Paradise Lost / Obsidian
Paradise Lostは1988年結成、1990年デビューのUKのバンドです。デス/ドゥーム的な音像からスタートし、独自の耽美かつ暗黒な音世界を構築。ゴシックメタルの源流の一つとされます。一時期はデスボイスを封印しかなりシンセポップに寄せた音像になっていましたが今作はアグレッションと聞きやすさを両立させつつ独特な音世界を築いています。英国のバンドということでやはり北欧、ノルウェーやスウェーデンのバンド群とはメロディセンスが違いますし、USのどこかカラッとしたドゥームメタル勢とも違う湿り気がある。このバンドも何か「匂い」と記憶が結びついています。「Icon(1993)」や「Draconian Times(1995)」の頃、たぶん輸入盤だったから物理的な「匂い」もあったんですが、音像と一緒にそれが記憶されている。Amorphisの「Tales From the Thousand Lakes(1994)」もそうですね、音を聴くと何となく嗅覚も刺激されます。なんでなんでしょうね。ちょっとアルバム全体の流れやメロディの煽情度が個人的にはフィットしませんでしたが、このアルバムからもその独特の「匂い」を思い出すことはできました。
スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。
2020リリース
★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補
1 Darker Thoughts 5:46
琴の音のような、クラシックギターか
ボーカルが入ってくる、静かな始まり
弦楽器が微かに鳴る、気品を感じる
王の独白だろうか
アコースティック楽器しか出てきていないがどこか不穏な空気が
リフと共に音圧が増す、バンドが入ってくる、ボーカルがグロールになる
このバンドは声が独特、きちんと聞くのはだいぶ久しぶりだが空気感が変わっていない
この轟音とこの声は確かに覚えがある、特徴的
音の密度が濃い、ドラムの手数も多いが、ギターの刻みや空間の埋め方が上手い
なんなのだろう、比較的ありがちなメロディというかそれほど展開があるわけではないのだが説得力がある
Opethなんかにも近い説得力なのだけれど、曲展開はもっとシンプルと言うか凝っていないのだけれど
音の重ね方、選び方が上手いのだろう
荘厳な宮殿を思い浮かべる
★★★★
2 Fall From Grace 5:42
獣の慟哭のようなスクリーム
何かが起き上がる
ヘヴィで引きずるようなリフだがどこか心地よい
ハーモニーが自然に展開していく、グロールとクリーントーンが自然に切り替わる
北欧神話の巨人をなぜか思い浮かべる、見たことはないので映像的には進撃の巨人みたいなものだが
あるいはファンタスティックプラネットやFGOの北欧の巨人か
ウィスキーを飲みながら聞いている、同じように熟成を感じる
娯楽性と芸術性が両立されているように感じるのがこのバンドは面白い
それほど挑戦的なことはしていないはずなのだけれど
情景的、風景的な音、目をつぶると音世界が広がる
浸っていたくなる
このバンドは緑や紫を想起させる、ドラゴニアンタイムズのジャケットの印象だろうか
★★★★
3 Ghosts 4:35
歪んだベースからスタート
やや歪んだ景色、金属的な音
ドラムが鳴り響く、雪山だろうか、雪山を足跡で踏みしめていく
吹雪のようなギター
「For Jesus Christ」というリフレインが耳に残る
★★★☆
4 The Devil Embraced 6:08
物語を感じるスタート、時計だろうか、時間の流れか
低音のボーカルが入ってくる、低音域も魅力的な声をしている
スクリームへ、異形のものを感じさせる
鳴り響くギターリフ、メロディアスなブリッジ、New Orderとかに近い、ちょっとニューウェーブ的なメロディセンスがある
ヘヴィなリフにオルガンの音が絡み合う
荘厳な建物、洞窟の中で塔がせりあがっていくような、鍾乳洞を早送りで見るような
