Metallica / Some Kind Of Monster(2004)
映画「Some Kind Of Monster(真実のメタリカ)」の公開に合わせてリリースされたEP、表題曲は「St.Anger」からの曲ですが2曲目以降はライブ音源、ロバート・トゥルージロ加入後のライブ音源としては初リリースです。なお、2004年、トゥルージロ加入後のMetallicaは自分たちのサイトですべてのライブ音源をダウンロード販売、CD販売するようになっており、そういう意味ではあらゆるライブ音源が入手可能にはなっていますが、一般販売したのはこれが初だし、その分厳選されたトラックと言えるのでしょう。
聴いて感じるのは、トゥルージロのバンドへのフィット感です。もともと技巧派だし、名前が知られていたベーシスト(Suicidal TendenciesやOzzy Osbourne Bandに参加しており、メタル界のベーシストとして加入前からかなり著名)であったものの、ジェイソン・ニューステッドの加入でバンドサウンドが硬化し、ラーズのドラムスタイルも変化、メタルジャスティスではベースが聞こえないといった騒ぎがあったことに比べると、最初からかなりすんなり馴染んでいるし、グルーヴも生み出しています。これはトゥルージロのミュージシャンシップの高さもありますし、逆に「メタリカのサウンド」というものが確立され、メタリカの曲をメタルベーシストならある程度カバーしている、血肉になっているという双方の影響があるのでしょう。すでにメタルクラシックスと呼べるナンバーを多数抱えたバンドであり、そういう意味では「求めるメタリカのサウンド像」というものは手探りというよりは、ある程度完成像、到達基準点のようなものが土台にあったがゆえに短期間で馴染んだと考えられます。
トゥルージロのベーススタイルとしてはクリフ・バートンに近い。やや前ノリなジェイムス・ヘッドフィールドのリフと、やや後ろノリなラーズ・ウルリッヒのドラムとの間を埋めるリズム感で、バンド全体をうまくまとめています。ラーズのドラムが浮いて聞こえる感じが減り、より自然に聞こえるようになっている。これはクリフ期にもあったものです。結果、ラーズのドラムの特異性、妙なひっかかりは減って聞こえ、バンドとしてのグルーヴはより自然に一体化して聞こえるようになりました。その引っ掛かりがブラックアルバムの特異な音像を生んだのでそれが悪いわけではないですが、より自然に、身をゆだねられるリズムになったと個人的には感じます。
ライブバージョンで「The Four Horsemen」をどうぞ。ベースがうねり、ドラムと絡み合い空間を埋めています。
スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。
2004リリース
★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補
1.Some Kind Of Monster 8:25
最初はギターリフ、ノイズが強いギター
アンプのホワイトノイズとドラムが共振している音がよく聞こえる
これはアルバムと同じミックスかな
ちょっと音がいい、音圧が高め(シングル用にリマスタリングされている)に「感じる」が、こちらの耳の状態だろう
並べて聴けば同じと思われる
ギターの音とボーカルが絡み合う、跳ねるようなリズム、ギターリフのリズムが跳ねている
Panteraあたりからの影響かな、グルーヴメタル
タムというかスネアか、金属音
これ「We The People」と言っているのかな、耳に残る
ジョンレノンの「Power To The People」を連想する、このフレーズだけだけれど
鳴り続け、展開していく、グルーヴが続く
ああ、この曲か、途中から呪術的なフレーズが出てくる、終盤がSepulturaっぽいというかトライバルな感じを受ける曲
こないだアルバム聞いたばかりだから印象は特に変わらないなぁ
手が込んでいてサマにはなっている
最後、ちょっと鶏の声のような、バタつく感じで終わり
★★★★
2.The Four Horsemen (Live) 5:29
いよいよライブに、ギターの刻みが軽快、おお、ライブだとラーズのドラムは変わっていないな
ベースもけっこううねっている、とはいえアタックはあまり強くない、どっしりしている
とはいえチグハグな感じはないな、バンドに溶け込んでいる、馴染んでいる
ボーカルも元気、ボーカルはむしろSt.Angerで表現の幅をさらに広げた感じ
リフだとベースとギターのノリが一体になってるな
ふむ、ベースがちょっと後ろノリというか、タメも利くタイプか、ラーズとの相性がいいというか、最初から「別のグルーヴ」をバンドに持ち込んでいる
2004年からツアーの全日程を公式サイトで販売するようになったんだよね、公式海賊版というか
St.Angerはベース不在(プロデューサーのボブロックが弾いている)だったし、録音終了後の加入だからトゥルージロのお披露目リリースがだいぶ先になってしまうことを懸念したのもあるのかな、ライブをどんどんリリースするようになった
実際、ライブの状態がいい
★★★★☆
3.Damage, Inc. (Live) 4:57
これも疾走感あふれるナンバー、バンドの疾走感が増している
おお、ベースとドラムの一体感がなんだかいいぞ、音の耳馴染みがいいというか、心地よい
まぁ、St.Angerの音を聞いた後だから、もあるかもしれないが(あのアルバムは意図的に「心地悪さ」を音響的には作っている気がする)
ギターもイキイキしている、バンドサウンドが再生したというか
ギターソロの間、ベースがしっかり埋める、おおー、やはりけっこう変わるな
個人的にはグルーヴが好み、ニューステッドも後半独自のグルーヴを出していたのでいい悪いではなく方向性が変わった気もする
音が若々しくなった、まぁ、ライブのハイライトだけを集めたミニアルバムだからというのはあるだろうが
