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Alternative(オルタナティブ)ロック史 序:ロック史の捉え方

1966年から2019年まで、50年余、半世紀以上に渡りオルタナティブロック史を見てきました(※2020年以降も追記中)。取り上げたアーティストは400組、アルバム400枚。膨大な量になりましたがそれでもオルタナティブロック史の一部にすぎません。50年という月日で積み上げられた音楽資産は膨大かつ豊穣であり、一人の人間が一生をかけても聞き切ることはできないでしょう。

そのような膨大な音楽の森にどう分け入っていくか。手がかりの一つがディスクガイドや名盤リストであり、本連載も基本的には名盤ディスクガイドアーティストデータベースとして書いてきました。とはいえ全体で400枚、400アーティストという膨大な量になってしまったので、「こういうテーマに沿って聞いていったら面白いかも」という提案を書いていきたいと思います。いわば、本連載の使い方であり、序章にあたる内容。

何か一つのテーマを持ってアーティストやアルバムを掘っていくのは、「次はこのアーティスト、このアルバムを聴いてみよう」という好奇心も沸きやすくなるので、僕はいくつかの視点を持ってロック史を掘っています。今回の連載については、たとえば次のような視点に沿ってみていくとより楽しめるかなと思います。


1.ムーブメント(サブジャンル)で掘り下げる

時代ごとにさまざまなムーブメントがあり、サブジャンルが生まれていきます。こうしたジャンル名、ムーブメント名は検索キーワードになるので、これをもとにアーティスト、アルバムを聴いていくとそれぞれのつながりや類似性、時代ごとの進化を追えて面白いでしょう。今回のリストで出てきたキーワードを書いておきます。

60年代

サイケデリック、プロトパンク

70年代

クラウトロック、アートロック、パンク、ポストパンク、ゴス、ニューウェーブ、スカリバイバル、テクノ

80年代

ポストパンク、ニューウェーブ、ゴス、ハードコア、シンセポップ、ネオサイケデリア、ペイズリー・アンダーグラウンド、ノイズロック、オルタナティブロック、インディーロック、ネオアコースティック、ポストハードコア、ギターロック、ジャングルポップ、オルタナティブカントリー、ノーウェーブ、インダストリアル、ポストロック、ミクスチャー、インディーポップ、マッドチェスター、ローファイ、カウパンク、トゥイーポップ(C86)、クリスチャンオルタナティブロック、カレッジロック

90年代前半

シューゲイズグランジオルタナティブロックポストハードコア、ジャングルポップ、オルタナティブメタル、オルタナティブカントリー、マッドチェスター、ファンクメタル、アシッドハウス、女性SSW、ローファイ、エクスペリメンタル、ネオサイケデリア、ラウンジ、ローファイ、ブリットポップ、ポップパンクライオットガール(Riot Girrrl)、ストーナーロック、トリップポップ

90年代後半

ポストグランジブリットポップ、インディーロック、ダンスパンク、オルタナティブダンス、ポストパンク、スカパンク、スローコア、チェンバーポップ、ネオアコースティック、オルタナティブダンス、オルタナティブカントリー、ガレージロック、ライオットガール、ミクスチャー、スケートパンク、クールシムル(Cool Cymru)、スペースロック、ネオサイケデリア、ポストブリットポップ、ノイズポップ、ポップパンク、パワーポップ、エレクトロニカ、フォークトロニカ、ポストクラシカル、ギークロック

00年代前半

アートウェーブ、エクスペリメンタルロック、ニューウェーブ、ブリットポップ、ポップロック、パワーポップ、ポップパンク、エモ、スクリーモ、ドリームポップダンスロックダンスパンクガレージロックリバイバルエレクトロロック、ポストパンクリバイバル、ニューレイブ、インディーフォーク、オルタナティブカントリー、ニューゲイズ、ローファイ、ダブステップ、ポストハードコア、クラシックロック、ソフトロック

00年代後半

サイケデリックフォーク、ドリームポップ、ローファイ、インディーロック、ノイズロック、グランジリバイバル、インディーフォーク、ノイズロック、ゴスペル、オルタナティブR&B、ソフトロック、フォークトロニカ、バロックポップ、チェンバーポップ、トリップホップ、マスロック、グリンディー(グライムインディー)

