マックの物語(13)
5月13日(日)ゴールデンウィーク明けは
子どもたちが土産や土産話をたくさん
持ってくる。
だから結構忙しい。
雅(まさ)はお父さんと富士山に登った、
「あんなにゴミが多いから世界遺産に登録されない
んだよ!!」と怒りをこめて僕に伝えた。
僕も以前テレビで見たことがある、
平気でゴミを捨ててゆく人が相当数いる。
その大半が日本人だという、恥ずかしいというか
悲しい。雅の言うとおり世界遺産どころではない。
喘息で体力不足なのにとてもよく頑張ったと思う。
1つの事をやり遂げた子どもは本当に自信に
満ち溢れ、生き生きとしてくる。
一人二人と帰って行く、
気がつけばもう午後3時を回った。
マックは来ない。
昼頃に電話したのだが
「行けるかどうか?わからない・・・」
とお母さんの声のトーンは低かった。
僕は「絶対に来させなければいけない!!」
と25年前の青春ドラマの先生のように
熱く申し伝えたが、
お母さんの返事には力がなかった。
お母さんも苦しんでいる、
でも続けることの大切さや
壁を突破する喜びを教えて欲しいと思う。
「とにかくいつまでも待ってます、
これだけ伝えてください」と言って
電話を切った。
剣玉や達磨落としで
3時間にわたる長期滞在を楽しんだ
雅も帰り支度をしている。
「塾長!塾長も富士山に登ったほうがいいよ!
うん、今度登り方教えるからさ」
雅はもう日本の登山隊長になっていた。
「お~、隊長頼むよ。富士山の次はマッキンレーだな!」
「マッキン・・・なんだ、そのマッキン○○って、
ははは、面白い名前だね」
登山隊長しっかりしてくれ、
「いや、富士山はきれいだろうな!」
その後、雅は帰宅を30分延長して富士山の話を
した。
上る時と下る時の足の使い方とか、
休憩の方法とかそれはとても面白い話だった。
子どもの話は率直でシンプルでいつも楽しい。
「じゃ、気をつけてサヨナラ!!」
「はい、サヨナラ!!」
雅も帰っていった。
西側の大きな窓を開けて
4階から雅に手を振った、
雅も一生懸命手を振りながら、
何か言っているが、
よく聞こえない。
「隊長~なんだ~」
雅はさっきの3倍くらい
大きい声で僕に向かって叫んだ
「マッキン○○~」
馬鹿野郎!恥ずかしいじゃないか。
自分で赤面するのが分かるほど、顔が熱い。
道行く人が僕を見上げる、お~恥ずかしい。
と・・・
その見上げている市民の中に
お~何と、何と
マック。
マックが市民と一緒に僕を見上げているではないか。
この暑いのにジャンパーを着込み、
肩からななめにショルダーバッグを
かけて、まぶしそうに僕を見ている。
キラリと光るあの眼鏡、間違いないマックだ!!
お~愛しのマックよ!出て来たんだな!
「お~い、早く上がってこ~い」
雅よりも大きな声で僕は叫んだ。
小さくうなずき、
マックはトボトボと歩き出した。