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Apr.9

卒園式がなくなってしまったので、その台本をせめてここに。

卒園式「好きなことをみつけよう・機会を与えよう」

───卒園児向け───

そつえんおめでとうー!(来賓席から立ち上がってクラッカーを鳴らす)

みんな元気かーい!?
卒園したらどこに通いますか?知っているひとー!?(はーい!おぅ○○○、しってるのか、どこだ!?)

そう、小学校だよね!

小学校では、勉強をたくさんします。算数、国語、理科、体育、音楽…
勉強をすると、できることがどんどん、増えます。
計算ができたり、歌が上手になったり、速く遠くまで走れたり。
できることが増えると、楽しいことがたくさん増えます。
楽しいことを続けていると、辛いこともあるけれど、いつか夢が叶います。
オリンピック選手になったり、歌手になったり(実例を踏まえて)。
わたしは、絵を描いたり、文章を考えるのが、小学生のころから、楽しかったです。
それで今は、本をつくる仕事もしています。
勉強をたくさんして、楽しいことをみつけてください。
小学校はそういう楽しいところですよ!(ランドセルを背負って退出)

───ここから親向け───

三つ子の魂百までということばがあります。私が数百人のインタビューをしてきて感じたことと同じです。

とくに親と初等教育で受ける教育は、長く続く人格をつくりあげます。自分を振り返ってみて、そう思います。

私が好きな作家の川上弘美の話を紹介します。川上弘美の「ゆっくりとさよならをとなえる」というエッセイ集の「はじめての本」の中で語られています。川上弘美は小学3年生のときに入院をしました。つまんないよぅと言ってお母さんに与えられた本が、全く読めなかったそうです。それを聞いたお母さんは、しょうがない子ね、と読み聞かせをしました。すると、自分で読んでいるときは面白くもなかった本が、めっぽう面白くなった。川上弘美は、お母さんに読み聞かせをしてもらう時間を「黄金のひととき」と表現しています。
やがて本が読めるようになって、本の虫になって、芥川賞作家にまでなりました。

私は思います。子どもには敵わない。真夏のヒリヒリとした肌のような敏感さと、すべてを吸収するスポンジのような感受性。それらは大人になると失ってしまいがちです。

子どもたちに見せる行動、話すことば、共に生きる時間。それら全てを、子どもたちは受け止めています。価値観や人生のベクトルが多様化し、「こうあるべき」なんてものも、我々には知る由もない時代に向かっています。

私がおもうのは、だいたいの場合は、親が先に死にます。自分が死んだあと、行きていくのは子どもたちです。

どうか、みなさんの生き様やおもいや、経験したことすべてを、お子さんに伝えてください。親として悩むこともあるでしょう。お子さんを案じてためらうこともあるでしょう。

しかし、人はみな賢い。人の経験の全てを次世代に渡すことが、未来を作るのだと、私は信じています。

私は、小学4年生のときに、担任の先生に読み聞かせをしてもらった那須正幹の「少年のブルース」を、今年4年生になる娘に買い与えました。いつまで経っても娘は読まないので、そろそろ読み聞かせようと思っています。

卒園、おめでとうございます。

#エッセイ #川上弘美 #那須正幹 #少年のブルース #本

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