10年代前半

ソロアーティストの台頭DTMによる実験音楽黒人音楽やラテン音楽とのミクスチャーロック、クラシックロックへの回帰、等

10年代後半

黒人音楽からのロック(従来の白人音楽)へのアプローチがさらに強まる、オルタナティブR&Bの深化、ポストパンク/ニューウェーブなどの80年代リバイバル、さまざまなミクスチャーサウンドの進展

2.黒人音楽・白人音楽・ラテン音楽の相互影響

もともとロックンロールは黒人音楽、ブルースやスウィングから生まれていますし、プレスリーの直前に大流行していたのはラテン音楽のマンボでした。ラテン音楽も、南米音楽と二グロアフリカンの音楽(黒人奴隷が連れてこられた植民地は北米だけではない)が融合したものと言われており、黒人音楽との混交。もともとアメリカに入植したのはイギリス人が多く、ケルトやアイルランド、ブリティッシュトラッドがアパラチアンフォークとして残り、西部開拓の中でウェスタンとなり、もともとフランス領だったニューオーリンズでビッグバンドジャズが生まれていく。そうした、白人と黒人、そしてラテン音楽の混交という視点でロック史、ひいてはアメリカ音楽史を見ることができます。

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大きな流れで言うと、オルタナティブロックはある時期まで非常に白人的。おそらく90年代ですね。50年代、60年代はロックとソウル、ファンクなどの垣根は低く、黒人音楽のグルーヴにあこがれた白人ロックバンドが多かったですが(ビートルズもその一つ)、時代を経るにつれてフォーク的、カントリー的な欧州白人音楽をルーツとする白人音楽がオルタナティブロックシーンでは主流になっていきます。むしろ、90年代はファンクメタルやラップメタルといったメタルとの組み合わせで黒人音楽との混交が果たされていたかもしれない。ただ、全体的には黒人音楽、ラテン音楽の影響はだんだんと薄れ、90年代にその乖離が最大化します。

00年代以降、ダンスロックブームが起き、ロックが「踊れる音楽」に戻っていく。その過程でラテン音楽のリズムが取り戻され、黒人音楽(ジャズやブルース)のリズムもだんだんと取り戻されていきます。むしろ黒人音楽側からロックのテイストを取り入れるオルタナティブR&Bといった動きも2000年代後半から出てきます。こうした、「非ロックアーティストによるロックサンドの融合」は現在も起きていて、「ロック」の境界が曖昧になっているのが2021年の現在と言えるでしょう。

こうした「音楽のルーツ」からロック史を読み解いていくのも面白い視点です。こうした視点でおススメの本が下記の2冊。これらを読みながらオルタナティブロック史を聴いていくと音と知識が繋がります。

3.技術・音響面の変化

ロック史において新しい音、新しいジャンルが出てくるのは、アーティストのアイデアや才能はもちろんなのですが、実は機材や技術の進化によるものが一番大きい。ビートルズがサイケデリックな録音芸術に舵を切っていったのはマルチトラックレコーダーの進化によるものですし、エフェクターの進化によるものでした。70年代のテクノ、ニューウェーブはシンセサイザーの進化によるもの、80年代のシューゲイザーはエフェクターの進化によるものです。

更に言えば、わかりやすい「音色」だけでなく、もっと全体的な「音質、音圧」もかなり変化しています。名盤とされるアルバムの○○周年リマスター盤がよく発売されますが、リマスタリングすることでたとえば1980年のアルバムが2020年の音になる。逆に言えば、20年前、30年前のCDの音がどこか古臭く感じるのはマスタリング工程の差も大きい。こうした音圧を上げる手法は90年代後半~2000年代以降、一気に加速した印象があります。ラウドネス戦争とも呼ばれ、音が割れる寸前のCDだったり、極端にコンプレッサーをかけていて音がいびつになったりしたCDがこの時期にはけっこうあります。その後、2010年代以降になると「音圧を上げつつ自然なダイナミクスを得る」ように進化し、いわゆる「イマドキの音」「聴いていて心地よい音」に変わってきます。録音側も再生側も機械が進化している。今回、50年分ぐらいの音を聞いていくと、何より音質や音圧、音響の差が時代を感じさせました。大きく言えば、今でも60年代とか70年代と同じ編成のバンドはたくさんいるわけで、曲構成や演奏はそれほど変わらない。少なくとも「ロック」というフォーマットは一定以上の共通項がありますが、音質、音圧には時代が出る。曲構成はそれほど変わっていない証拠に、1980年代、1990年代の音源をリマスター盤で聞くと最近のリリースかと思うものも結構あります。00年代以降「○○リバイバル」が多発するようになりましたが、「昔のような曲を今の音質・音圧・音響技術で演奏する」と今の音になる。それがかえって新鮮に聞こえる。新譜に混じってリマスター盤が売れているのはこの証左でしょうし、これは、録音技術が00年代、10年代でそれぞれ進化していっているからでしょう。技術の進化が音楽に影響を与えています。

