ショートストーリー《もしたむっ!》Osamu.19:ぢょさむとどすこい
「ただいまー」
ひさびさに会社に出勤し、夜8時、修は帰宅した。玄関を開けたその瞬間。
「どすこーい!」
「ぐわっ!?」
帰宅したばかりの修につっぱりをして突進してきたのは「ぢょさむ」。突然のことに、修は玄関のドアにゴツンと頭をぶつけた。
「いででで……お前何してくれてんだ!」
頭を押さえながら、修はぢょさむを怒鳴りつける。
「へへへ、今日テレビで相撲見てたら燃えてきてよぉ。相手してくれよ、おさむ」
「はぁ!? 帰ってきたばっかなのに勘弁してくれよ!」
ぢょさむの勢いに押される修。すると、ぢょさむは「ちぇーっ、つまんねーの」と渋々リビングへ戻っていった。
「……あっ、おい!」
何かを思い出した修は、しょんぼりしたぢょさむの背中に声をかける。
「あ? 何だ? やる気になったか?」
「いや、そうじゃなく」
「じゃー何だよ」
「明日、お前仕事行けよ」
「俺?」
「ああ。そういや明日は社内で相撲大会があるんだ。本格的なもんじゃねぇけど、お前、行ってみろよ」
「へー、そりゃ楽しみだな。行ってみるわ」
ぢょさむは期待に胸を弾ませていた。
翌日。終業後の社内の多目的ホールに、男子社員がジャージ姿で集まっていた。ちょっとしたレクリエーションのように、気軽に相撲を楽しもうという時間である。
「よーし! 負けないぞ〜!」
裕貴はやる気満々だ。
「先輩方には絶対負けませんからね!」
賢太郎は闘志に燃えている。
「何を! かかってこーい!」
裕司はストレッチをしながら臨戦態勢だ。
「ふん……面白そうじゃねぇか」
ぢょさむは不敵な笑みを浮かべた。
「ひ、ひぃっ!」
「そんな……僕が負けるなんて……!」
「つっ、強過ぎる……!」
悲鳴を上げる裕貴。呆然とする賢太郎。恐れおののく裕司。その視線の先には……
「ふん。まだまだ足りねぇぜ」
3人を負かしたぢょさむが、腕組みをして余裕の笑みで立っていた。
「これで終わりか? かかってこい」
ぢょさむがそう言うと、3人は目で合図をし合い、「うりゃあぁぁぁ!」と3人同時にぢょさむにかかっていった。
しかし。
「ふんっ!」
3人まとめて掴み、一気に投げ飛ばしたぢょさむ。
「うわあぁぁぁぁ!」
3人の情けない悲鳴が多目的ホールに響いた。