連載百合小説《とうこねくと!》白米の誘惑!?東子さまvs一輝お兄ちゃん(1)
《前回のあらすじ》
寒い朝、布団の中でふざけ合う東子さまと恵理子ちゃん。
隣に大切な人がいるのは、当たり前のことじゃない。常に感謝しなければ。
そう思った恵理子ちゃんなのでした。
みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
「いやああぁぁぁぁ!」
今、お風呂場の方で叫んでいる奥さま──神波東子さまの付き人を……ってのんきに説明してる場合じゃありません!
「東子さま!?」
私は悲鳴のしたお風呂場へ向かいます。
恐怖に怯えるような東子さまの悲鳴。ただごとではなさそうです。一体何が……
「どうしましたか東子さまっ!」
私は脱衣所のドアを勢いよく開けました。そこにいたのは……
「え……恵理子ちゃん……」
身体にバスタオルを巻き、両手で胸元を押さえながら、涙でうるんだ瞳でこちらを見つめている東子さま。
「ど、どうなさったんですか?」
「恵理子ちゃん、私……私っ……」
「東子さま?」
様子がおかしいと思い、東子さまの足元をよく見ると、東子さまは『あれ』に乗っていました。
「……あっ」
『それ』を悟った私の小さい声に、ついに東子さまの涙腺は崩壊し……
「恵理子ちゃあぁぁぁん!」
バスタオル姿のまま私に抱き着く東子さま。
私はそのお姿にドギマギすると同時に、『それ』の気まずさにかける言葉が見当たりませんでした。
*
「それで、5キロ増……と」
居間のテーブルに向かい合わせで座ってお話を聞きます。今朝さわった東子さまのほっぺのもちもちぷにぷに感には、どうやらしっかりとした理由があったようです。
「だって……ひっく……だってしょうがないじゃない……。今年の新米、すんごく美味しかったんだもの……ひっく、うぅ……」
むせび泣きながら、東子さまは言い訳を紡ぎます。
いえ、お気持ちはすごくわかるんです。今年の新米は、言い訳ではなく本当に美味しいですから。
「確かに今年の新米は美味しいです。東子さまがおかずにも目をくれず「白米だけでもいけるわ」とひたすら白米だけを食べ続けていたことも、夜中に突然起きてきてこっそり白米を食べていたことも知っていますから」
「そうなのよ……って、私が夜中に食べてたのなんで知ってるの」
「気配でわかります」
「恵理子ちゃん……恐ろしい子……」
「そんなことより、最近の東子さまはどうも白米を食べすぎだなぁとは思っていました。炊飯器の中身もすぐ空っぽになりますし。一輝お兄ちゃんから送ってきてもらってるお米も、もうなくなりそうです。そろそろ連絡入れないと」
「面目ない……ぐすっ」
泣きながら鼻をすすり上げる東子さまを見ていたら、どうもかわいそうに思えてきました。
ここはひとつ、愛をもった厳しさで東子さまに接しましょう。
きっと、それも東子さまのためになると信じて。
「白米の欲に引きずられ、自己管理の出来ていなかった結果が、今の東子さまです」
「恵理子ちゃんひどいわー! そこまで言わなくてもいいじゃない! うわーん!」
「でも、そこから脱出する方法があります」
「えっ!?」
「厳しいことを言ってしまって申し訳ありません。でも、東子さまを第一に想ってのことです。体重が増えてしまって悲しくて流した涙の分、気持ちいい汗をかいてそれを消費しましょう!」
「気持ちいい汗って、まさか……」
「そうです! 運動しましょう、東子さまっ!」