また、録音環境だけでなくライブでのPA、スピーカーの進化も大きな影響を与えています。たとえばビートルズの時代、大きなスタジアムでライブを行うには当時のPAは出力が小さすぎた。ビートルズの武道館公演だと、観客(女性)の歓声しか聞こえません。ビートルズの4人は自分たちの演奏もほとんど聞こえなかったそう。下の写真の通り、ステージにあるアンプだけですから、これで武道館全体にいきわたらせるのは厳しい。

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それがどんどん出力が上がっていき、今では10万人単位のステージも可能になっています。これはライブ空間を大きく変え、ライブをスポーツ観戦的な数万人規模の一大イベントに変えました。下記のように、今はアンプを積み上げるスタッキング方式ではなく、上から吊り下げるフライング形式。ステージ両脇にある黒くて縦に細長いのがPAシステムです。

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ロックコンサートはだんだん巨大化していき野外フェスで何十万人も集めるようになっていきます。ウッドストックやモントレーポップのころは正直、後ろの方は音が聞こえなかったと思いますが、だんだんと音響は拡大していき、80年代にアリーナロック、90年代にはロラパルーザなどのフェスの隆興、そして90年代後半から00年代のニューメタル勢、非常にハードなサウンドを叩きつける、音の塊のようなバンド群がUSでヒットしたのはライブ体験が強烈だったからでしょう。先述した「ダンスロック」「オルタナティブダンス」「ダンスパンク」など、ダンス系の隆興もこうした「体感音楽」のムーブメントと言える。録音物としてCDで聞くより、ライブで味わうための音楽に変わった。音楽市場全体でもフィジカルやデジタルストリーミングを合わせた録音物からの収益より、ライブ収益の方が大きくなっていました(だからコロナ禍は深刻)。

こうした音響の変化、録音物における音圧・音響のトレンド変化と、ライブの在り方の変化によって「ライブで演奏すること、大人数が盛り上がることを前提にした音楽」にロックも姿を変えていきます。また、それに対する反動としてDTM(デスクトップミュージック)に特化した宅禄型、ドリームポップやベッドルームポップといった非常にミニマルで実験的なサウンドも生まれてくる。大ステージでノるための音楽か、部屋やヘッドホンで個人の世界に浸る音楽か、両方の機能に特化していったのが10年代以降と言えるでしょう。こうしたテクノロジーの進化によって音像が変わっていくのも面白い。音響の変化がロック音楽に与えた影響については先ほど挙げた「オルタナティブロックの社会学」の3章ー2 体感音響、に詳しく述べられています。

もう一つ、技術が音楽に与える影響として、音楽の流通もあります。レコードの発明、ラジオの発明、MTVによるミュージックビデオの流行、そしてストリーミング文化、スマホとYouTubeによる動画文化。これらで大きく「音楽の消費のされ方」も変わってきました。たとえば昔から「ラジオ向けの曲」とか「MTVで流れそうなビデオ」とか、そういうものが求められます。今だとネットでバズりそうな曲、TikTokでバズりそうな曲、とかですね。今回のオルタナティブロック史で言えば、MySpaceやYouTubeからデビューするアーティストが00年代以降増えています。こうした「音楽が流通するテクノロジー」に注目してみると、どんなアーティストが人気が出るか、アーティストがどの市場を狙うか、といった視点が得られます。

こうした視点での技術の進化が音楽に与えた影響について、丁寧にまとまっている本がこちら。よりロック史、音楽史を面白く考えることができます。

4.女性、LGBT+Qなどマイノリティの進出

ロックはマイノリティの叫び、という要素を成立時から内在しています。そもそもブルースに黒人奴隷の魂の叫び、自由への渇望が込められていた。ソウルやブルースに影響を受けたロックンロールにもそうした反抗精神、自由への渇望が込められていましたし、もう少し視点を拡げると、音楽産業自体、決して主流派ではない。いわゆる名門大学卒のエリートコースに乗った若者が志す業界ではなく(特にアーティスト側は)、一攫千金を夢見る、生活を変えてロックスターになることを夢見る若者が集まる業界です。専門の音楽教育を受けたクラシックや伝統音楽の演奏家はまた違う世界ですが、ことロックにおいては「社会的弱者が一発逆転を狙う」性質があるでしょう。