何か、解放されたような軽やかさがある
★★★★
4.Leper Messiah (Live) 6:23
ベーススタイル(アタック音やリズムタイミング)がクリフバートンに近いのか? なんだか馴染みがいい
まぁ、客観性を持ち込めた、というのはあるだろう、ニューステッド加入時に比べたらはるかに「完成されたバンド」になっていたわけで、それを外から見ていたら「メタリカらしさ」を自分なりに分析・理解していただろう
それは作り上げていく過程で試行錯誤しているより洗練される、後追いのバンドの方が洗練された楽曲を作れるのと同じ
うーん、ライブが聞きやすい、なんというか緊張感が少ないというか娯楽性が高いというか
シンプルにノリが良くなった
ちょうどヒップホップとか声をサンプリングしたナードコアを聴いて「声も含めたすべての音をリズムとして扱う」という発想はメタリカそのものだなぁと思った、初期から言っている通り「リフも含めてポリリズム」な感覚がある
なので、ポリリズムの要素というか、リズムの組み合わせが音楽的快楽にとても重要
これがニューステッドは最初はあまり噛み合っていなかった
結果としていろいろな新機軸を生み出すことになり、メロディとか音楽スタイルの拡張に結びついた気もする
だから、まさにブラックアルバム~Load~Reload~ガレージインク~S&Mの流れはニューステッドの存在も大きかったのだけれど
トゥルージロが入ったことでそこに初期のグルーヴ感が戻ってきた
★★★★
5.Motorbreath (Live) 3:11
声も若々しい、余談だけれどこの曲ってメタリカの中で唯一ラーズが作曲にかかわっていない、ジェイムスの単独クレジットなんだよね
加入前に作っていたのかな
確かに、ギターとボーカルでどんどん進む、ギターとボーカルだけでもメロコアとして成り立つような曲
そこにドラムがガンガン入ってくる
なんだこのイキイキとした感じは
まぁ、ミックスもあるのだろうけれど
おおー、間奏部ではベースが走っている、曲を引っ張っている
これはニューステッドと違うなぁ、いいぞ
このEPの(リリースの)目的はベースの聴き比べ、トゥルージロのデビューだろうから
その目的をしっかり果たしている
★★★★
6.Ride The Lightning (Live) 7:29
リフ、ドラムと一体化するベース、おおー、ドラムが浮いて聞こえない
ニューステッド時代はドラムが存在感が強いというか、逆に言えばちょっとパートが分離していたんだよね
ベースとの一体感が増している、ベースがギターとドラムの間をつなぐ、バンドサウンドが一体化している
この「一体感を持ちつつ、それぞれのパートではリズムとメロディが個別に別タイミングで変化していきポリリズム、ポリフォニー化していく」のが初期(いや、ずっと)メタリカというバンドの本質的な快楽だ、と感じているのだけれど、それが戻っている
トゥルージロが加入した後、最初はニューステッドを惜しむ声もあったけれど、だんだんとトゥルージロ凄いというか、ニューステッドも良かったけどトゥルージロもいいよね、という声に変わっていった印象
少なくとも日本語空間ではトゥルージロに対する不満は少なかった気がする、むしろ好意的だった
もちろん、メンバーチェンジは反対もあるのだけれど、これだけメタルシーンで注目されたメンバーチェンジだったにも関わらず否定的な声はそれほど長続きしなかった印象がある
それは音を聞いて「ああ、これか」となんか納得したというか、単純に良かったんだろう
なんだろうなぁ、体が揺れるリズムというか、だんだん盛り上がってくる、考えて理解しなくてもいい、凄く注意深く、精巧につくられた作品をじっくり鑑賞する感より熱狂感というか
こうした感覚を取り戻そうとメタリカはもがき、結果として音楽性を無暗と拡張した、時代を先取りした気もする
★★★★
7.Hit The Lights (Live) 4:06
ちょっと重めのドラムサウンド、ブラックアルバム以降の音に近いかな、タムが前に出てくる
1stの曲なのでドラムサウンドの変化が目立つのかもしれないけれど
単純にちょっとミックスがドラムの音が大きいのか
しかし前曲1st~3rdの曲から選ぶとは、ニューステッドと比べるよりクリフと比べてくれという意思表示でもあったのかな
うまくハマっている、若返ったと感じたのは若いころの曲ばかり収録されているから、もあるかもしれないが
あの当時の音、バンドサウンドに戻った、何かを取り戻した、という感覚も持てたからこの選曲でもあるんだろう
★★★★
8.Some Kind Of Monster (Edit) 4:16
短いバージョン、どこが短くなったのかな
終盤の呪術的繰り返し、トライバルリズムパートがなくなるのかなぁ、あそこが一番好きなんだが
このアルバム生々しく聞こえるが、実際は個別に録ってプロトゥールズで緻密に組み合わせているんだよなぁ
映画「真実の瞬間」に詳しく出てくる
あ、後半ないや、残念
単なるグルーヴメタルになっている
★★★
総合評価
★★★★
EPながらライブ6曲を含み、ライブミニアルバムといった趣
ロバート・トゥルージロ加入後の音源リリースは初、ライブ音源でのお披露目
そういう意味ではニューステッドが入った後のガレージリビジデットにも近い
カセットは2003年リリースだがそれはマニア向け先行販売で、メインのリリースは2004
さて、聴いた感じ、ライブ部分は30分ほどだが、、、まぁ、ハイライトだけ集めているのもあるが、今まで順を追って聞いてきたメタリカのライブ作品で一番楽しめた笑
なんというか心地よいグルーヴがある、2nd、3rdを聴いているうちに感じた熱狂感、体の中に熱が溜まる感じがある
加入したばかりとは思えないバンドとの噛み合いを感じる
プレイヤーの相性、ケミストリーというのは不思議なものだ
これは次のアルバムが楽しみ
ヒアリング環境
朝・家・ヘッドホン