見出し画像

連載小説《魔法少女えりっこ×りょっこ》第2話:半信半疑なハナシ(4)

 《前回のあらすじ》
 恵璃子達の通う学校で暴れ回るノワールを、恵璃子、稜子、靖広が駆除していく。
 塔子と共にそれを見ていた由希と茉弥だったが、クラスメイトの勇司がノワールに襲われそうになったのを見た由希がとっさに、自分を魔法少女にしてほしいと塔子に叫んだ。
 魔法少女になった由希と茉弥は、恵璃子と稜子、靖広と力を合わせてノワールを駆除するのだった。



 恵璃子達の活躍で、学校に現れたノワールはすべて駆除された。全員変身を解き、塔子の元へ向かう。
「由希も茉弥も、初めてにしてはなかなかの戦いっぷりだったわよ」
「へへっ、どんなもんです!」
 そう言って鼻の下をこする茉弥の隣で、由希は申し訳なさそうに塔子の方を向く。
「塔子さん、ごめんなさい……。私、化け物も魔法少女もぜんっぜん信じてなかったけど、恵璃子の言ってた通り、こんな怖い化け物がいて、このままだとそいつらにこの世界を乗っ取られちゃうんですね」
「そうならないためにも、あなたたちの力が必要なのよ」
「人間界に、心強い仲間がまた増えましたね」
 靖広は嬉しそうに塔子に微笑む。
「ええ、そうね。あなた達には期待しているわよ。一緒に頑張りましょう」
「はい!」
 4人は塔子を真っ直ぐ見つめ、返事をした。
「恵璃子……」
 そんな中、恵璃子の元にオドオドしながら勇司がやってくる。
「ほんとにこんなことがあるなんて……ほんとに魔法少女が実在したなんて……今朝はお前のことバカにして本当に悪かった! ごめん!」
 勢いよく、勇司が恵璃子に頭を下げる。
「……もういいよ。勇司くんが無事でよかった!」
 勇司に微笑みを見せる恵璃子。
「恵璃子……ありがとう!」
 頭を上げた勇司は、恵璃子の微笑みを見てもう一度頭を下げた。
「私も勇司のこと助けたんだけどなー」
 少しふてくされた様子で由希が言う。
「あ……ああ、そうだよな! 由希もありがとな!」
「由希はやきもち妬きやなぁ! 勇司のこと好きなんか!」
「茉弥ったらうっさい!」
「そういうところが可愛いですよ!」
「もう! 稜子ちゃんまで!」
 夕日が沈みゆく中、恵璃子達は笑い合った。

「さてと……あなたはいつまで隠れて見てるのかしら?」
 塔子は静かな表情で振り向き、草の茂みに目を向ける。一瞬、茂みがガサッと揺れる。
「そこにいるのはわかってるのよ。出てきなさい」
 塔子に言われて茂みから出てきたのは、塔子達の後を追って魔法界から降りてきた魔法少女・臨美だった。腰まであるピンクの長い髪、白とピンクを基調としたゴシック服に身を包んでいる。
「とっ、塔子様、いつから……」
「ここに来た時からずっとわかっていたわよ」
「あわわ、すみません……」
「で、あなたはここへ何しに来たの?」
 塔子は少し呆れて笑いながら臨美に尋ねる。
「わっ、私、塔子様みたいな魔術師になりたくて……塔子様を追いかけて人間界に来ましたっ」
「そう……」
 塔子は腕組みをして軽くため息をつく。そして臨美に言った。
「だったら私についてきなさい。コソコソ隠れながらじゃなく、正式にね」
「ええっ!? よろしいんですか!?」
「ええ。そのかわり、指導はビッシビシいくからね」
「あっ、ありがとうございますっ!」
 臨美は深々と頭を下げた。塔子は微笑みを見せる。
「それにしても……これでノワールの存在が多くの人間に知られることになったわね。魔法軸を通って次々とノワールが人間界に侵入している。それに、ノワールの魔力も少し強くなっているような……」
「さらに警戒を強めた方がよさそうですね」
 険しい顔つきの靖広がそう言うと、塔子も頷く。
「ええ。必ず全てのノワールを駆除しなければ……」
 塔子は空の上の魔法軸を睨みつけ、胸をギュッと握り締めた。
 
 *
 
 その帰り道。恵璃子と稜子は喫茶店『Charme -シャルム』の前に立っている絢子の姿に気づく。
「みんなどうしたの? 急に出てったからびっくりしたわよ」
「あっ……いえ、何でもないです」
 平静を装って恵璃子が言う。
「そう? まあいっか。突然だけど、あなた達ここでバイトしてみない? 放課後の空いた時間にちょっと出てきてもらうだけでいいからさ」
「あっ、私やりたいです!」
 稜子は積極的に右手を挙げる。
「そうね。なんか楽しそうだし、私もやってみようかな」
 恵璃子もその話に乗った。
「決まりね! じゃあ早速明日からよろしく! 夕方の4時半、このお店に来てちょうだい」
「はい!」
 元気に返事をして楽しそうに話し合う恵璃子と稜子を見て、絢子はひとり含みのある笑みを浮かべた。



所属するムトウファームのお仕事にもっと専念するため、男鹿市へ移住したい! いただいたサポートは、移住のための費用、また、ファームの運用資金にも大切にあてさせていただきます🌱💓 サポートよろしくお願いします☆