そうした性質から、マイノリティの叫び、反抗手段としてロックは選ばれてきました。ビートルズにしてもそれほど裕福な階級の出ではないですし、そもそも音楽業界はユダヤ人やアイルランド人の力が強い。ユダヤというと金持ちとか秘密結社とかそんなイメージがありますが、もともとはUSの白人移民の中では階層が低かった(アイルランド系もそう)。だから、非主流で実力主義の業界である音楽業界で必死に力をつけて成功していったのです。

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その流れで、かつては労働者階級の白人男性たちが多くいたロックシーンも、ある時期から女性が増えていきます。80年代後半からのライオットガール(Riot Girrrl)ムーブメントや、アラニスモリセットトーリエイモスなどの90年代の女性SSWのヒット、先駆けては80年代のマドンナシンディローパーら「強い女性」を打ち出したポップスターの影響もあるのでしょうが、そうした女性のスターが80年代から生まれてきて、90年代にロックシーンでも花開く。

そして、2000年代以降、2010年代になるとLGBT+Qの活躍や、非白人(黒人だけでなくアジア系も)が活躍するようになります。こうしたマイノリティの叫び、反抗手段はロック音楽の根幹にかかわる物語なので、この視点で見ていくと様々なアーティストが繋がっていくと思います。

5.社会的背景の影響

ロック音楽は社会的背景と無関係ではありません。そもそも50年代、60年代半ばまではロック音楽自体が反抗的な音楽とされましたが、そこで歌っていることはそれほど反抗的でもなかった。ただ、60年代後半には長引くベトナム戦争に対して若者に蔓延する厭戦気分がそのまま歌に乗り、反戦運動、フラワームーブメントに広がっていきます。

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ロック史において、次に大きな転換点は1991年、冷戦終結でしょう。80年代、冷戦構造の中でUSおよび西側諸国は仮想的である共産圏に対して一致団結して成長した。しかし、1991年にソ連が崩壊すると、USはそれまで外部に向いていた目が内部に向き、内省と自国内の断絶、公民権運動などの「冷戦という大きな問題のために先送り」できていた問題に向き合わざるを得なくなります。これがグランジムーブメントの自虐、自省的な内容に繋がっていく。「病めるアメリカ」を自覚し、それを歌にするようになる。そうしたことがカミングアウトできる空気になった、とも取れます。

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次は同時多発テロ。2001年に起きた同時多発テロにより、USは再び「外敵」を見つけます。ここでロックはダンスロックが流行っていくんですね。それまでの自己攻撃的、破壊的な音像から、大観衆が団結する、鼓舞するような音像へと変わっていく。当時の時代の空気をロックを通じて追体験することができます。

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また、UKでは2016年のブレクジット決定以降、バンドサウンドが復調している印象です。今、UKではポストパンク的なサウンド、尖ったロックバンドサウンドが再び活性化してきていますが、その発火点はブレクジット決定前後だったのではないかと思っています。そして、実際にEUから離脱し、さらにその傾向が顕著になってきた。そもそもパンク、ポストパンクは社会に対して訴える音楽です。そして、訴えるのは一人よりバンドの方が迫力も説得力もある。社会的な問題提起するのはエネルギーがいりますから、バンドでたたきつけるような音と共にその想いを吐き出す若者が増えつつあり、それが一般の共感を得られている気もします。

これは、社会という非常に多面的なもののある一面的な解釈なので正解も不正解もありませんが、こうした視点を持って音楽を聴いてみるとより深く音楽の背景が理解できるような気がします。

6.国別の音の違い

最後は、国別の音の違いです。ロック史における最重要国、USとUKではだいぶ音が違います。それは社会的背景もあって、たとえば91年にUSだとグランジブームが起きますが、ソ連崩壊はあまりUKには影響を与えなかったのでそんなに変化しない。マッドチェスターとかアシッドハウス、少しけだるいダンス系のロックが流行っています。逆に、2016年からのブレグジットによってUKは社会警鐘的なポストパンクが盛り上がっていますがUSはその影響はない。むしろBLMを謳うオルタナティブR&Bが強い。その国で起きている出来事が音像に影響を与えています。

