【他の人よりチョット詳しくなれるフィンランドの教育】Phenomenon-Based Learningの諸外国での実践①
これまで、フィンランドの教育方法として特徴的な、PhBLについて、理論や実践についてまとめてきました!
今回は、フィンランド以外の国で、PhBLをどう実践することができるのだろう?
という問いのもと、諸外国でのPhBLの実践で、私が面白いな、PhBLらしいなと感じたものをまとめていきますね!
アメリカでのPhBL
とあるアメリカの小学校では、児童の自然な欲求を引き出すように、PhBLを実践したそうです。
「潮の満ち引き」
「砕けたガラス」
といった自然の現象から探究を開始。
児童は科学者が実際に行う推論や探究のアプローチを通して学んだそうです!
もう少し具体的な例として…
たとえば、「物質の相互作用」に関するテーマで、
暑い日に冷たい水の入ったガラスに結露がつくという現象から、
児童は何が起こっているかについて質問や話し合いを通して、モデルを描いて現象を説明したそうです!
なんか、日本の理科の実践でも応用できそうですねぇ!
以上、PhBLらしいな、という実践例でした!
Bendici, R.(2019)「NGSS science promotes phenomena-based learning」District Administration。
アブダビでのPhBL
アブダビの小学校でのPhBLの実践では、読解力の向上について定性的調査研究がされました!
5人の教師による、12の古典的物語を用いた、小学校2年生向けの授業が対象だったようです。
結果として、PhBLの実践によって、児童の読解力は上がり、モチベーションも高まり、物語を書いたり語彙を増やす支援になったということが明らかにされました!
それだけでなく、批判的・分析的思考の向上、創造性や問題解決能力への影響も見られたそうです!
これらの結果から、PhBLは世界のどの学校でも適応できる取り組みであると論じられています。
とはいえ、私の確認した限りでは、何をもって読解力・モチベーション・批判的思考・創造性なのか、といった定義が曖昧だなぁと。
論理的に整合性がいかがなものかと疑問が残っています!
もしかしたら、もっと長い論文を要約したものなのかもしれませんが。
Valanne, E. A., Al Dhaheri, R. M., Kylmalahti, R., & Sandholm-Rangell, H.(2017)「Phenomenon Based Learning Implemented in Abu Dhabi School Model」『International Journal of Humanities and Social Sciences』Vol. 9 (3)、pp.1-17。
イラクでのPhBL
イラクの基礎学校7年生から9年生の生徒(日本でいう中学1年生から3年生)を対象に、PhBLの実施によるICT活用能力の向上と動機づけの促進について調査した研究があります!
調査は、従来の授業形態とPhBLの授業形態の2グループに分けられて実施されました。
2週間に及んで実施された授業では、
従来の授業形態の方は、ICT、数学、クルド語、社会系科目において、ICTについて学び、
PhBLの授業形態の方は、ICTと教科学習を統合してICTについて学んだそうです。
結果として、テストで測定したところ、PhBLの授業形態でICTについて学んだグループの方が、より学習内容について理解しており、教科学習への関心も高かった!
という有効性が示されています!
さらに!生徒は学んだスキルを長期的に記憶していたそうです!
これらのことから、現代世界の急速な発展に追いつく、新しい学習アプローチとして、PhBLは生徒の学びにプラスの影響を与えると論じられています。
とはいえ、ツッコミどころ満載かなと。
テストだけでは、フィンランドやその他の国で定義されたコンピテンシーを正確に測定できないと思うのです。
また、PhBLでなくとも、PBL系でも結果は同じだったのかもしれないですよね。
さらに、たまたまICT活用能力を見たときにテストの成績がよかっただけで、どこまで本質的な理解へ結びついているか、その実情は把握しきれていない可能性もあるなぁと。
と、いうかそもそもPhBLは「新しい教育方法」ではないし…。
Wakil, K., Rahman, R., Hasan, D., Mahmood, P., & Jalal, T.(2019)「Phenomenon-Based Learning for Teaching ICT Subject through other Subject in Primary Schools」『Journal of Computer and Education Research』7(13)、pp.205-212。
まとめ
私的に、PhBLの性質の表面的な部分だけを取り出して調査したものが少々鼻につくなぁと思いながらも、「そういった効果もあるかもしれない」と思わされるという意味で、面白い文献を引っ張り出しました!
以前にもまとめたのですが、フィンランドにおいて、PhBLはTCを育成するための教育方法の1つで、1980年代から学校文化として取り組まれてきたものです。
つまり、テストで測定しきれないコンピテンシーを育成するための教育方法である一方で、決して新しい教育方法ではないのです。
うーん。私も本質を理解しきれていないのかしら?
もう少し見てみましょう!次回は諸外国のPhBLをまとめます!第二弾!