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TRIBULATION / Where the Gloom Becomes Sound

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トリビュレーション(日本語の意味は”苦難”)は2005年結成、2009年デビューのスウェーデンのバンドです。ダークメタルと呼ばれ、ゴシックやデス、ブラックメタルなどを組み合わせた音楽性。本作が5作目で、一部エレクトロニカであったりスウェーデン語の歌詞も取り入れているそう。アルバムタイトルはドイツのダークウェイヴ・ユニット、Sopor Aeternus & the Ensemble of Shadowsの曲「Hades “Pluton”」の歌詞から取ったそうで、"暗闇が音になるところ”といった意味。自分たちの目指すサウンドを表している言葉として選んだそうです。影響を受けたアーティストとしてはアイアンメイデン、モービッドエンジェル、フィールズ・オブ・ザ・ネフィリム、ポポロ・ヴーなどの名前を挙げています。AOTYのCritic Scoreで86点。Metal Hammerで★★★★☆

活動国:スウェーデン
ジャンル:gothic metal
活動年:2005ー現在
リリース:2021年1月29日
メンバー:
 Johannes Andersson – vocals, bass guitar (2005–present)
 Adam Zaars – guitars (2005–present)
 Oscar Leander – drums (2017–present)
 Joseph Tholl – guitars (2020–present)

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総合評価 ★★★★☆

北欧的な美しいメロディが満載で、確かに「暗闇が音になるところ」と言われると納得感があるダークネスさがあるが、音は明るさもあり人懐っこい。同郷のghostにも通じるところがあるが、ボーカルラインはあくまでデスメタル的でメロディはギターやキーボードにゆだねている。個人的には初期Amorphis、初期メロデス勢に通じるメロディの奔流を感じたが、ここまでメロディアスならもう少しボーカルメロディもフックやコーラスがあってもよかった。別にクリーントーンで歌うわけではなく、今のスタイルのままでのポップさはあると思うのだが。1曲目はその好例。こういった曲がほかにもあればもっと楽しめた。

アイアンメイデンの影響もところどころに感じられ、6,7あたりはギターがメイデンっぽい。あと、モービッドエンジェルを影響を受けたアーティストに挙げていたが、確かにそうした暴虐性の中に煌めくメロディ、みたいなところはある。ただ、全体的にバッキングは荘厳でメロディアスなので、エッジの部分はボーカルスタイルだけ。むやみなノイズや攻撃的なギターサウンドはなく、全体として上品な音作り。今年の新譜でいえばgojiraの新譜にも通じる空気感があり、もう少しでghostやgojiraにも届くのになぁ、という感触。全体として良質で、各曲もキャラクターが立っていて中だるみもすることがないのだが、「すごい!」となるまであと一歩、惜しい。

1. In Remembrance 06:50 ★★★★☆

低いオルガンの音。静謐な始まり方。ホラー映画のサントラのような不気味なアルペジオが入ってくる。時計仕掛けのようなリフが重なる。メロディアスなギターフレーズが切り込んできて、リズムが入ってくる。リズムはジャーマンテクノやインダストリアルような、空間を埋める感じ。ボーカルは深く、遠くから響いてくるような処理。音に耳が慣れてくるとどこか人間味がある、人懐っこさもあるビート。ボーカルスタイルはダミ声ではあるがそこまでグロール感は強くない。フィンランドのLordi的というか。歌メロもフックがあってきちんと展開するが、単にポップなだけでなく暗黒感もある。北欧らしいメロディ。ギターメロディはイマドキっぽい。UKのニューコア勢にも通じるモダンさと北欧、スウェーデンらしいクサさが同居している。メロディアスなギターソロを経て再びコーラスへ。カッコいい。Apple Musicでは歌詞が表示される。

2. Hour of the Wolf 04:31 ★★★★

メロディアスなギターから。ツインリードというより日本のギターが絡み合う。北欧的でメロディアスなギター。歌詞はダークファンタジー、暗闇からの脅威や警鐘。これは昔のAmorphisのような、北欧ルーツミュージックとデスメタルを組みわせた感じがするな。ミドルテンポでじっくりメロディが展開するがメロディはギターが奏で、ボーカルはアジテーション、司祭的。ただ、全体的な音像としてはゴシック、リバーブがかかっていてどこかかすみがかっている。音が一体となり、ギターにエッジはあるものの一つ一つの音は丸みを帯びていて耳障りもよいモダンな音像。