全体として言えるのは、USはいろいろ細分化された、尖ったアーティストが出てくるということ。人種のるつぼだけあり、白人音楽、黒人音楽、ラテン音楽の鬩ぎあいから新しい音楽が生まれてきます。

UKは、それらUSで出てきた音を観察しながらもっと総括する感じ。もちろん、USに視点を向けず、UKの内部で完結するバンドもいますが、一定数USとUKで活躍するバンドがいるので、いやおうなしに相互に影響を受ける。で、UKではUSから出てきた新しい萌芽を自分たちなりに解釈して、独特なUKロックに仕上げてしまう。より、多くの人に受け入れやすい形に翻訳するというか。ビートルズがそうですよね。マニアックなブルースやロックンロールをもう一度、わかりやすく多くの人が受け入れられるポップな形にして提示した。なんというか、全体的にUSよりUKの方がポップでメロディアスな感じはします。

そして、英語圏の残る2大国、カナダとオーストラリア。オーストラリアのバンドはUK以上にUSから遠いので、UKとUSから出てきた流行のサウンドをさらにディフォルメして、「より普遍的な完成系」にして提示する気がします。すべてのバンドがそういうわけではないですが、時々そういうバンドが出てくる。ハードロックのミニマルな要素だけを抜き出したようなAC/DCとか、80年代ロックのエッセンスを抽出したミッドナイトオイルとか。あまり難しく尖ったバンドより、普遍性を持ったバンドが出てくる印象。逆に言えば、そういうバンドでないとオーストラリアから世界に飛び出せないのかもしれませんが、全体的にオーストラリアで名の知れたバンドは聞きやすく分かりやすいバンドが多い印象です。

カナダもオーストラリアに似ている、ある程度ディフォルメした、USやUKで流行っている音像を抽出したようなバンドが多いのですが、カナダはもっとプログレッシブでアート寄りというか、芸術的な印象。フランスの影響でしょうかけっこう2010年代はカナダからのバンドもオルタナティブロック史に出てきます。

それ以外の国はあまりロック史では出てきません。そもそも、USやUKが商業音楽の中心になったのは歴史が浅く、古くはオスマントルコとか中国、エジプトが音楽文化が栄えていたし、中世~近代、いわゆる欧州クラシック音楽においても中心はフランス、イタリア、ドイツ。それが第二次大戦の後US、UKが世界の中心的存在になり、音楽産業も移っていきます。ロックもその時期に成立したのでUK、US中心。フランス、イタリア、ドイツもそれぞれ面白いロックシーンがあるんですが、どちらかといえばプログレとかメタルとか、「ほとんど黒人音楽の影響がない」ものになっています。それぞれ移民は一定数いるのですけれどね。フランスは黒人の権利も(USより)認められているし。掘れば面白いバンドがいるのでしょうが、なかなか情報を得るのは大変だし、世界的に知られているロックバンドはほとんどいません。やはり言語の壁が大きいということでしょう。

今回のロック史では、UK、US、カナダ、オーストラリアの聴き比べをしてみると面白い。カナダ、オーストラリアはレアですが、UK、USのどちらの国か、音だけを聴いて当ててみるのも面白いです。

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以上、6つの視点を書いてみました。こんな視点でオルタナティブロック史を楽しんでもらえれば幸いです。マガジンはこちらからどうぞ。

最新話の2020年の回を全文公開しています。

7.全アーティストリスト(1966-2020)

最後に、本連載で取り上げた全400(+2020年以降追記中)アーティスト・アルバムのリストを載せておきます。リストだけ知りたい方はこちらをどうぞ。購入いただくと、各アルバムの説明と各年代の説明が読めます。基本的に各アーティスト1枚(ソロ作や別名義は別カウントする場合もあり)なので「名盤を網羅したリスト」というよりは「重要なアーティストを網羅したリスト」であり、「その年の音のトレンド(メインストリームになる前、その時点での「オルタナティブ」な音)」を追っていくリストになっています。

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1966年-現在進行中、400バンド以上のアーティストと共に振り返るオルタナティブロック史兼ロックを通したUS、UK史。序文と最新話は無料です。

”もう一つのロック史”、Alternative Rock史を紐解いていきます。全10回。1966年から2019年まで、50年以上に及ぶオル…

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