ショートストーリー《もしたむっ!》Osamu.16:りょさむとランチタイム
ある日の休日。修は自室の机に向かってパソコンを開いていた。
「ほう。ここのハンバーグも美味そうだな」
「何見てんだ?」
「うわっ!」
急に背後からかけられた声で、修はバッと振り返る。そこにいたのは「りょさむ」だった。
「おっ、美味そうなハンバーグ」
りょさむはしれっとした様子でパソコンの画面を覗き込む。
「あ、ああ、美味そうだよな」
修はまだびっくりしている。
「どうしたんだ? こういうの調べて」
不思議そうに、りょさむが修に尋ねた。
「ちょっとな、ランチタイムにぴったりの、よさげな店が近くにないか探してたんだ」
「へぇ。いいじゃねえか」
「明日はお前が会社に行くからな。お前が行きたいところを探してみるといいぞ」
「いいのか?」
「ああ。パソコン貸してやるよ」
「おっ、さんきゅー」
修が席を譲ると、りょさむは椅子に座ってパソコンに向かった。
翌朝。りょさむは玄関に立っていた。修が見送りに来る。
「お前、昨日はいい店見つけたか?」
修がりょさむに尋ねる。
「ああ。なんかシャレオツでよさげな店があったからよ。職場からも近いし、ちょっくら行ってくるわ」
「シャレオツって、お前」
そこまで言うと、修はプッと吹き出した。
「何だよ。何がおかしいんだよ」
りょさむは少し不服そうだ。
「いや、お前の口からシャレオツなんて言葉が出るとは思ってなくてな」
「悪かったな、ふん」
りょさむはふてくされ、腕を組んでそっぽを向いてしまった。
その日の昼休み。りょさむは昨日自分で調べた店に来ていた。シャレオツな雰囲気ただよう喫茶店だ。今はお昼時で、満席になっている。しかし──
「……」
席に着いたりょさむは、コソコソと店内を見渡した。りょさむ以外、全員女性客だ。
(しまった……選ぶ店を間違えちまったか……俺のリサーチ不足だったか……)
と、そこへ。
「でね~! あの後修さんから散々文句言われてさぁ~、チョームカつく~みたいな~」
(この、頭にカチンとくる話し方は……!)
りょさむは入口の方をバッと向く。そこには──
「それはね、理加ちゃんちょっと自由奔放すぎちゃったかもね」
「葵さんのおっしゃる通りかもですよぅ」
「だよねぇ良子ちゃん」
「何よぉ~ふたりしてぇ! 望美ちゃんはそんなこと思ってないよねぇ? ん~?」
「えっ!? あっ、あの、私は……」
「ダメよ理加ちゃん、望美ちゃんをいじめないで。ちゃんと外回りしないで有希さんと修さんに迷惑かけた理加ちゃんが悪いんだから」
「もうっ! 葵ちゃんのいけずぅ~!」
同僚の女子4人──葵、良子、望美、そして理加がやってきたのだ。
(ま、まずい……! こんなところでこいつらに顔見られちまったら──)
「あっれぇ~?」
「……っ!」
なぜ、こういう時に限って……と、りょさむは理加と視線が合ったまま固まってしまった。
「修さんじゃないですかぁ! なんでこんな女子の好きそうなお店に~? えっ、案外修さんって可愛いとこあるんですか~?」
ズカズカとりょさむに詰め寄ってくる理加。その理加と一緒にいた3人は、とても驚いた様子でりょさむを見つめている。
(しまった……! 本当に、選ぶ店を間違えてしまった……!)
逃げ場もないりょさむは、あまりの恥ずかしさに両手で顔を覆ってしまった。
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