音が積み重なってイメージを作る
★★★★☆
5 Forsaken 4:30
ヘヴィで粘り気のあるリフ、クールで落ち着いたボーカルが入る
ギターとベースが空間を作り、手数の多いドラムが空間を切り裂く
ギターはところどころ刻みを使って空間を進める、泳ぐ
氷のような「キン」という透き通った音、女声コーラス
ふたたびコーラスへ、なぜか宇宙服を着た男の映像が浮かんだ
火星の風景だろうか、ギターは刻むより轟音のカッティングで砂嵐のよう
赤い砂嵐を思いついたから火星なのだろうか
乾いた嵐を感じる、砂嵐だろうか
音にはどこか冷たさがあるが、この曲からは乾燥も感じる
★★★☆
6 Serenity 4:46
オーガニックなリフ、安定して曲が進みだす、コードが展開する
この曲は北欧メロデス、Amorphisとかの世界観を想起する
ゴシックといえばゴシックなのだけれど、ギターメロディが強い
ギターメロディとグロールの組み合わせ、ボーカルは感情とリズムを担当し、メロディはギター
★★★☆
7 Ending Days 4:36
クリーントーンのギターのアルペジオ、ボーカルが入ってくる、リズムも少しづつ入ってくる
浮遊するような音像、行進するようなリズム、何かを探し回る
音圧が上がっていく、バンドサウンドが生き物のようにうねる
たゆたう波のような曲、メロディより音圧全体で緩急がついている
★★★
8 Hope Dies Young 4:02
ややサバス的な、少し不穏なリフ、ベース音が強い
コードが展開して幽玄な浮遊するような感覚になる、空間的なギターになりドラムとボーカル
こういうパターンが多い、同じテンションなのでそれを心地よいと思えるかどうか
SLEEPやELECTRIC WIZARDのような酩酊感を求めるものなのかもしれない
そうだとすれば各曲がけっこうハキハキしているし、歌メロもフックもある
真夜中よりはやや夜明けに近いというか、朝の光を感じさせる場面も多いが
ややワンパターンで似た曲調が続くが、この曲はコーラスのメロディの展開があり歌メロが耳に残る
★★★★
9 Ravenghast 5:30
ピアノのアルペジオ、和音、荒涼とした宮殿
ギターとピアノの和音アルペジオが絡み合う
ドゥーム、ヘヴィでスロウな歌いだし、ボーカルはグロウル
流れるようにメロディが展開していく、暗黒の世界を描くが陰惨さはあまりない
不協和音が少なく、和音感が整っているからだろうか
途中からテンポアップする
それほど長尺の曲ではないがドラマ性は高い
★★★☆
Bonus Track
10 Hear The Night 5:34
ここからボーナストラック、やや音像が明るくなったか
さっきまでのアルバム曲に比べるとやや音の密度が薄い
ただ、9曲目が濃かったからその対比だけかもしれないが
コーラスでクリアボーカルがメロディを奏で、グロールと絡み合う
聞いているうちにだいぶポップだなと感じてきた、コーラスのリフレインがポップさがある
★★★☆
11 Defiler 4:45
メロディアスなギターフレーズからスタート
丸みを帯びたギタートーン
このバンドならではの空気感がある曲
ボーカルはグロウル、ギターがメロディを奏でる
ヘヴィブルースと言われればそんな曲調でもある
しっかり物語の完結を感じさせる終わり方
★★★★
全体評価
★★★★
良質なクオリティ、ただ、似た曲調が続くのでフックには欠ける
ひたすら音世界、酩酊感に浸れるかどうか、波長が合うときには合う音楽
ベテランだけあって演奏も作編曲もプロダクションもクオリティが高い、音響的にも意識されていて音として心地よい
後はメロディの方向性が好みかどうか
個人的には世界観は好みだがややメロディが単調に感じる
ただ、流れていたら心地よいし「これは誰だろう」と耳が惹かれるだろう
北欧勢に比べるとUKらしさというか、暗黒面がやや薄く気品と言うか洗練された感じがある
純粋にプロダクションの差もあるのだろう
ヒアリング環境
夜~朝・家・ヘッドホン