのよう。USメタルのさまざまな要素を組み込んだ最新系のLAメタル。聞きやすくてかっこいい。本作がフルレンスアルバムとしては2ndになる様子。
1.I Can't Take It 03:35 ★★★☆
マシンガン的、叩き込まれるユニゾンのリフ。ミドルテンポでグルーヴィーなリズムに落ち着き力強い歌声のボーカルが入ってくる、ややハイトーンで声はそこまで重苦しくない、USパワーメタル的な煌びやかさがある。歌メロはメロディアスだがポップさはなく引っかかりがある。ブルージーさもあるフレーズ。コーラスは高音で訴えるようなフレーズ連呼。
2.I Want More 03:23 ★★★★☆
間髪を入れずに次の曲へ、しっかりとしたリフ構成。ヴァースはガンズアンドローゼスのような言葉の連呼、そこからメロディアスなブリッジ~コーラスへ。90年代のLAメタル感がある。ギターソロも過度にテクニカルではないがメロディアスで華がある。
3.There's Something Wrong With Us 03:17 ★★★☆
どんどん曲が出てくる、テンポが良い。こちらはややコードストローク主体のリフ、本当にLAのバンドなんだな。LA感、LAメタル感が満載。曲に特筆すべき特徴、目新しさはないが、ギターフレーズや展開に適度に欧州メタルの湿り気があり、歌メロもブルージーな響きが残っているのが特徴か。全体として聞きやすいが硬派さ、パワーメタル感がある。Armored Saint(ジョン・ブッシュ)あたりにも歌メロの感覚は少し近い。ただ、若手バンドゆえのフレッシュな感性が加味されている。
4.Losing Control 03:39 ★★★☆
間髪入れず次の曲へ、西海岸のベイエリアスラッシュのザクザク感やメタリカの欧州感も取り込んでいる。この曲はブリッジ~コーラスはメロディアスでNu Metal的。2000年代初頭のヒットチャートに乗りそうなメロディ。一つ一つの要素の組み合わせ方が上手い。グルーヴメタル、Nu Metal、LAメタル、パワーメタル、スラッシュメタルを通った今を生きるUSメタルバンドとしてのアイデンティティを感じる。
5.Great Fear Rising 05:30 ★★★★
ツインリードのリフとミドルテンポのドラム。だんだん進撃してくるようなオープニング。80年代スラッシュメタルのアルバムのイントロのようだ。どこかチープさ、軽快さがありながらも荘厳。
そこからバタバタするスレッドとグルーヴが切り替わるリフへ、ボーカルが入ってきてテンポチェンジをしながら加速と跳ねるを繰り返す。
6.MacGyver's Mullet 03:13 ★★★★
Motorhead的な少し暴走ロックンロール味のある曲、声もややダミ声で歌っている。ブリッジ~コーラスはかなりキャッチ―。ありがちな展開から一ひねりというか、さらにコード進行を粘っていく。作曲能力が高いというか歌メロやギターフレーズの選び方のセンスがいい。この軽やかさ、揮発するような煌めきがLAメタルの神髄か。MotorheadというよりRATT的ともいえるのかな。RATT'N'ROLL。
7.Encounter 01:09 ★★★
郷愁を誘うギターの音色。聞き覚えがあるな、これこそガンズか。シンセギター。ジューダスのTURBOとか。そこからややクラシカルなメロディが入ってきた。イントロ。
8.Poltergeist 03:38 ★★★★
その流れから疾走ではなくミドルテンポの曲へ。こう来るか。面白いね。メロディアスで跳ねるような曲。曲名は「ポルターガイスト」なのでオカルト的なテーマなのだろうか。あまり曲にホラー味はないが、言われてみればシアトリカルな感じ、アリスクーパーあたりのショックロック的なノリも感じる。何かライブだと仕掛けを考えているのかも。ライブハウスで盛り上がりそうなバンドだなぁ。曲展開も凝っている。
9.Infierno 05:03 ★★★★☆
メロディアスで欧州的なツインリードのリフからスタート、そこでギターはテンポチェンジしてザクザク感があるリフに変わるがドラムのテンポは変わらず、ミドルテンポで手数多め。リフも飛び跳ね、ボーカルも軽やか。歌メロそのものは落ち着いて展開していく。ドラムのパターンがややメイデンっぽい、ハイハットの入れ方だろうか。メロディアスなギターソロ。THIN LIZZY的なツインリードに展開し、またオープニングのリフに戻る。さまざまな要素を組み合わせつつ、USメタルの魅力が詰まっている。
総合評価 ★★★★
「歴史を変える名盤」にはならないだろうが、「個人史に刻まれる名盤」にはなりえるポテンシャルがある良作。9曲32分というのも潔いし、これからメタルを聞くという人にはメタル入門編として機能するんじゃないだろうか。突出した何かは欠けているが、全体的にセンスがよく歌メロもギターフレーズも心地よい。USメタルの美味しいところが詰まったアルバム。