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14.ロマンティックなメロディと内省的リリシズム = OrelSan

オレールサン(OrelSan)は1999年に活動開始、2009年にレコードデビューしたフランス人のラッパーです。フランスのEMINEMなどとも比喩される内省的で女性問題への自己開示的なリリックを書きつつ、アメリカのヒップホップとは一線を画したシャンソン的な歌いまわし、フランスならではのメロディーで欧州で人気のアーティストです。変わったところだと日本初のアニメ「ワンパンマン」のフランス版の主人公サイタマの声を担当しているとのこと。渋い声ですね。この曲は核家族化して孤立していく都市生活者の孤独、階層間の断絶など、重いテーマを洒脱なトラックとリリックでうまく訴えかけています。日本語字幕がついているのが良いですね。歌詞の内容が分かると感動が違います。2018年「La Magnifique Society in TOKYO」で来日。ライブを観ることができました。ステージパフォーマンスも存在感があり、カリスマ性のあるアーティストです。

他にも、他民族国家(移民が多い)であるフランスの現状を映した曲「Dis moi」は映像表現も面白く、インド系食堂のTVで流れているインドTVのパロディという趣向が凝らされています。

日本でも「カレー屋でかかっているインド音楽」といったコンピ盤が人気を博したことがありますが、そうした日常の中のちょっとした異質感と、それに惹かれる気持ち、相互理解と衝突などをよく描いています。

フランス音楽といえばシャンソンのように、語りかけるような歌い方と、流れるようなロマンティックなメロディーが特徴的です。クラシックでも、同じ曲を演奏してもドイツやイギリスのオーケストラとフランスのオーケストラでは、後者の演奏がどこかロマンティックに感じるのはフランス、パリへの憧憬や印象もあるのでしょうが、実際に現在のヒットチャートを見てもそうした伝統が受け継がれていて、どこかしら抒情的な、リリシズムを感じつつ洗練された色彩を感じる作品・アーティストが多くみられます。

Angèle(アンジェール)の「Tout Oublier」は映像表現含め、強くフランスらしさを感じる佳曲です。アンジェールは1995年生まれ、2017年デビューのベルギー生まれのアーティストです。このビデオでフューチャリングされているラッパーのロメロ・エルヴィスは彼女の兄です。

フランスは多国籍国家です。アフリカ系移民やミックスも多く、アフリカン・ポップスの影響を感じさせる曲もあります。たとえば一曲、Therapie TAXI(セラピー・タクシー)の「AVEC TA ZOUZ」を。セラピー・タクシーは2017年デビューのポップ、ロック、ヒップホップなど、いくつかの音楽ジャンルをミックスしたフランスのグループです。

Stromae(ストロマエ)は1985年生まれ、2005年デビューのベルギー生まれのアーティストです。2008年から世界的な成功をおさめ、2013年リリースの2ndアルバム「Racine carrée(平方根)」はここ10年の間でフランス国内で200万枚以上売れた唯一のアルバムとなっています。

フレンチ・ポップスの巨人たちにも触れておきましょう。ミシェル・ポルナレフはフレンチ・ポップスが生んだ世界的スターで日本でも大人気を誇りました。現在も活動中で、2018年には28年ぶりのニューアルバム「Enfin!」をリリースしています。名曲が数多ありますが、最近の活動から2016年の「L'Homme en Rouge」をご紹介しましょう。

もう一人の巨人セルジュ・ゲンズブールは作曲家、作詞家、映画監督としても著名で、ブリジット・バルドーやジェーン・バーキンといった女優達と浮名を流しました。高級ブランドエルメスの「バーキン」はジェーン・バーキンのために作られたものです。ゲンズブール/バーキンコンビの1977年の名曲「Yesterday Yes A Day」で今日はお別れしましょう。


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