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ショートストーリー《もしたむっ!》Osamu.15:みょさむとショッピング

 25人のおさむ族が寝静まったある夜。「みょさむ」だけは、電気のついていない修の部屋をドアの隙間からこっそり覗き見ていた。
 机に向かっている修。真っ暗な部屋で、パソコンの画面を見つめている。
「あいつ、何見てんだ……」
 訝しそうに、みょさむは修の観察を続ける。パソコンの画面の光で照らされた修の顔は、怪しい笑みを浮かべて薄気味悪く浮かび上がっている。思わずみょさむはドアに背を向け、クスクス笑い出した。
「電気もつけねえで、あんな気持ちわりぃ顔して……くくく」
「気持ちわりぃ顔で悪かったな」
「うおっ!?」
 突然背後にかかった声で、みょさむは体をビクリとさせた。修はジトッとみょさむを見ている。
「お前が俺の部屋を覗いてクスクス笑うの、聞こえてんだよ」
「だってよぉ……真っ暗な部屋でパソコンの画面ニヤニヤしながら見てるから、何かエロいサイトでも見てんのかと思ったぜ」
「失礼な。こっち来て見てみろ」
 そう言うと修は自室にみょさむを招き、パソコンを見せた。
「これは……」
 食い入るようにパソコンの画面を見つめるみょさむ。そこには、最新型のデジカメが。
「インターネット通販だよ」
 修が口を開いた。
「店に行くのもめんどうな時、欲しいものはだいたいここで買ってんだよ」
「へぇ。それはいいかもな。荷物持って街を歩く必要もねえもんな」
「そういうことだ」
「でもよ、おさむ」
「なんだ?」
「こんな夜中に、真っ暗な部屋でニヤニヤパソコン眺めてるのはやめた方がいいぜ。お前、やべぇ奴に見えたからよ」
「う、うるせー!」
 急に恥ずかしくなった修は、みょさむの頭をポカリと殴った。

 翌朝。出勤したのはみょさむ。今日は同僚の有希と外回り。後輩の理加も、勉強のためについてきている。
「あ~、足痛いし~。外回りめっちゃ疲れるんですけど~」
 みょさむと有希の後ろを歩く理加は、すでに仕事に飽きてきているようだ。
「理加ちゃん、もっとちゃんとして!」
 有希が注意をする。
「だってぇ、理加もう疲れちゃって~」
「まったく……」
 呆れた、と頭を片手で抱えて有希がため息をつく。有希の隣のみょさむも呆れ顔だ。
「あーっ!」
 突然、何かを指差して理加が大声を上げた。すると、さっきまでダラダラ歩いていた理加が、前を歩くふたりを抜いて猛ダッシュ。その先にあったのは……
「このバッグ、理加が欲しかったやつ~!」
 ショーウィンドウに並べられた、高級そうなバッグの数々。理加はウィンドウにへばりつく。
「あっ! あっちのお洋服もほし~!」
 ウィンドウの奥の店内に見えた洋服にも夢中になる理加。そして。
「ちょ~っと待っててくださぁい! 理加、お買いものしてきま~す!」
「ちょ、理加ちゃん!?」
 有希の制止を振り切り、理加はダッシュで店内に入っていった。

 会社に帰ってきた3人。
「あ~、外回りチョー楽しかったぁ~!」
 理加はどこか満足げな表情で、気持ちよさそうに伸びをしている。
「……はぁ」
 そして、みょさむの手には大量の紙袋。理加が外回りの時に買って、みょさむに無理矢理持たせたのだ。
「いっぱい買っちゃった~! 外回りっていいですね~!」
「ほんっとにもう……何やってんだか……」
 有希は呆れ切った表情のまま、片手で頭を抱えている。
「幸坂……お前、おぼえてろよ……」
 理加の荷物持ちで疲れ切ったみょさむは、理加をずっと睨みつけていた。

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