3. Leviathans 04:54 ★★★★☆

雰囲気が変わる、ちょっとアッパーなハードロック的というか、ゴシックな雰囲気は保たれているが明るい解放感が出てくる。ボーカルが入ると演劇的に。ギターフレーズが少しオリエンタルなメロディを奏でる。北欧の自然、どこか牧歌的な風景が浮かぶ。大自然を感じさせる歌。歌詞は地球の破壊についてのテーマだろうか。リヴァイアサン、海の怪物について歌っている。地球の意思、大自然といったものを感じさせる音像。ドドン、というタムの深い音がいいアクセントになっている。ちょっとバイキング感もある、海がテーマだからか。

4. Dirge of a Dying Soul 05:08 ★★★★

遠くから進んでくるような、威風堂々とした音。ミドルテンポでゆっくりと進んでくる。何かの行列、行進を想起させる。アルペジオに変わり、荘厳な雰囲気でボーカルが入ってくる。神殿や王宮、なぜかエジプト的な雰囲気も感じるのはアルバム内にちょくちょくオリエンタルなメロディが入っているからか。ただ、この曲にはオリエンタル要素はあまりない。同じ神殿なら北欧の、オーディンの神殿というべきか。とにかく荘厳なシーン。確かに暗闇、ダークさを感じるが不思議と音には明るさ、ポップさも感じる。それほどノイジーでも攻撃性が強くもなく、どこか人懐っこい音。ギターの音が丸みを帯びているからだな。一番エッジが立っているのはボーカルスタイルかもしれない。メイデンに影響を受けているといわれればなるほどとおもう構築美がある。

5. Lethe 02:12 ★★★☆

静謐なピアノ。きしむような音、ピアノ奏者の椅子の音だろうか。追憶のような、どこか色あせた音色。クラシカルな小曲。インタールード。

6. Daughter of the Djinn 05:34 ★★★★

疾走感があるリフから、ドラムも入ってくる。アップテンポなナンバー。ギターリフやサウンドには一番メイデン感がわかりやすく出ている。惜しむらくは歌メロが弱い。ほとんどギターにメロディ要素をゆだねているが、この曲はボーカルにも印象的なフックがあればより良かった。惜しい。ギターメロディは良質。

7. Elementals 03:30 ★★★★

アップテンポな曲が続く。メロディアスで、ややプログレ的でもあるバッキング。メロディがキーボードによって奏でられる。序盤スローにスタートして、中盤にアップテンポ曲を配置するのは面白い配置。音が華やかに展開していく。メイデンのギタートーン、ウーマントーン的な気品のあるギター音でメロディを奏でていく。ドラムスタイルやベースにははそれほどメイデン感はないのでギタースタイルだけ。ボーカルが入ってくるとキラキラしたアルペジオ、アトモスフェリックブラック的な音像。

8. Inanna 04:37 ★★★★

少し落ち着いたテンポへ、うねるようなリフというかメロディ。伝統音楽、民謡的なメロディ。オリエンタルというよりスウェーデンの民謡や伝統音楽なのだろうか。この曲はちょっとロシア音楽感もあるな。モービッドエンジェルの名前を挙げていたが、確かにボーカルはグロウルスタイルで、メロディはギターが切り込んでくる、とこどろこどに煌めくギターメロディがちりばめられているのはモービッドエンジェル的なスタイルか。最初のメロディの雰囲気は保ったままで途中からリフが展開する。

9. Funeral Pyre 04:22 ★★★★

勢いのあるギターの刻み、疾走感がある。80年代HM的な刻みリフ。メロディアスでどこかひっかかりがあるギターメロディ、メロディアスブラック、メロディアスデスメタル感があるが、全体的な音像はゴシック。ガンガンと直接的な攻撃性を感じるというよりはどこか霞がかった音像ではある。ギターソロはかなり荘厳な、迷宮に迷い込んだような音像。入り組んだ道を進んでいく。同郷のghostにも通じるところがあるな。

10. The Wilderness 06:39 ★★★★☆

整然と進んでいく美しいギターメロディ。リフの刻みが続く。ずっとギターが一定のテンションでメロディを奏でている。ふと、昔のお茶の水ディスクユニオンを思い出す。裏路地にあって、独特の輸入盤の薫りがした。第一次メロデスブームのころで、Amorphisやディセクション、In Flames、Sentencedが並べられていた。あの頃の空気感を感じる。独特な薫りというか、嗅覚が刺激される音。いわゆる「クサさ」とはこういうことなのだろう。音像は洗練されているのだが、メロディだとか、訴えてくる情景が通底している。

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