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先を行く信用の作り方 ドイツゲーム大賞から学ぶ
私はボードゲームが大好きだ。ボードゲームを介すことによって、たくさんの人と楽しくコミュニケーションをとることができるからだ。
特にドイツはボードゲームの開発が盛んな国で、たくさんのクリエイターとプレイヤーがいる。基本的にボードゲームの世界では、会社名よりも個人のクリエイター名が重視される傾向がある。だから個人が面白いボードゲームを作って一躍有名になることもある。
では、どうしてドイツではボードゲームの開発が盛んになったのか。考察してみたい。
【ドイツゲーム大賞とは】
年に1度ボードゲームに贈られる賞で、専門の審査員が決める、ゲーム界のアカデミー賞のようなものである。
ゲーム大賞に選ばれるゲームは、ヘビーゲーマー好みに偏らず(その年のトレンドがあって難しめのゲームが選ばれる場合があるが、極端に難しいのはない)、色んなゲームを選んでるあたりはバラエティに富んでいてさすがと唸らせる。特に直接プレイヤーを叩く攻撃的な奴は選ばれない。これはドイツゲームの理念に、共存というのがあるからである。
ボードゲームやカードゲームをそこそこやってきたのだが、思ったことが1つある。
それは、ドイツゲーム大賞を受賞した作品、もしくはノミネートされた作品は完成度の高さ、面白さ、独創性、どれをとってもよくできていることである。
ボードゲームやカードゲームの中にもルールが分かりづらかったり、プレイヤーを選んだりするなど、案外ハズレのものは多く、買って損したみたいな話も珍しいことでは無い。
・ドイツゲーム大賞受賞作一覧
2017年 キングドミノ (Kingdomino)★
2016年 コードネーム (Codenames)
2015年 コルト・エクスプレス (Colt Express)
2014年 キャメルアップ (Camel UP)★
2013年 花火 (Hanabi)★
2012年 キングダムビルダー (Kingdom Builder)★
2011年 クゥワークル (Qwirkle)★
2010年 ディクシット (DiXit)★
2009年 ドミニオン(Dominion)★
2008年 ケルト (Keltis)★
2007年 ズーロレット (Zooloretto)
2006年 郵便馬車 (Thurn und Taxis)
2005年 ナイアガラ (Niagara)★
2004年 乗車券 (Ticket to Ride)
2003年 アルハンブラ (Alhambra)★
2002年 ヴィラパレッティ (Villa Paletti)
2001年 カルカソンヌ (Carcassonne)★
2000年 トーレス (Torress)
1999年 ティカル (Tikal)
1998年 エルフェンランド (Elfenland)
1997年 ミシシッピクイーン (Mississippi Queen)
1996年 エルグランデ (El Grande)
1995年 カタンの開拓者たち (Siedler von Catan)★
1994年 マンハッタン (Manhattan)★
1993年 ブラフ (Bluff)★
1992年 ホーマスツアー (Um Reifenbreite)
1991年 ドルンター&ドルーバー (Drunter & Druber)
1990年 貴族の務め (Adel verpflichtet)
1989年 カフェインターナショナル (Cafe International)
1988年 バルバロッサ (Barbarossa)★
1987年 アウフアクセ (Auf Achse)
1986年 アンダーカバー (Heimlich & Co.)
1985年 シャーロック・ホームズの犯罪事件簿 (Sherlock Holmes)
1984年 ダンプフロス (Dampfross)
1983年 スコットランドヤード (Scotland Yard)★
1982年 ザーガランド (Sagaland)
1981年 フォーカス (Focus)
1980年 ラミーキューブ (Rummikub)★
1979年 ウサギとハリネズミ (Hase und Igel)
★マークがついたものは私がプレイしたもしくはルールを知っている作品である。
私が特にオススメするのは2010年受賞のディクシットと1995年受賞のカタンの開拓者たちだ。
この2つの作品は過去に何度もプレイしてきたが、私の周りにも非常にウケが良かった。この2つの作品の面白さを知ればドイツゲーム大賞選考委員会のセンスに納得できるはずである。それほどドイツゲーム大賞受賞作は傑作が揃っている。
それではどうしてドイツゲーム大賞受賞作品はハズレがないのだろうか。
それはドイツゲーム選考委員会の歴史と伝統が深く関係していることが分かった。
ドイツゲーム大賞選考委員会の発足当初は、ゲーム好きが集まり、自分でお金を出してやっていた。
途中から、このマーク
をつける事によりメーカーからお金を貰うという形になった。このように独立資本でやっている限り、メーカーの広告にならないという素晴らしさがある。すぐ企業が買収して自分に都合のいいように選ばせる風にならないところにドイツ人の誇り高さがあると感じる。だから弱小メーカーから大賞が出たりすることだってある。ここが他の選考会との圧倒的な差であり、特筆すべきところである。
ぜひ日本企業も見習ってほしい。
とある日本の雑誌にもゲームレビューがあるが、どこぞの有名なメーカーが出したゲームは面白くないゲームであろうとやたらめったら高評価であったりする。
食品選考委員会のモンドセレクションでも全体の8割が受賞し金賞だらけという受賞インフレが起き、金を払えば獲れる賞とも言われている始末。
中身の薄い賞を権威化して消費者を踊らす手口が蔓延していることが残念でならないが、そういうのが業界を悪くしていったんじゃないかと思っている。物凄い経費をかけてゲームを作って売れんかったら業界にとって良くないのは解る。でも、ユーザーはそれでゲームから離れていくってのも考えて欲しい。そしてそれは小さなゲームメーカーをも潰す事になる。
この話はゲームメーカーに限った話ではなく、全ての企業に伝えたいことだ。
さっき述べた某ゲーム雑誌のレビューや、モンドセレクション受賞を謳い文句で消費者を騙すようなやり方をする企業は必ずいつか崩壊する。企業の評価や利益は消費者によって決められることであり、選考委員会はそのアシスト役にすぎない。
消費者にとって最も大切なのは内在する商品その物の価値であり、仕組まれた表面的な価値ではない。
消費者のことを考え、目先の利益や評価に媚びることのない努力をする企業が評価されるカタチが重要なのだ。
ドイツゲーム大賞選考委員会はそういう点で企業と消費者をつなぐ、理想のアシスト役である。
だからこそドイツゲーム大賞作品は価値が出てくるし、面白く、傑作と言われるのではないだろうか。
今後も人と人を繋ぐゲームの発展のために、そして消費者を思う企業のためにもドイツゲーム大賞選考委員会の益々の発展を望んでいる。